支持率は高いが自民党内部から「反発の声」…高市早苗政権が“これから失速する”と予想される理由

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『2時30分、首相公邸』
11月7日9時開始の衆院予算委員会に備え、霞ヶ関に異例の時刻の召集がかかった。岸田政権や石破政権でも早朝6時開始の勉強会はあったものの、午前3時開始は異例のこと。無論、高市早苗総理(64)を待たせるわけにはいかず、官僚たちは30分前の集合となった。
「働いて働いて働いて働いて働いて参ります」
10月4日、自民党総裁選で初の女性総裁に就任し、そう述べた高市氏。トランプ大統領(79)の横で飛び跳ね、日韓首脳会談、日中首脳会談と立て続けに外交日程をこなし、各社の世論調査でも7割前後の高支持率を記録。初の予算委員会を控え、エンジン全開というところだったのだろうか……。
「予算委員会は代表質問と異なり、一問一答の質疑。野党の質問は事前に通告されるが、箇条書きや簡単なメモ程度。NHKで生中継もされ、丁々発止の議論と予定調和のない緊張感を生み出し、論戦となる傾向が強い。’17年2月、安倍晋三総理が『私や妻が関係していたら総理大臣も国会議員も辞める』と野党議員の追及に『逆ギレ答弁』したのも衆院予算委員会でのことだった」(全国紙政治部記者)
答弁する側としては、何をどう聞かれても切り抜けられるように備え、失言は回避したいもの。これまで高市氏は官僚任せにはせず、答弁書を事前確認して自ら内容を修正していた。
「総務大臣、経済安保相のときも赤坂宿舎にこもって官僚の作った答弁書を全部自分でチェックしていた。ただ、総理に比べたら限られた分野です。それに夫の山本拓氏(73)が調理免許を持っていて、食べ残した朝食のサラダのトマトを野菜ジュースにして夜に出すなど、食事面で高市氏の体調管理をしていた。
ところが、頼りの山本氏が脳梗塞で倒れてしまった。10月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)では昼食会、夕食会を『日程上の都合』として休んでいた。体調管理はできているのか」(政治ジャーナリストの安積明子氏)
高市氏は物価高対策として所信表明演説でガソリン・軽油の暫定税率廃止や電気・ガス代の補助を実施すると述べた。臨時国会でガソリン減税の関連法案が成立する見込みで、ひとまず物価高対策の法案は可決となる見通しだ。
「ガソリン減税の法案を提出したのは野党で、自民党は了承した形となる。ガソリンや軽油の値段が下がれば、『わが党の政策が実現した』と喧伝するのは野党となろう。以後も少数与党である自民党が法案を通そうと思えば、自民党は調整などで汗をかくも、手柄は野党のものになる」(政治ジャーナリストの角谷浩一氏)
臨時国会での注目は衆院議員定数の1割削減ができるか否かだが、少数与党となった現在では、政府案として提出する法案は安倍政権下のようなゴリ押しでの成立は望めない。
自民党と日本維新の会が交わした連立政権の合意文書には、「1割を目標に衆議院定数を削減するため、’25年臨時国会中に議員立法の提出し、成立を目指す」と明記されている。維新にとって議員定数削減は、副首都構想や社会保障改革と並ぶ政策の柱となっている。
維新の吉村洋文代表(50)は「議員定数削減は改革のセンターピン」と何度も述べていた。高市氏も7日の衆院予算委員会で「提出する」と断言してみせた。
だが、自民党内はトーンダウンしている。調整役の鈴木俊一幹事長(72)が「削減は比例だけにするのか、小選挙区も減らすのかなど、さまざまな意見がある。具体的な結論を会期末の12月17日までに決めきるのは難しいのではないか」と早くも白旗を揚げている。
「これまで全党派が参加する協議体で選挙制度についての議論を重ねてきた。定数削減もその協議体で語り、春先を目処に結論を出す予定だったが、首班指名選挙を乗り切るために高市総理は維新手を組み、12月17日までの臨時国会で法改正を目指そう、とゴリ押ししてきた。
党内がまとまる気配は全くないが、仮に高市総理のトップダウンで党内をまとめたとしても国会の論戦で野党の反発は必至。参政党や公明党などの小規模な政党は絶対に乗ることはない」(旧岸田派参議院議員)
吉村氏を始め、維新幹部は議員定数削減ができなければ連立を離脱すると明言しており、高市政権は板挟みに陥っている。この窮地を打破するためか、維新の藤田文武共同代表(44)が「衆院解散も選択肢」との認識を示すと、永田町は「議員定数削減で解散か」と俄かに騒がしくなり、怪文書も出回った。
11月10日の衆議院予算委員会で、野党議員が「議員定数の削減」を争点とした衆議院の解散について質(ただ)すと高市氏はこう述べた。
「少なくとも議員定数の議員立法を争点に解散するということは、普通考えにくいんじゃないでしょうか」
高市政権は高支持率を維持しているが、自民党の政党支持率は各社の世論調査で3割前後と伸び悩んでいる。これまで選挙協力してきた公明党の力を借りられるわけもない。
「議員定数削減で自民党内をまとめきれないと見ているが、仮にできたとしても内部に火種を残す。もともと維新の政策で、総理が総裁選で掲げた政策でもないのに自民党内でたくさんの血を流し、やっとの思いで法案を提出できたとしても、後の国会論戦で国民民主を除いた野党は反対するだろう。維新の政策のためになぜそこまでやらねばならないのか」(自民党若手衆議院議員)
公明党から連立離脱を言い渡され、首班指名選挙を勝ち抜くために維新の力を借りたツケが巡ってきた格好だ。高支持率に沸き立ってはいるが、高市政権が歩まねばならない「イバラの道」は始まったばかりだ。
取材・文:岩崎 大輔

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