園児虐待事件、“犯行”を主導した小松容疑者の素顔 「怒鳴ったりしているところを見たことがない」

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言うまでもなく保護者たちは保育士に全幅の信頼を寄せているが、それを裏切る前代未聞の出来事である。保育士たちが園児に刃物を向けるなど非道の限りを尽くしていたのだ。その親ならずとも心胆を寒からしめる事件の真相とは――。
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【写真を見る】犯行を主導したとみられる小松香織容疑者(38) 園児の柔らかい頬をつねるなんて序の口。怒鳴りつけ、嫌がる子供のズボンを無理やりおろす。果ては足をつかんで、逆さ吊りにして――。 静岡県裾野市にある「さくら保育園」の元保育士、三浦沙知(30)、小松香織(38)、服部理江(39)の3容疑者が行った児童虐待の数々は聞くに堪えないものだった。

静岡県警が今月4日に彼女らを暴行容疑で逮捕したのも至極当然。しかし、ここに至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。保育士三人が園児に数々の暴行を働いていた、静岡県裾野市にある私立「さくら保育園」「逮捕容疑となった虐待があったのは今年6月から8月にかけて。園の職員が三人の行状を見るに見かねて、8月半ばに市の担当者に“不適切な保育が行われている”と通報したのです」 とは、さる社会部デスク。「通報を受けて、市は園に事実関係を調査するよう指導。8月下旬、園は市に彼女らが15件に及ぶ虐待を行っていたという調査報告書を提出しています。ですが、市はその後2カ月以上もこの事案を放置した。担当者が重い腰を上げたのは11月も半ばを過ぎてから。その要請を受け先月29日、ようやく園は保護者説明会を開き、謝罪したのです」“ご臨終ごっこ” 説明会でついに詳らかになった虐待行為の数々。安心な場所であるはずの保育園で、我が子を思いもよらぬ危険にさらしていたと悟った父母が、その場で口々に怒りの声を上げたのも道理であろう。 捜査関係者が具体的な虐待の内容について明かす。「三浦容疑者と小松容疑者は、泣いている園児を撮影して笑ったり、“ブス”“デブ”“ガングロ”と暴言を浴びせたり、頬をつねっては頭をたたいたり。さらには、倉庫に閉じ込めるなんてことも。また、服部容疑者はバインダーで子供の頭をたたいている。一方で、三浦容疑者については、お昼寝中の子供たちに“ご臨終です”という言葉まで吐いていました」 園児相手に“ご臨終ごっこ”をしていたというからあきれ果てる。三人の中でも最もひどいのは小松容疑者の行いだったという。「子供のズボンを無理やりおろし、足をつかんで逆さ吊りにしたほか、手足口病の症状がある園児のお尻を別の園児に触らせるなんてことも。挙句、カッターナイフを突き付けて園児を脅したのですから始末に負えません」(同)主犯格は… その振る舞いはあまりに常軌を逸しているというほかないが、「三人が同じ1歳児のクラスの担当になったことで、事件が起きてしまった」 と言うのは、さる園の関係者である。「三浦先生は正規職員で9年間、小松先生は臨時職員で6年間、服部先生は派遣職員で3年間勤務していましたが、主犯格は小松先生です。彼女はよく言えば明るくて、ノリのいいタイプなのですが、悪ふざけが過ぎるところがある。保護者からすればとんでもないことでも、彼女からすれば悪ふざけの延長です。その彼女のノリに、服部先生が追随してしまった」 しかも、だ。「本来は常勤でクラスの責任者でもあり、そうした行いを止めなければならない三浦先生は二人より年下。彼女たちに強い態度で出られず、それどころか、結果的に同じノリを共有してしまった」「怒鳴ったりしているところを見たことがない」 こうして耳を疑う行為の数々が生まれたというのであるが、そんな彼女たちも、普段から接する地域住民の目には、良識ある隣人と映っていた。 小松容疑者の近隣住民は、「2人のお子さんがいますが、怒鳴ったりしているところを見たことがない。子煩悩で気さくな人なのに」 と、驚きを隠さない。「家の前で、自分の子供だけではなく、よそのお子さんも一緒に縄跳びや追いかけっこをさせてあげていた。さすが保育士さんだな、と思っていたのですが……」 三浦容疑者を知る住民も、次のように印象を語る。「会えばきちんとあいさつも交わしますし、悪いイメージはまったくありません。休日はお友達たちと駐車場でバーベキューを楽しんでいましたよ」 片や、服部容疑者の周囲からは以下のような評判が聞こえてくる。「旦那さんとお子さん3人、家族5人の暮らしです。ご主人は子煩悩な感じ。彼が庭いじりをしている時も、子供たちがその周りを楽しそうにキャッキャッと飛び回っていました」「元ヤンだったのかな」 ただし、服部容疑者本人については、「彼女が子供たちを叱責する声をよく耳にしました。