【クアラルンプール=樋口貴仁】小泉防衛相が就任直後から存在感を発揮している。
SNSでは日本周辺での他国軍の動向を積極的に発信し、米国のヘグセス国防長官とは就任後約2週間で2度の個別会談を行った。日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、防衛相として国民から評価される実績をどこまで残せるか、今後の試金石となりそうだ。
「ASEAN(東南アジア諸国連合)やインド太平洋地域の国防相に、高市内閣の防衛政策の強化に向けた方針をしっかりと説明できた」
小泉氏は、防衛相として初の外遊先となったマレーシアでの一連の日程を終えた2日、記者団にこう成果を強調した。
1日に出席した拡大ASEAN国防相会議では、小泉氏の提案により、ヘグセス氏、韓国の安圭伯(アンギュベク)国防相と3氏の記念撮影を行い、日米韓の結束をアピールする場面もあった。マレーシア訪問中に計8か国の防衛相らと個別に会談し、インド太平洋地域の平和と安定に向けた協力も確認するなどした。
10月の自民党総裁選で、小泉氏は党員・党友票が伸び悩み、決選投票の末に高市首相(党総裁)に敗れた。次期首相レースでも最有力候補の一人と目されるものの、近年は官房長官や総務相、外相、防衛相などの経験者が首相に就任するケースが多い。「経験不足」との批判を受けた小泉氏にとって防衛相は、実績を残すための重要な機会となる。
防衛力の強化に向け、課題は山積している。国家安保戦略など3文書の前倒し改定では、防衛費を含む安保関連費を国内総生産(GDP)比2%から、どこまで引き上げるかが焦点となる。新たな財源の確保は容易ではなく、国民の理解を得る努力も求められる。
自民と日本維新の会による連立政権の合意書では、防衛装備品の輸出を「救難」「輸送」など5類型に限定した運用指針を来年の通常国会で撤廃することが盛り込まれた。ただ、装備品の輸出拡大に対しては、野党が今国会で厳しく追及する構えを見せており、答弁能力が試される場面が増えるのは間違いない。
防衛相は災害や北朝鮮の弾道ミサイル発射といった緊急事態への対応が求められるため、党員・党友票の拡大に向けて地方を飛び回ることは困難だ。自民ベテランは「防衛相として実績を残せるかが小泉氏の今後を左右する」と指摘している。