加湿器にカビや菌が繁殖、肺炎やアレルギーの危険性…こまめな水の交換や掃除で予防

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空気が乾燥する冬に活躍する加湿器は、内部に細菌やカビが繁殖すると、肺炎の原因になりかねない。
免疫が低下している高齢者は、特に注意が必要だ。水の交換や掃除を適切に行い、快適な冬を過ごしたい。(井上大輔)
インフルエンザウイルスの感染対策では、湿度50~60%に保つことが効果的とされている。乾燥を防ぐには加湿器が便利だが、手入れや扱い方を誤ると、別の病気につながる恐れがある。
大分県の高齢者施設では約8年前、入所者ら80~90代の男性3人が、レジオネラ症による肺炎を発症し、うち1人が死亡した。加湿器内に繁殖したレジオネラ菌が感染源とみられている。
レジオネラ菌以外にも、細菌やカビが肺や気管支でアレルギー反応を引き起こし、過敏性肺炎を発症する例もある。池袋大谷クリニック(東京)院長の大谷義夫さん(呼吸器内科)は、「加湿器を原因とする肺炎では、過敏性肺炎が多い。11月頃から感染者が増え始める」と話す。
過敏性肺炎の症状は発熱やせきなどで、胸部レントゲンでも異常が見つかりにくく、風邪と診断されるケースが多い。大谷さんは「予防のため、加湿器内に菌が繁殖しないように、定期的に手入れしましょう」と呼びかける。
メンテナンス方法を加湿器メーカー「ダイニチ工業」(新潟)の工藤夏希さんに教えてもらった。
加湿器は加湿方式によって、スチーム(加熱)式、気化式、超音波式などにわけられる。スチーム式は、水をヒーターで加熱して蒸気を発生させる。気化式は、水を含ませたフィルターに風を当てて湿った空気を室内に放出。超音波式は、超音波の振動で水を霧状にする。
構造が違うため、手入れ方法などは異なるが、「水をためておくタンクや、フィルターをぬらすトレーの水は水道水を使うことが大切」という。浄水やミネラルウォーターは菌が繁殖しやすい。
また、水道水の塩素は半日ほどで効果が切れるため、水はつぎ足して使わず、毎日交換する。
古い水を捨てた後は、新しい水を少量入れ、タンクを軽く振って内部をすすぐ。さらに2週間に1回は柔らかいスポンジなどで洗う。水あかやぬめりは、菌繁殖のサインなので、見逃さないよう注意したい。「なかでも超音波式は、繁殖した菌がそのまま放出されるため、特に注意が必要です」と指摘する。
気化式は、月に1回は、フィルターを清掃する。取扱説明書に従い、洗面器などにぬるま湯をため、メーカー指定の洗剤を溶かして、フィルターをつける。その後、水道水でしっかりすすぐ。
高齢者の場合、加湿器のタンクが重くて持ち運びが大変ということもあるだろう。工藤さんは、「重いタンクの持ち運びは転倒のリスクもある。一度に入れる水の量を減らし、頻繁に交換するのも手です」と助言する。
タンクの注ぎ口は大きく、内部に凹凸が少ない方が、中を洗いやすい。菌が繁殖しやすい場所に抗菌加工が施されたものや、使い捨てのフィルターが使えるものもある。工藤さんは「加湿器を購入する際は、値段やサイズだけでなく、メンテナンスがしやすいか確認しましょう」と話している。

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