日本の屋内・敷地内に設置され、インターネットにつながった「ネットワークカメラ」のライブ映像約500件が海外のサイトに公開され、誰でも見られる状態になっていることが読売新聞と情報セキュリティー会社「トレンドマイクロ」(東京)の調査でわかった。
屋内の映像は保育園や食品工場など90件。設置場所・状況を確認できた屋内のカメラの大半は、防犯・見守りや安全管理を目的に導入されたもので、無断でサイトに公開されていた。
読売新聞とトレンドマイクロが9~10月、国内外のネットワークカメラのライブ映像を収集・公開しているサイトを調べた結果、海外で運営されている7サイトが確認された。7サイトの映像数は少なくとも計約2万7000件あり、日本に分類された映像は計約1340件に上った。
日本の映像のうち、屋内とみられる映像は90件、敷地内(屋内以外)は400件超あった。読売新聞は屋内の映像について、海外のサイトに公開されていることを設置者に知らせるため、映像内の情報からカメラの設置場所を調べた。その結果、関西地方の保育園、東海地方の食品加工工場、関東地方のパン工場、九州地方の設備会社など約20か所を特定でき、うち11か所の設置者に取材できた。
いずれの設置者も読売新聞から指摘を受け、漏えいを把握。これらのカメラでは▽パスワード認証が未設定▽映像の公開範囲を誤って設定――といった不備が確認され、設置者は設定を見直すなどの対応を取った。
屋内の映像には、設置場所は特定できなかったが、スーパーや高齢者施設、飲食店、コインランドリーとみられるものもあった。敷地内の映像は民家の玄関先、集合住宅のエントランス、神社の境内、駐車場、車庫など。屋外は700件超あり、観光地などのライブ映像も含まれる。このほか、映像が不鮮明なものが約80件あった。
共同で調査したトレンドマイクロの成田直翔シニアスペシャリストによると、7サイトは個人が興味本位で運営しているとみられる。カメラの映像を外部から見るには、各カメラに割り当てられた固有のIPアドレス(インターネット上の住所)が必要となるが、何者かが特別なプログラムを使い、脆弱(ぜいじゃく)なカメラのIPアドレスを収集・公開している可能性があるという。
成田氏は「脆弱なカメラがこれほど多いのは驚きで、セキュリティーへの関心の薄さの表れでもある。画像検索機能の向上などにより、映像からカメラの設置場所を特定することは容易になっており、犯罪に悪用される恐れもある。設置者はセキュリティー対策を徹底してほしい」と話す。
◇
読売新聞はカメラの設置場所を調べる際、情報セキュリティーに詳しい弁護士に相談し、サイトやカメラの管理画面で映像を見ることは不正アクセス禁止法などの法令違反に当たらないことを確認した上で行った。