都内で急増!“子犬サイズ”に巨大化したネズミの正体…毒エサを食べない?切り札の駆除策に「依頼者も引いていた」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コロナ禍収束後、都心の繁華街でネズミが急増しているようだ。さらにネズミの巨大化が進んでいて、子犬ほどの大きさに成長した超巨大ネズミの目撃例、捕獲例も報告されている。ネズミの駆除経験が豊富な害虫&害獣駆除のプロ、足立雅也さん(808シティ代表)が真相を語る。
コロナ禍収束後、私の住まいでもある都内で急に、ネズミが増えたというのは本当です。特に都内の繁華街において顕著ですが、もしかすると名古屋や大阪、博多などの都市部もすでに同じ状況に陥っているかもしれません。
でも、それよりもっと驚くべきなのが“ネズミの巨大化”です。通常、ネズミは200~250グラム程度でも十分大きいとされているのに、明らかに500グラムを超えていそうな超巨大ネズミを、新宿や上野の繁華街で目にするようになったのです。
500グラム超というと、他の動物にたとえるなら“小型犬の子犬”くらいの大きさです。私も飲食店からネズミ駆除の依頼を受けて、超巨大ネズミを実際に捕獲したことがありますが、そのときは大きなネズミを見慣れている私でさえ、あまりの大きさと重さにしばし言葉を失いました。
駆除業者の間では「子猫サイズのネズミ」という表現をたまに使うのですが、そいつは子猫というより、まさに子犬といっていいほど巨大だったのです。
巨大ネズミはここ数年、都内の繁華街で頻繁に目撃されていて、巨大ネズミの巣窟と呼べるようなスポットもいくつかあります。
たとえば上野某所のビルとビルの隙間には、昼でも常に30~40匹、夜には100匹近くのネズミがうろついていて、その中には超巨大ネズミもかなりの数が生息しています。彼らはビルとビルの間の砂利や土に穴を掘って根城を作り、飲食店から出されたゴミなどを食べて暮らしているようです。
なぜ近年、都心部で超巨大ネズミを見かけることが多くなってきたのか?
はっきりした理由は分かりませんが、気候が温暖になり、コロナ禍が収束して飲食店が活発になってエサも豊富になるなど、ネズミの成育環境が以前よりよくなったことで「ネズミたちの寿命が延びたのではないか」…と私は考えています。
なぜなら、巨大化したネズミたちには総じて、高齢動物特有の“感覚や運動機能の衰え”がみられるからです。
「ネズミは警戒心が強くて、すばしっこい生き物」と思っている人が多いはずですが、老ネズミの場合は人間が近づいても逃げようとはしません。最初は「繁華街で暮らすうちに人間の存在に慣れて、神経が図太くなったのかな?」とも思ったのですが、どうやらそうではなく、加齢のせいで耳や目の感覚が衰えて人が近づいても気がつかないようなのです。
人間も年をとると、目がかすんだり、耳が遠くなったりしますよね。私が出会った巨大ネズミたちはみな、それと同じような症状を示していました。私が近づいてしばらくすると逃げようとするのですが、まるで「よっこらしょ」と言いながら立ち上がるお年寄りのような緩慢な動作でゆっくり逃げていくのです。
機敏に動けなくなった年寄りのネズミなら、若いネズミと比べて駆除や捕獲は簡単そうに思えますよね?ところがじつはこれが逆にやっかいなのです。
通常ネズミを駆除する際には、毒エサを撒いたり、粘着トラップを仕掛けたりするのですが、年寄りのネズミは食が細くなっているので、毒エサを置いてもぼんやりエサを眺めているだけで、なかなか食べてくれません。
ネズミの通り道に粘着トラップを敷くという駆除法も、年老いたネズミには効果が薄いようです。老ネズミは動き回らず、じっとしていることが多いため、なかなか粘着トラップの上を歩いてくれないのです。
さらに彼らは耳も遠いようで、ネズミが嫌う超音波を発する駆除機を設置しても逃げようとはしません。耳のすぐそばまで超音波駆除機を近づけてやっと逃げていくのです。あるいは、ようやく人の気配に気が付いたのかもしれません。
そんな老ネズミの姿を見ていて、私は「ネズミも人間と同じく、認知症を発症するのではないか?」と感じることがあります。年を取って巨大化したネズミの多くは、常にぼ~っとしているように見えるし、帰る場所を忘れてしまったのか、迷子らしき老ネズミの姿を見る機会も増えてきました。先日も新宿の某スーパーブランドショップの前で、そんなネズミを目撃しました。
巨大な老ネズミが、のそのそと自動ドアを開けて店内に入ろうとしていたのです。その時はさすがに職業柄、黙って見ているわけにはいかず、ネズミが店内に入るのを足で阻止しましたが、あの老ネズミはどこに行こうとしていたのでしょうか?
