「今から思えば地獄だった」 “治療”と称して女子高生を支配した教師、恋愛を装った性搾取の実態

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かつては問題視されなかった教員と生徒の恋愛や性的関係が、今は「犯罪」として捉えられるようになってきている。
刑法改正によって「性的同意」年齢の引き上げられ、「不同意性交等罪」が新たに規定されたほか、「グルーミング」という言葉が浸透したことが大きい。
学校内での盗撮や画像共有も相次いで発覚し、教職員による性犯罪が社会問題化したことも背景にある。
こうした変化の中、10年以上前に近畿地方の高校に通っていたAさん(当時18歳)は、社会科の教師B(当時20代後半)との関係を長く「恋愛」と信じていた。
しかし今では、それが「性被害」や「グルーミング」だったと認識し、教育委員会に被害を訴えている。(ライター・渋井哲也)
小学校時代からいじめを受け、さらには担任教師による性被害も経験していたAさん。心に傷を抱える彼女が、高校3年生で転校した先で、新たな加害者となるBから声をかけられた。5月だった。
「先生から『お前なんでバイトしてへんの?』と聞かれました。『軽い精神病にかかっているから』と答えたら、『小さい頃にレイプでもされたん?』と冗談まじりに言われたんです」
Aさんは、小学2年生のときの担任から、体育倉庫で下腹部を触られ、体操服や下着を脱がされる被害を受けていた。正直に話すと、Bは表情を変えてこう言った。
「お前には治療が必要だ。明日から早めに学校来い。話そう」
「先生が助けてくれるのではないか」。そう信じたAさんは、Bとの”密会”を重ねていく。学校の図書室や格技室など、人目のない場所で二人きりで話す時間が増えていった。
ほどなく、Bは「美味しいラーメン屋さんがあるから、食べに行かへん?」と誘い、二人の関係は急速に深まっていく。手をつなぐことや、性的な会話もするようになった。
「6月になると、休みの日に学校の外で会うようになりました。デート中に『胸の大きい女の子は我慢できない』と言っていました」
教員1年目だったBは「寂しいから会いたい」「職場でやっていけるか不安だ」と弱さを漏らす一方で、Aさんには「俺たちの関係は二人だけの秘密やで」と秘密の共有を求めた。
夏休みに入ると、Bの行為はエスカレートした。Aさんを車で連れ回し、神社の展望台で膝枕をさせたり、身体を触わるようになる。Bの家族が経営する工場や、Bの実家にAさんを連れ込み、服を脱がせてキスしたり、胸を舐める行為にまで及んだ。
「それでも『彼氏ができた』とうれしく感じていました。今思えば、『性的な消費だった』と思いますが、当時は『性的対象と見られるのは、女性として価値がある』と思っていました」
しかし、こうした秘密の関係に女子高生が悩まないはずがない。校内で「Bと生徒がセックスをした」という噂が流れると、Bは噂の対象となった別の生徒のフォローに忙しくなり、Aさんへの態度は冷たくなった。
「私は悩んでバイトも手につきませんでした。精神不安定になっていたこともあり、シフトを減らされました。様子がおかしいと気づいた母が私を精神科に入院させました」
Aさんの入院を知りながらも、Bは何も言わなかったという。退院後も、Bの行為は続いた。
「指を膣に挿入されることもありました。全裸の写真や、胸に男性器を擦り付ける場面などを動画で撮られました。レンタルビデオ屋のAVコーナーに一緒に入ったこともあります」
なぜか、この頃、Bは性器の挿入をしなかった。
「自宅に連れ込んで満足しているという感じでした。先生は『挿入をすると男女の関係が変わってしまう』と言っていました。教師としての矜持みたいなものかもしれません。擬似的な行為はありましたけど」
卒業が近づくと、Aさんが専門学校の入試で忙しかったこともあり、ほとんど会わずず、Bは性的関係を求めなくなった。そして、Bは卒業を目前に「結婚したい相手がいる」と告げた。
「『お前の恋愛偏差値をあげるために付き合ってあげている』『他の男とデートしろ』など態度が急に冷たくなりました」
卒業後、一度だけ性器の挿入はあったが、二人は疎遠になっていった。
しばらく経ってから、Aさんが高校時代の親友CさんにBとの関係を打ち明けると、親友は言った。
「それはおかしいよ」
この言葉でAさんは初めて自分が性被害に遭っていたのだと気づいた。
「もし、このとき親友に相談しなかったら、性被害だと認識できず、辛い失恋の記憶で終わっていたと思います」
Aさんはテレビで「グルーミング」という言葉を知り、「自分のことだ」と革新した。Bにとって、自分は「恋愛対象」でなく「ヤリモク」だった──。
「高圧的な態度なのに普通に接してくれるという錯覚が、依存を生んだと思います。あの治療は、今から思えば『地獄』でした」
Bが今も教職であることを知ったAさんは、教育委員会への告発を決意した。
「校内で二人きりのときに『3回周って、ワンと言え』と命令されて、その通りにすると顎の下を撫でられた記憶がよみがえりました。あの屈辱は一生忘れられません」
「税金から給料をもらっている教師が、治療と称して生徒を支配していたことが許せません。告発することで、私のような思いをする子がこれ以上出ないように願っています」

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