《懲役は…》「心から愛していた」元恋人をなぜ包丁で50ヵ所も刺したのか…? 26歳女性を殺害した男(30)の「あまりに身勝手な犯行理由」(平成24年)

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〈「もう家に来ないで!」借金1000万円超え、26歳女性を包丁でグサグサに…金銭トラブルで元婚約者を殺した30歳男の『真っ黒すぎる過去』(平成24年)〉から続く
「心から愛していました。6年も付き合い、当然結婚するものと思っていました」
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2012年(平成24年)、関西地方で金銭トラブルの末に元婚約者を殺害した30歳男性。愛していたはずの元恋人に、なぜ包丁を首を突き刺す凶行に及んだのか──。事件のその後を追う。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の2回目/最初から読む)
写真はイメージ getty
◆◆◆
事件の1週間前、華代さんは母親にすべてを告白した。カードが使えなくなったことを知った西田は、激怒して電話してきた。
「お前、何てことしてくれたんだ。手数料で50万円取られるって言っただろ!」
「まだそんなこと言ってるの? いい加減にしてよ。もう騙されないよ。アンタとは別れる!」
華代さんの決意が固いことを知ると、西田は何度も電話してきて、「なぜ、今回だけダメなんだ?」と食い下がったが、「これ以上、しつこくするなら警察を入れるよ!」と言われ、電話にも出てもらえなくなった。華代さんは西田が押しかけてくることを恐れ、友人宅に避難した。
突然、金づるを失い、西田は著しく困窮した。「殺してやる!」と怒りをたぎらせたが、もはや凶器を買う金もない。そこで仕方なく、800万円を借りていた知人男性のところへ行き、「これが最後のお願いだ」と土下座して頼んだ。
「今までデタラメを言って騙していたことも認めます。3日後には800万円を一括で返済します。証文も書くし、保証人も付けます。どうか10万円貸してください」
西田は知人男性と一緒に年金暮らしの祖母宅へ行き、「保証人になってほしい」と頼み込み、10万円を借りることに成功した。その足で包丁、催涙スプレー、双眼鏡などを買いに行き、華代さんの自宅の様子を調べて、華代さんが実家に戻ってきていることを確認した。
事件当日、西田は堂々と華代さんの実家を訪問。詳しい事情を知らなかった祖父母は、「西田くんが来たよ」と華代さんと引き合わせ、華代さんは顔面蒼白になった。
「もう会わないって言ったのに、何で来たのよ!」
「これが最後のお願いだ。オレとやり直してくれ」
「それは無理って言ってるでしょ。それより今までのことは全部自分が悪いって一筆書いてよ。お金を返してくれなかったら、裁判で訴えるからね!」
その途端、西田は華代さんの顔面に催涙スプレーを噴射した。目が見えなくなった華代さんを包丁で50カ所以上もメッタ刺しにし、首に包丁を突き刺したまま玄関から逃走した。
「おい、どうしたんだ?」
急に外に出て行った西田を不審に思い、祖父が自転車で追いかけてきた。西田は近くにあった郵便局に飛び込み、「人を殺してきた。警察を呼んで欲しい」と頼んだ。
まもなく警察官が駆けつけ、西田は殺人容疑で逮捕された。西田の家族は事件を知って、「もう一切関わりたくない。極刑になればいい」と突き放した。
西田の両親が公判への出廷を拒否したので、借金の保証人になった祖母が検察側証人として出廷した。
検察官「お金を貸していたのは?」
祖母「絶対返すからと言っていたのと、もうちょっとしたら大きなお金が入ると言っていました」
検察官「お金を何に使ったのか知っているか?」
祖母「知りません。あとから電話がかかってきて、『あの話は流れた』『書面は破って捨てた』と言われました」
検察官「被告人とはいつから会っていたのか?」
祖母「中学卒業以来、会ってなかったけど、1年ぐらい前から急に会うようになった」
検察官「それでお金を貸したり、保証人になったりしたのか?」
祖母「そうです。聡の両親や兄弟は全員が無視しているのでかわいそう。母親も面会に来ない。親にも金銭的な面でひどいことをしているから」
検察官「被告人の子どもは両親が見ているのか?」
祖母「1男1女がいるが、上の男の子は母親が見ている。下の女の子は前の奥さんが引き取って育てている」
検察官「被害者のことは知っているか?」
祖母「いずれ結婚する人だと聞いていたが、私は電話でしかしゃべったことがない」
検察官「他に何か言いたいことは?」
祖母「私もあまり長く生きていられないので、1日でも早く刑期を終えて出てきてほしい」
西田は被告人質問で次のように話した。
弁護人「被害者をどう思っていた?」
被告人「心から愛していました。6年も付き合い、当然結婚するものと思っていました」
弁護人「事件当日に訪問したのは?」
被告人「これまでケンカしても仲直りできたし、直接会って話をすれば、復縁できるものと思っていた。関係修復が目的でした」
弁護人「それでどうなりましたか?」
被告人「彼女は1階で昼食を食べていたが、2階の部屋に連れて行かれ、やり直したいと言っても聞いてくれず、『何しに来たんよ、はよ帰って。警察呼ぶで』と言われました」
弁護人「それであなたはどうしましたか?」
被告人「いったん帰ろうと思いました」
弁護人「それでも帰らなかったのはなぜですか?」
被告人「被害者が立ちふさがって、これまで騙して金を借りていたことを追及してきた。彼女のバイト先から金を盗んだことも『私に関係ないと一筆書け』と言ってきた。2人で協力してやったことなのに……」
弁護人「被害者がバイト先のレジから自ら盗んできたものですか?」
被告人「そうです。それをすべて私のせいにしようとしていました」
弁護人「あなたはどう思いましたか?」
被告人「裏切られたと思いました。被害者の抵抗を排除して立ち去ろうと思いました。催涙スプレーをかけた際に、自分の目に入ってしまい、視界を遮られたまま、彼女に向かって何度も包丁を突き刺しました」
弁護人「なぜそのようなことを?」
被告人「誰からも相手にされない中で、彼女は唯一の心のよりどころだった。その彼女に見放され、このままでは社会からも孤立し、一人ぼっちになってしまうと思ったから……」
弁護人「調書では『自分もあとを追って死のうと思った』と書かれているが……」
被告人「死刑になりたいと思い、捜査段階では必要以上に悪質性を強調していた」
弁護人「虚像はいつかバレると思わなかったか?」
被告人「バレた後も彼女から『私の顔をつぶさないで』と言われていた。彼女のために、彼女の家族にウソをついていた。その内容は2人で一緒に考えていた」
弁護人「彼女の名義でお金を借りていたのは?」
被告人「サラ金の本人確認は彼女自身がしていた。督促状や督促の電話も当然認識している。直前に至るまで騙していたわけではない。私が周囲の人間からお金を騙し取っていたのは、彼女の意向でもあった」
弁護人「裁判所に言っておきたいことは?」
被告人「何千回謝っても許されないが、謝ることしかできません」
裁判所は「犯行は自己中心的で用意周到。被害者のカードを無断使用して借金を作ったことが発覚し、別れ話を持ちかけられたことが原因。公判では荒唐無稽な弁解に終始しており、真摯な反省が見られない」として、求刑を1年上回る懲役21年を言い渡した。

呆然とする西田に対し、裁判長が「あなたには被害者の冥福を祈る資格もない、と言われかねない。あなたがウソの世界から抜け出すための21年」と説諭した。
(諸岡 宏樹)

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