「ロータリーがゴミだらけ」早稲田祭後の惨状が拡散、清掃に目覚めた理由「早大生がポイ捨てしたゴミを小学生が拾ってるって聞いて…」

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学園祭シーズンが本番を迎えた11月初旬、Xに投稿されたある写真が話題を呼んだ。東京都新宿区にあるJR高田馬場駅前ロータリーに積み上がったゴミの山――11月1日と2日に行なわれた早稲田大学の学園祭「早稲田祭」の打ち上げで集まった若者たちが去ったあとの、変わり果てたロータリーの姿だった。投稿主である早稲田大学公認サークル「ロータリーの会」の担当者に話を聞いた。
【画像】ゴミ山が発見される前日の夜、駅前に集まる学生たち
話題となった写真をXに投稿した「早稲田大学ロータリーの会」は、高田馬場駅前ロータリーのゴミ問題の解決に向けて活動を行なう大学公認サークルだ。
学園祭後の駅前ロータリーの“惨状”について、会の幹事長である三好さん(3年)は次のように説明する。
「3日は授業もありましたが、参加できるメンバー11人ほどで朝の8時半から2時間以上かけて清掃しました。ロータリーの外にもゴミがあふれていたので、ロータリーの中とあわせてゴミを拾い、一箇所に集めて集計した結果、空き缶が466本、ペットボトルが102本、空き瓶が34本ありました。
早稲田祭のあと、打ち上げの1次会が終わる頃から若者たちがロータリーに集まり、円陣を組んだりして盛り上がります。その騒ぎが終電後ぐらいまで続きますね。毎年、早稲田祭のあとはロータリーがゴミであふれます」
同会では授業期間中の平日、火曜朝8時半と金曜夜22時から、30分ほどかけてロータリーの清掃活動を行なっている。年に3回は高圧洗浄機も使用して地面を綺麗にするという。
三好さんは「拾うことそのものが目的というよりは、『捨てさせない空気づくり』を目指しています。街の利用者の方に私たちがゴミを拾っている姿を見ていただいて、少しでもポイ捨てに対する意識を変えることにつなげられたら」と話す。
会の発足は2020年にさかのぼる。
「初代の幹事長は、もともと“ポイ捨てする側”でした。東京から福岡まで22日間かけて徒歩で帰省した際に、山林に不法投棄されたゴミを見て『景観が綺麗なのは当たり前ではない』と気づき、自分にとって身近な場所である高田馬場駅前ロータリーで活動を始めようと2020年に当会が発足しました。当時のメンバーは2人で、日曜日を除く週6日、毎朝7時半から清掃をしていました。
ロータリーが日々綺麗に保たれているのは、新宿区から委託された業者の方が毎朝清掃しているからです。でも業者の方は当事者ではありません。より当事者性が高い自分たちの手でやらないと、尻ぬぐいをする人の存在が当たり前になってしまうんじゃないか。そう考えて、この活動を始めたと聞いています」
2020年に発足後、少しずつメンバー数を増やしながら、大学のボランティアセンターに登録して活動するようになったという。現在メンバーは60名。小島さん(1年生)は参加のきっかけについて次のように話す。
「なにか“高尚”な感じのことをやろうというよりは、先輩たちの雰囲気が良かったので参加しました。活動したことの結果が目に見える形で分かりますし、意外とロータリーのゴミ問題に関心を持つ人が多くて、『自分たちの活動がいつかもっと大きいことにつながるんじゃないか』という期待感もあります」
西岡さん(1年生)も、「最初はゴミを拾いたいとか高田馬場駅前を綺麗にしたいという意識はまったくなかった」という。会のホームページに「いわゆる“意識高い系”ではない方や、他大の方も大歓迎」とあるように、活動への参加の間口は広くしている。
三好さんは次のように話す。
「私の場合は、『早大生がロータリーにポイ捨てしたゴミを小学生が拾ったりしてるらしい』と聞いてショックを受けたことが会を知るきっかけになりました。でも、活動に参加するのは、必ずしもそうした問題意識を最初から持っている人だけでなくてもいいと思います。
なかには、ロータリーが街の人たちの『居場所』になっているという文化的な側面を大事にしたいというメンバーもいます。ポイ捨てをしている人たちを一様に排除しようというような意識ではなく、お互いに寄り添い合いながら巻き込むような形で変えていけたら、と考えています」
お互いの違いを認め合いながら、よりよい社会を目指す。その意識が駅前の状況にも少しずつ映し出されているかといえば、そう簡単ではないとため息をつく。
「私たちはゴミを拾う際にすべて数えているのですが、残念ながらゴミの量はあまり変化していません。
一時期、『SmaGO(スマゴ)』というIoT対応のスマートゴミ箱(太陽光発電で稼働し、ゴミを自動圧縮する機能などがついたゴミ箱)をロータリーに設置しようと試みたことがありました。地域の町会長や住民の方を巻き込みながら署名を集め、新宿区に要望書を提出したんです。2回試みたのですが、リスクへの懸念を払拭できないために断られてしまいまして。
ロータリーは公道という扱いになるため、勝手に物を置けないんです。家庭ゴミの持ち込みや放火、テロなどを誘発する可能性もあります。ゴミ箱を置けたらいいとは思いますが、置いても問題解決に至るわけではありません」
現在は大学内の他サークルや企業など、学内外と協働しながらの清掃活動や、大学内での啓発、周辺の学校への出張授業といった活動を行なうロータリーの会。三好さんは、高田馬場駅前ロータリーのポイ捨ては「決して早大生だけの問題ではない」と訴える。
「ロータリーは早大生だけではなく、社会人、周辺の大学や専門学校の学生、外国人留学生など、さまざまな方が利用しています。タバコの吸い殻の多くは、早大生がいない朝から夕方までの時間帯に捨てられています。ロータリーの会が朝清掃を行っている目の前で、社会人の方がポイ捨てをしていくことも日常茶飯事です。
ロータリーでのポイ捨ては早大生だけの問題ではありません。広く社会全体の問題として捉えていただけたらと思います」
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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