【野口 悠紀雄】何とかならぬか「マイナカード」…説明が悪い、ログインできない、何のメリットも感じない、おまけにお騒がせメールまで

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

健康保険証の廃止(12月2日)という制度の大変更を目前にして、厚生労働省から「マイナ保険証の利用登録が済んでいるかを確認せよ」とのメールが届いた。しかし、簡単には確認できなかった。マイナカードという面倒で役立たずの仕組みに、いつまで振り回されなければならないのか?
12月2日から、従来の医療保険証では医療機関の窓口で本人を確認することができなくなる。そして、マイナカードで確認する仕組みに転換する。
11月の下旬、【厚生労働省からのお知らせ】「マイナ保険証の利用登録はお済みですか?」という通知が、私のメールアドレスに届いた。
そもそも、マイナ保険証とかは何か? そして、その利用登録とは何だろうか?
私は、医療機関を受診する際にマイナンバーカードで本人確認を行っている。その手続きに、これまで何の支障もなかった。私は、これがマイナ保険証だと思っていた。
しかし、これを使うために格別の利用登録手続きをした記憶がない。登録確認の通知がわざわざ来るというのは、私は必要な手続きを、まだ行なっていないということだろうか?
それとも、私はマイナカードで本人確認しているのだから、すでに利用登録が自動的に済んでおり、このまま何もしなくてもよいのだろうか?
もし後者であれば、「マイナカードによって医療機関で本人確認を行なっている人は、すでに登録されているので、確認の必要はありません」という但し書きが当然あるべきだろう。しかし、そのようなことは何も書いてない。そこで不安になったのだ。
なお、私は「資格確認書」を持っていて、こちらの有効期限は数年先だ。だから、仮にマイナカードが使えなくても、すぐに困ることはない。しかし、資格確認書の有効期限がきたときに、トラブルが起きるかもしれない。
このメールには、「通常の保険証は、12月2日以降は使えなくなる」と、分かり切ったことを強調しているので、放置せず、確認しておくべきかもしれない。
そこで、マイナポータルにログインして確かめることにした。マイナポータルへのログインは頻繁に行なうことではないので、簡単ではない。以前にログインしたときの手続きをメモしておいたので、それに従ってやろうとしたのだが、今回はうまくログインできず、さんざん苦労した。
前とは方法を少し変えて、やっとログインできた。そして、「マイナ保険証」と書いてある欄を開き、「登録済み」の文字を見出して、ほっとした。
ところが、ほっとしたところで落ち着いて考えてみると、また新しい疑いが浮かんできた。
そもそも、「厚生労働省からお知らせ」というのだが、これは、詐欺メールだったのではあるまいか? 前項で書いたように、このメールの内容は、役人が書いたにしては、スキがありすぎる。それに、役所は、すべてのマイナカード保有者という膨大な対象に個別にメールを出すものだろうか?数人の友人に聞いてみると、そんなメールは受け取っていないという。
ただ、このメールは、マイナポータル という公式ドメインから発信されたものなので、その点では正規のメールだ。
また、メールにあるリンクは何もクリックしていない。だから問題ないと思うのだが、開いただけでウィルスが感染するメールもあるというから、心配になる……ここまで疑いだすと、きりがない。
私が強調したいのは、利用手続きの説明の悪さだ。
通知について言えば、まずこの通知が誰を対象としているかを明確に示すべきだ。
「現在すでにマイナカードによる本人確認を支障なく行っている人は、読まなくてよい」、「マイナカードを持っているが、本人確認を従来の保険証でやっている人は、急ぎ医療機関でマイナ保険証の手続きを行なってほしい」と書くべきだ。
また、マイナポータルへのログイン方法が簡単でないと言ったが、それは、数学の問題が難しいのとは違う。説明の仕方が悪いだけだ。もっと適切な説明にすべきだ。できれば、動画で示すべきだ。
なお、私のマイナカードは、今年12月に期限がきれるので、現在更新手続き中だ。この手続きをウェブで行ったのだが、説明は実に分かりにくいものだった。
私がマイナンバーカードに悩まされているのは、今に始まったことではない。10年前に初めて取得した時から悩まされ続けた。
その反面で、マイナンバーカードで何か便利なことがあったかと言えば、何一つなかった。医療機関受診の時に使っているのは事実だが、従来の紙の健康保険証と比べて何か便利になったことがあったかといえば、何もない。
それ以外には、印鑑証明書票の写しをコンビニエンスストアで撮ったのが1回あっただけだ。
その反面で、カードを取得し維持するために、大変な手間をかけている。最初の取得時だけではなく、5年目の秘密鍵更新の時にも区役所まで行った。今回の新規カードへの切り替も、実際のカードの交換のために区役所に行かなければならない。ところが私の住んでいる市の市役所は交通が不便な場所にあるので、行くのはかなり大変だ(取得時には自分の車で行ったのだが、その後、免許証を返却してしまった)。
要するに、私にとってマイナカードは、手間がかかるだけで、何もメリットがない代物なのである。
マイナカードは、任意取得の制度だ。それは、現在に至るまで変わらない。しかし、健康保険証の制度を廃止するのは、マイナカードの利用を事実上強制するものであって、大いに問題だ。
この問題については、結局のところ「資格証明書」を発行するという妥協案になったわけだが、問題の基本が解決されたわけではない。この問題は、日本のデジタル史に残る悪改革として記録されるだろう。
以上で述べた事情を背景として、マイナ保険証の利用度は低迷している。
読売新聞(2025年11月19日「マイナ保険証 これ以上の混乱は許されない」)によれば、25年9月において、医療機関・薬局で発行されるレセプトの枚数に占めるマイナ保険証の利用人数の割合は、44.4%でしかない。
マイナカードに保険証の機能をつけた人は、10月末時点で8700万人を超えているが、実際の利用率は3割台にとどまっている。マイナポイントを得るためにマイナカードは取得したが、実際には使っていない人が多いのではないだろうか?
最後に、誤解のないように申し添えたい。私が問題としているのはマイナンバーカードあって、マイナンバーではない。つまり、国民背番号制度は必要だと考えているのだが、そこで用いられるマイナカードという道具に問題があると考えているのだ。
マイナンバーは様々な用途を持つ。特に大きいのは税務上の利用だ。これによって、公平な課税が可能になるだろう。その他、様々な事務手続きが簡単になる。
しかし、マイナンバーの運用のために必要なものが、現在の形態のマイナカードなのか、といえば、大いに議論の余地がある。これに関する国民的な議論を継続すべきだ。
【あわせて読む】『患者のメリットはゼロ!…マイナ保険証を「いますぐ考え直したほうがいい」理由と、いまこそ思い返すべき「住基カード大失敗」の悪夢』
【あわせて読む】患者のメリットはゼロ!…マイナ保険証を「いますぐ考え直したほうがいい」理由と、いまこそ思い返すべき「住基カード大失敗」の悪夢

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。