毒エサや粘着トラップが効かなくなった年老いたネズミは、どんな方法で駆除すればいいのか、私自身も頭を悩ませています。
先日、某飲食店さんから巨大ネズミの駆除依頼が来たときは、ある習性を利用して駆除しました。
ゴキブリが人の顔めがけて飛んでくるのと同じように、ネズミは人間の足元の右側を通り抜けようとします。そこで僕は右足を引いて待ち構え、ネズミが足に乗るタイミングに合わせて勢いをつけて足を払いました。
するとネズミは「ベチ~ン!」と向かい側の壁にぶつかり、床に落ちて脳震とうを起こしたようでした。そこにすかさず走り込んで粘着トラップを貼り付け、挟んで駆除したのです。近くで見ていた飲食店のスタッフさんは、ネズミの大きさにも引いていましたが、私の行動にも引いていましたね。
私だってほんとうは年老いたネズミを、むやみに殺したくはありません。もう繁殖もしないし、あと数カ月も経てば寿命を迎えて天に召されるはずですからね。ネズミの駆除は、繁殖力旺盛な若い個体や、これから繁殖期をむかえる子ネズミを駆除するのが基本で、年老いておとなしくなったネズミは、放っておいてもたいして問題ないのです。でも人間のサガというべきか、駆除業者も飲食店の人もできるだけ大きなネズミを捕まえることを目標にしがちなんですよ。
この記事を読んだ動物好きの方からは「それは動物虐待ではないか。殺すにしても動物が苦しまない方法を選ぶべきだ」とお叱りをうけそうです。
海外では「はじき罠」と呼ばれる、人もケガをするくらい強力なバネのついたトラップが一般的です。これは、ネズミが踏んだらバチーンと瞬時に首元を金属バーが挟んで圧死させる方法で、「日本の粘着トラップはネズミが逃げ出そうと長時間もがき苦しむので残酷だ」と言う声もありますが、どうなのでしょう?
粘着トラップによる駆除は、考えようによっては確かに残酷かもしれませんが、大きなメリットがあります。
私が脳震とうを起こしたネズミを粘着トラップで挟んで駆除したのにもじつは意味があるのです。
ネズミが死ぬと、それまで体毛のなかに潜んでいた大量の吸血ダニが、次の吸血源を求めて死骸から離れてそこいらじゅうに広がっていきます。でも粘着トラップを使うとダニも粘着面にくっついて移動できなくなるので、害獣と害虫を一網打尽にできるのです。取り扱いも「はじき罠」と比べて安全ですし、安価なので広い範囲を対策できます。
一般の家庭で巨大化したネズミを見る機会は少ないはずですが、もし発見した場合は一般の方の手には負えないので駆除業者に依頼するのがおすすめです。後編では「自作できる段ボールトラップ」について説明しているので、家にネズミが出没して困っている方はそちらもぜひ読んでみてください。
足立雅也(あだち・まさや)害虫駆除や鳥獣対策を手掛ける「808シティ」代表取締役社長。
構成=中村宏覚

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。