高市早苗首相の存立危機事態発言を受けて、中国の薛剣(セツ・ケン)駐大阪総領事が「汚い首」を斬るとXで一時投稿した際は、朝日新聞のX投稿を引用していた。
この朝日投稿では、存立危機事態について「認定なら武力行使も」との記事見出しを紹介していたが、こうした表現が中国側を刺激したとネット上の一部で批判が出ている。当初の記事は、後に見出しなどが変更された。同社では、総領事投稿前に「朝刊紙面に向けた編集」をしたとして、「批判を受けて見出しを修正したものではありません」と説明している。
総領事が2025年11月8日深夜にXで投稿した後、中国は高市政権への態度を硬化させ、日本への渡航自粛を呼びかけたり、水産物の輸入を事実上停止したりする対抗措置に出ている。
実際、ホテルに大量キャンセルが出たり、ホタテの輸出がストップしたりするなど、騒ぎが拡大している様相だ。
そんな中で、19日ごろになって、総領事が投稿で言及した朝日の記事が中国の過剰反応を生んだ元凶ではないか、との批判がXの一部で持ち上がった。
総領事が引用したのは、「高市首相、台湾有事『存立危機事態になりうる』 認定なら武力行使も」と7日付記事の見出しを紹介した朝日新聞デジタル速報席のX投稿だ。
そのリンクをクリックして表示される記事の見出し部分は、21日18時現在は、「認定なら武力行使も」から「武力攻撃の発生時」に変更されている。記事の履歴にあるように、当初記事が6時間後の7日夜に更新されたためで、記事そのものにもいくつか変更が加えられていた。
例えば、当初の記事は、「高市氏の答弁は、中国による台湾の海上封鎖などが発生した場合、状況によっては存立危機事態を認定し、自衛隊が武力行使に踏み切る可能性を認めたものだ」となっていたが、表現の一部が削られたり加えられたりしていた。更新後は、この部分が「高市氏の答弁は、台湾有事の際に状況によっては自衛隊が米軍とともに武力行使に踏み切る可能性を示したものだ」になっている。
こうした記事の変更については、批判も含めて様々な意見が出ている。
中国の総領事は、変更される前の記事を読んでいたか、朝日のX投稿にもある「認定なら武力行使も」の部分に刺激を受け、引用リポストした可能性は、もちろんある。これに対し、「これはダメだろ」「朝日新聞さん、コメントを」などと厳しく追及する声のほか、説明がなく記事が変更されたことについて、「しれっと訂正するな」との批判も上がっていた。
一方で、朝日の記事は、変更の前後で「武力行使に踏み切る可能性」に触れた点は変わっておらず、「認定なら武力行使も」の表現が間違っていたとは言いにくい。「朝日のタイトルはどっちも正しい」「中国が怒ってるのは高市内閣としての答弁」との指摘も出て、当初の記事については、「釣り気味のタイトルにするのは常套手段」と理解する向きもあった。
記事の変更について、朝日新聞社の広報部は11月21日、J-CASTニュースの取材に対し、メールで回答した。
7日15時57分に配信した当初の記事については、誤りではないことを説明した。
変更後の記事は、記事本文と見出しを同日21時58分に更新したとして、次のように説明した。
そのうえで、総領事の投稿を引き合いに出し、「反響が広がったご指摘の投稿は11月8日夜のものと認識しており、時間の前後関係からもご理解いただけると思いますが、批判を受けて見出しを修正したものではありません」としている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)