優しく諭す感じではなく、荒っぽい口調です。元ヤンだったのかな、と思ったくらい。お子さんが3人もいらっしゃるから、それも仕方がないかな、とは思っていたのですが、こうして事件が起きると、保育園でもあんな感じで子供たちに接していたのかと疑ってしまいます」 今回の事件で管理者責任が問われる、「さくら保育園」のイメージは地に落ちた。この点、先の関係者は、「転園を希望する家庭が後を絶たず、今後の経営が危ぶまれます。ただ、もともと園は延長保育や保育農園のサービスが評価されており、地域でも一番人気がありました。入園するための競争率だって高かったのに……」 と、肩を落とす。9月に三浦・小松両容疑者は勧奨退職、服部容疑者はけん責処分に付され、全員が最終的に退職したものの覆水盆に返らず、なのである。批判の矛先 批判の矛先が三名の保育士のみならず、園の責任者に向かうのも自然な流れといっていいだろう。もっとも、さる園の元理事は櫻井利彦園長(53)についてこう話す。「園はもともと利彦さんのお父さんが脱サラして立ち上げた。お母さんも給食係を手伝っていましたね。息子の利彦さんも将来、保育の仕事に就くつもりで福祉系の大学に進学しています。新卒で地方銀行に勤め、行員時代に奥さんと行内結婚して、お子さんは男の子が2人。その後行員を辞めて、お父さんの志を継いだわけですが、園のことを誰よりも考えていた。本人も、三人には相当怒っていますよ」 しかし、前出のデスクはこう指摘する。「櫻井園長はある保育士に対して土下座をして口止めしただけではありません。すべての職員に対して業務中に知り得た情報を第三者に漏らさないとする誓約書まで書かせました。このことで事件の隠蔽(いんぺい)を図ったとして、村田悠市長は櫻井園長を犯人隠避の疑いで裾野署に刑事告発しています」市の責任は 一方で、事件の報告を受けてから3カ月、事案を公表してこなかった市にも非難の声が沸き起こっており、「村田市長は批判を受けて、公表の遅れについて会見で陳謝。担当者を更迭し、自身の給料も2カ月間全額返上する考えを明らかにしました」(同) 多方面に大きな影響を及ぼした事件。逮捕された無道な三人に関する捜査について、先のデスクは、「静岡県警は三人に逃亡や証拠隠滅の恐れがあるとして、逮捕に踏み切りましたが、一般的に暴行事案で身柄を取られるのはよほど悪質だと判断されるケースです。とはいえ、そもそも暴行事件全体で起訴に至るのは3割程度といわれている。特に、服部容疑者が園児をバインダーでたたいた件については、相当議論が分かれるところです」 だがしかし、一歩間違えば我が子の生命が危険にさらされていた父母の気持ちを慮れば、生半可な結論は下せないはずである。「週刊新潮」2022年12月15日号 掲載
園児の柔らかい頬をつねるなんて序の口。怒鳴りつけ、嫌がる子供のズボンを無理やりおろす。果ては足をつかんで、逆さ吊りにして――。
静岡県裾野市にある「さくら保育園」の元保育士、三浦沙知(30)、小松香織(38)、服部理江(39)の3容疑者が行った児童虐待の数々は聞くに堪えないものだった。
静岡県警が今月4日に彼女らを暴行容疑で逮捕したのも至極当然。しかし、ここに至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。
「逮捕容疑となった虐待があったのは今年6月から8月にかけて。園の職員が三人の行状を見るに見かねて、8月半ばに市の担当者に“不適切な保育が行われている”と通報したのです」
とは、さる社会部デスク。
「通報を受けて、市は園に事実関係を調査するよう指導。8月下旬、園は市に彼女らが15件に及ぶ虐待を行っていたという調査報告書を提出しています。ですが、市はその後2カ月以上もこの事案を放置した。担当者が重い腰を上げたのは11月も半ばを過ぎてから。その要請を受け先月29日、ようやく園は保護者説明会を開き、謝罪したのです」
説明会でついに詳らかになった虐待行為の数々。安心な場所であるはずの保育園で、我が子を思いもよらぬ危険にさらしていたと悟った父母が、その場で口々に怒りの声を上げたのも道理であろう。
捜査関係者が具体的な虐待の内容について明かす。
「三浦容疑者と小松容疑者は、泣いている園児を撮影して笑ったり、“ブス”“デブ”“ガングロ”と暴言を浴びせたり、頬をつねっては頭をたたいたり。さらには、倉庫に閉じ込めるなんてことも。また、服部容疑者はバインダーで子供の頭をたたいている。一方で、三浦容疑者については、お昼寝中の子供たちに“ご臨終です”という言葉まで吐いていました」
園児相手に“ご臨終ごっこ”をしていたというからあきれ果てる。三人の中でも最もひどいのは小松容疑者の行いだったという。
