福岡発の都市型小型スーパー「トライアルGO」が、この11月ついに東京へ乗り込んできた。300円台の弁当、顔認証レジ、AIが瞬時に商品を値下げすべきかどうかを判断する電子札棚など、店内オペレーションのほぼすべてがデジタルで固められ、365日無休で24時間営業する風景はさながら“未来のコンビニ”といえる。
現時点で都内に出店しているのは富士見台駅北店(練馬区)、西荻窪駅北店(杉並区)の2店舗で、12月上旬には笹塚駅西店(渋谷区)、中野中央5丁目(中野区)、花小金井店(小平市)の3店舗を新たにオープンさせる予定だ。
トライアルGOはこれまでのトライアルHDの大型店舗とは一線を画し、サイズは40~300坪とコンパクトだが、扱う商品数は3000~1万1000点にも及ぶ。
トライアルHDは2022年4月、創業地である福岡県内にトライアルGOの1号店を出店し、県内(約28店)と山口県(1店)で実証を重ねてきた。同社の野田大輔執行役員は「福岡で展開するトライアルGOの仕組みをほぼそのまま持ってきた」と取材で明かしており、満を持して東京に進出してきた形だ。
これは首都圏の流通業界にとっては一大事。開店から一週間後の昼下がり、元ローカルスーパーの社長である筆者は、マンション1階の小さな区画に入った「トライアルGO西荻窪駅北店」を訪れることにした。
まず店舗の向かいにある喫茶店から1時間ほど客の流れを観察してみる。立ち止まって写真を撮る人、物珍しさに店内を覗く人、業界関係者らしき見物客……。普通なら店が一番ひまになる午後3時、客はお構いなくどんどん店内へ吸い込まれていく。客層は従来のスーパーとは違い、若いビジネスパーソンや学生、比較的若い女性層が中心。一般的なスーパーの客層である中高年の女性はほぼ見られなかった。
「やはりトライアルGOはスーパーではなく、競合としてまいばすけっとやコンビニを狙っている」と直感した。
店内に入ると、まず圧倒されるのはその“密度”である。コンビニの半分ほどの広さに大量の商品と20名超の客がひしめき、すれ違うだけで肩をすぼめるほどの狭さ。車いすや買い物カートを使うことは想定していないだろう。「買い物を楽しむ」という点については、評価は低いと言わざるを得ない。
入り口で出迎えるのはトライアルの売りでもある名物のロースカツ重(税込343円)や、たっぷりたまごサンド(税込199円)などの惣菜類だ。
駅前にある西友のバックヤードで製造された弁当が、高速でトライアルGOに供給され、陳列棚を埋めていく。また、「上にぎり8貫」(税込753円)、「まかない海鮮漬け丼・並盛」(税込570円)などのコンビニなどでは扱われることの少ない鮮魚類の販売も目立った。
店頭や店内には、補充用コンテナが山のように積み上がっている。異常ともいえる商品回転率の高さに、思わず「こりゃ売れてるわ!」と唸った。
「近くで製造×すぐ搬入」という仕組みは、既存スーパーの午前・午後と2回補充する頻度とは比べ物にならない。この光景を目の当たりにし、ほんのり温かいカツ重を食した瞬間、私は「都市型小型スーパー」という言葉の意味を理解した。
トライアルGOの競合相手となるのは、イオングループが展開する「まいばすけっと」だろう。まいばすけっとの弱点としてよく挙げられるのが、弁当・おにぎりなどの中食である。通常のスーパーと違い、店内調理ではなく工場製造の商品を各店舗に配送しているため、両者を比較すればどうしても見劣りする。ところが、トライアルGOはこの弁当や惣菜がコンビニ並みに魅力的なのだ。
トライアルGOは、今年7月に買収した西友の近隣店舗から商品を供給する「サテライト方式」をとっている。弁当や惣菜を西友の店舗で作り、それをトライアルGOに配送することでミニスーパーでも新鮮な中食商品が購入できるようになるというシステムを作り上げた。
とはいえ、供給元の西友の売れ上げが落ちては元も子もないので、自社競合は避けつつ、まいばすけっとやコンビニの領域を奪いに行くという戦略だ。
トライアルGOはフランチャイズ制ではなく、小回りの利く直営方式で参入し、空いたコンビニ店舗の跡地へ次々と出店している。AIによる省人化で人件費を抑えられるため、小規模スペースでも採算を取ることができるからだ。
トライアルHDが約3800億円を投じて西友を買収した真の狙いは、コンビニやスーパーの跡地を“DX型ミニスーパー”で塗り替えることにある。東京という最難関市場での“土地争奪戦”で主導権を握ろうとしているのだ。
【つづきを読む】『「まいばす」「セブンイレブン」と三つ巴の争いへ…東京進出の最先端スーパー「トライアルGO」浮かび上がった弱点』
【つづきを読む】「まいばす」「セブンイレブン」と三つ巴の争いへ…東京進出の最先端スーパー「トライアルGO」浮かび上がった弱点