生まれたばかりの赤ちゃんが捨てられる事件が後を絶ちません。
弁護士ドットコムニュースが先日、産んだ子ども3人を遺棄したとして刑務所に入った女性への取材記事を掲載したところ、大きな反響がありました。
そこで今回、望まない妊娠や「赤ちゃんポスト」に関する情報提供を募ったところ、パートナーによる裏切りや忘れられない人工妊娠中絶など、胸をえぐられるような壮絶な体験談が多数寄せられました。
読者の声から、この問題が個人ではなく、社会全体で向き合うべき課題であることが改めて浮き彫りになります。
「予期せぬ妊娠」は、決して本人の不注意として片付けられる問題ではありません。
千葉県の50代女性は「中学2年の時、地元の先輩に呼び出され、地元の暴力団にさらわれて性被害にあいました。その時に妊娠しました」と明かしました。
13歳の時の出来事であり、中絶以外の選択肢はなかったといいます。「後悔もしていません。むしろ産まれていたら殺したいと思ったと思います」。誰にも明かせなかったであろう心情をそう吐露します。
また、10代での中絶で人生を狂わされたという福岡市の30代女性からもこんな体験談が。
17歳の時、当時付き合っていた彼氏と寝ていたところ、「相手が途中で起きて、私が寝ているところに避妊具なしでそのまま挿入された」といいます。その1カ月後、妊娠が判明。周囲に相談し、中絶手術を受けることになりましたが、「全身麻酔から目が覚めた直後、”お腹の中の命が消えた”という感覚に襲われて、ヒステリックに泣き叫びました」。
その経験から、女性はその後交際した別のパートナーに「避妊具なしでの性行為は絶対にだめ」と念を押して伝えていました。しかし、その後の性行為中に避妊具を無断で外され、再び妊娠、中絶に至ったといいます。
「過去の経験から避妊の大切さを伝えていたし、拒否もしていたのに、相手に裏切られました。だからこそ、自分の意思を踏みにじられたことへの怒りと、守れなかったことへの深い後悔が残っています」
パートナーからの裏切りは年代を問わず寄せられています。
「今の夫がコンドームを途中で取ってしまい、21歳で妊娠させられた」という東京都の60代女性は、「まだ早いと言われ、産婦人科に連れて行かれて無理やり中絶をさせられました」。
集まったメッセージの中には、刑事事件になってもおかしくない話も含まれていました。
大阪府の50代女性は30年ほど前、ストーカーを受けていた男性から無理矢理ホテルに連れて行かれてレイプされたといいます。その後、妊娠が発覚。「この男の子どもなんか産みたくない」と思ったものの、親の無理解などもあって出産せざるを得ませんでした。
当時のショックは大きく、今も重いうつ病に苦しんでいるといい、「こんな人生になるなら、産むべきではなかったし、赤ちゃんポストがあれば預けたかった。自死したほうが良かった。本当に自分が惨めで仕方がないです」と、その苦しさを綴りました。
どうすれば悲劇を防げるのか。読者からは前向きな提案も寄せられています。
自身が養子として育ったという女性は、「今、生きていて幸せなのは、どんな事があっても誰かが育ててくれたから」と振り返り、こう続けます。
「もしかすると、赤ちゃんポストに預けられたお子さんも後に幸せな人生を送っていられるかもしれない。遺棄されたり、虐待されたりする命があるのが現状なので、それなら赤ちゃんポストに預けてくれたほうがきっと良いんだと思います。辛かったことはたくさんあった人生ですが、命があって良かった。誰かが生かそうとしてくれたのです」
また、特別養子縁組を通して3人の子どもを大人になるまで育て上げたという50代の女性は「この子たちを迎えることができて本当に良かった」として、誰にも相談できずに困っている当事者たちに次のようなエールを送ります。
「予期しない妊娠をして困っている方には、まず預けて特別養子縁組をしても大丈夫と知ってもらいたい。必ず早めに相談したり預けたりする決心をしてほしいです。それは親として立派な決断だと思います」
望まぬ妊娠や中絶をめぐって、責任を追及される機会が少ない男性の読者からも意見が届きました。
関東在住の40代男性は、「よく『性欲だから仕方がない』と言う人がいますが、そもそも性欲とは何でしょうか。生理的なものだとしても、それを理由に責任を放棄していいとは思いません。女性には妊娠というリスクがあり、男性もまたその責任を共に負う立場にあるはずです」と指摘します。
そのうえで、次のように提言します。
「子どもを授かりたくてもなかなか叶わず、悩み苦しんでいる夫婦もいます。命の重さを考えれば、『望まぬ妊娠』は個人の問題にとどまらず、社会全体で向き合うべき課題です。
『赤ちゃんポスト』が東京にも設置されましたが、法的な整備が追いつかず、民間の努力に頼っている現状があります。避妊教育、性教育、そして支援体制──どれも欠かせません。
性の問題を”誰かの失敗”として片づけるのではなく、社会全体で『どうすれば命を守れるか』を考える時期に来ていると感じます」
三重県の50代男性も「ニュースで、母親や両親が、赤ちゃんを遺棄したり、殺したりしたニュースを見るたびに、同じ子どもを持つ親として、本当に、辛く悲しい気持ちになります。国は、子どもを増やしたいのであれば、赤ちゃんポストのような施設を日本中、各都道府県に最低でも1カ所ずつ、都市部は複数カ所設置して、赤ちゃんを救う、子どもを救う政策をもっと積極的に行うべきだと思います。産まれて来る子どもに罪はありません」。
「望まぬ妊娠」は、女性個人の問題でも、カップル間だけの問題でもありません。性教育のあり方、男性側の責任、貧困や孤立といった社会的背景、そして生まれた命をどう守るのか。読者の声からは、社会全体で向き合うべき重い課題が浮き彫りになっています。