「子供のズボンを無理やりおろし、足をつかんで逆さ吊りにしたほか、手足口病の症状がある園児のお尻を別の園児に触らせるなんてことも。挙句、カッターナイフを突き付けて園児を脅したのですから始末に負えません」(同)
その振る舞いはあまりに常軌を逸しているというほかないが、
「三人が同じ1歳児のクラスの担当になったことで、事件が起きてしまった」
と言うのは、さる園の関係者である。
「三浦先生は正規職員で9年間、小松先生は臨時職員で6年間、服部先生は派遣職員で3年間勤務していましたが、主犯格は小松先生です。彼女はよく言えば明るくて、ノリのいいタイプなのですが、悪ふざけが過ぎるところがある。保護者からすればとんでもないことでも、彼女からすれば悪ふざけの延長です。その彼女のノリに、服部先生が追随してしまった」
しかも、だ。
「本来は常勤でクラスの責任者でもあり、そうした行いを止めなければならない三浦先生は二人より年下。彼女たちに強い態度で出られず、それどころか、結果的に同じノリを共有してしまった」
こうして耳を疑う行為の数々が生まれたというのであるが、そんな彼女たちも、普段から接する地域住民の目には、良識ある隣人と映っていた。
小松容疑者の近隣住民は、
「2人のお子さんがいますが、怒鳴ったりしているところを見たことがない。子煩悩で気さくな人なのに」
と、驚きを隠さない。
「家の前で、自分の子供だけではなく、よそのお子さんも一緒に縄跳びや追いかけっこをさせてあげていた。さすが保育士さんだな、と思っていたのですが……」
三浦容疑者を知る住民も、次のように印象を語る。
「会えばきちんとあいさつも交わしますし、悪いイメージはまったくありません。休日はお友達たちと駐車場でバーベキューを楽しんでいましたよ」
片や、服部容疑者の周囲からは以下のような評判が聞こえてくる。
「旦那さんとお子さん3人、家族5人の暮らしです。ご主人は子煩悩な感じ。彼が庭いじりをしている時も、子供たちがその周りを楽しそうにキャッキャッと飛び回っていました」
ただし、服部容疑者本人については、
「彼女が子供たちを叱責する声をよく耳にしました。優しく諭す感じではなく、荒っぽい口調です。元ヤンだったのかな、と思ったくらい。お子さんが3人もいらっしゃるから、それも仕方がないかな、とは思っていたのですが、こうして事件が起きると、保育園でもあんな感じで子供たちに接していたのかと疑ってしまいます」
今回の事件で管理者責任が問われる、「さくら保育園」のイメージは地に落ちた。この点、先の関係者は、
「転園を希望する家庭が後を絶たず、今後の経営が危ぶまれます。ただ、もともと園は延長保育や保育農園のサービスが評価されており、地域でも一番人気がありました。入園するための競争率だって高かったのに……」
と、肩を落とす。9月に三浦・小松両容疑者は勧奨退職、服部容疑者はけん責処分に付され、全員が最終的に退職したものの覆水盆に返らず、なのである。
批判の矛先が三名の保育士のみならず、園の責任者に向かうのも自然な流れといっていいだろう。もっとも、さる園の元理事は櫻井利彦園長(53)についてこう話す。
「園はもともと利彦さんのお父さんが脱サラして立ち上げた。お母さんも給食係を手伝っていましたね。息子の利彦さんも将来、保育の仕事に就くつもりで福祉系の大学に進学しています。新卒で地方銀行に勤め、行員時代に奥さんと行内結婚して、お子さんは男の子が2人。その後行員を辞めて、お父さんの志を継いだわけですが、園のことを誰よりも考えていた。本人も、三人には相当怒っていますよ」
しかし、前出のデスクはこう指摘する。
「櫻井園長はある保育士に対して土下座をして口止めしただけではありません。すべての職員に対して業務中に知り得た情報を第三者に漏らさないとする誓約書まで書かせました。このことで事件の隠蔽(いんぺい)を図ったとして、村田悠市長は櫻井園長を犯人隠避の疑いで裾野署に刑事告発しています」
一方で、事件の報告を受けてから3カ月、事案を公表してこなかった市にも非難の声が沸き起こっており、
「村田市長は批判を受けて、公表の遅れについて会見で陳謝。担当者を更迭し、自身の給料も2カ月間全額返上する考えを明らかにしました」(同)
多方面に大きな影響を及ぼした事件。逮捕された無道な三人に関する捜査について、先のデスクは、
「静岡県警は三人に逃亡や証拠隠滅の恐れがあるとして、逮捕に踏み切りましたが、一般的に暴行事案で身柄を取られるのはよほど悪質だと判断されるケースです。とはいえ、そもそも暴行事件全体で起訴に至るのは3割程度といわれている。特に、服部容疑者が園児をバインダーでたたいた件については、相当議論が分かれるところです」
だがしかし、一歩間違えば我が子の生命が危険にさらされていた父母の気持ちを慮れば、生半可な結論は下せないはずである。
「週刊新潮」2022年12月15日号 掲載

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