〈田久保市長独白60分〉「早く辞めろ」と面と向かって言われることも…「それでも議論したいし、市政について考える良い機会」鋼のメンタルは「営業職をしていたので、クレームの中にヒントがある」

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10月12日、静岡県伊東市で市議会議員選挙が告示された。学歴詐称疑惑から不信任決議を受けた田久保眞紀市長が、市議会を解散したことがきっかけで始まった伊東市議選。田久保市長が不信任案を回避するには田久保派を7人以上当選させる必要がある。現実的には厳しい状況だが、田久保市長に、自身を取り巻く環境や今後について尋ねてみた。
【画像】ロックに没頭した…東洋大生時代、黒髪ロングの田久保市長
――市議選をはじめ伊東市には、さまざまな注目が集まっています。先日は選挙権を持たない地元の高校生が伊東市の未来について考えた提言書を田久保市長に渡していました。それについてどう思われましたか?
田久保眞紀市長(以下、同) まず政治に関心を持ってくれるというのは非常に嬉しいことだと思います。せっかく興味を持ってくれたのであれば、本当にリアルな形の議会を開いて私や職員にヒアリングしたり、予算の枠で何ができるのか、議会に来る子どもたちを選挙で選んでもらったりとか、それぐらいリアルにできたらいいなと思います。
あれをやりたい、これも必要ですというのはご要望としては本当によくわかるのですが、それを実現するためには何が必要かなどを感じてもらえたらいいなって思いました。
――学歴詐称疑惑の問題で停滞・混乱している市政に対し「このままでいいのか」と提言書を渡されたということだったようですが、そのことについてはどのように思いますか?
たしかに通常とは(市政が)違うペースで進んでいるのはそうかもしれません。しかし、よく停滞という言葉が出てきますが、具体的にどの部分が停滞しているかということは意外となくて、「全体的に停滞」ということになっています。
行政の職員もやらなきゃいけない課題が本当に山のようにあるのですが、解決するためにいろいろ考えて動いて私の方に報告もあがってきます。停滞とひと言で言うのは簡単ですが、そこは逆に具体的に話をした方がいいかと思います。
例えば、商店街がシャッター通りになってしまっているなどの経済の停滞なのか、人事の面で停滞していると思ったのか、など個別に話し、そのことによってどういう影響が出て、どういう解決方法があるかまでの「サイクル」で話せるといいなとは思います。
大型商業施設がほしいなど提言はたくさんしていただきました。せっかく意見をいただいたので、どういう仕組みで行政が動いたり、職員がどういう仕事をしているのかというところまで掘り下げられるといいなと思いました。
――市議選の告示が終わり、投開票まであとわずかですが、現在どのような心境でしょうか?
各候補者のみなさん意志をもって手をあげていただいてますから、全力でやれるところまでやっていただく。市民のみなさんがいつもより関心を持っていただいているとしたらそれはチャンスですから、真剣に自分たちの代表に誰を選ぼうかと考えていただいて1人でも多くの人に投票に行っていただきたいです。
私もやっていたのでわかりますが、市議会で誰を選ぶべきなのかと興味を持っていただくのはなかなか難しいです。市議会議員さんは、本当は自分たちの生活に一番近い身近な存在なのですが、どんな仕事をしているのかというのがなかなか知られることがなかったり関心が低かったりという部分があります。
だから今までよりも深く考えていただく機会になるならそれは意味のあることだと思っています。
――田久保派の方が7名当選して、不信任案を回避するというのは現実的だと思いますか?
現実的か現実的でないかというよりも、やっぱり良い候補の方に出ていただきたいですよね。私に対する賛否ではなく、今後の伊東の町を良くしていくために「こういう政策を出していくんだ」というような良い候補者の方にたくさん出ていただくことが大事だと思います。
――市長を支持している候補者で把握しているのは片桐氏だけですか?
もちろん(他の候補者とも)話をしないわけではないですから。ただ、支持している支持していない、じゃないんだと思う。時代が変わったというか、支持する支持しないで決めるというよりはそこは是々非々じゃないですか。
ひとつ言うならば私は改革を進める立場ですから。田久保派、反田久保派ではなく、改革派としてやっていきたいと思う人たちと、時計の針をもとに戻して変わりたくない人たち、報道のかたにもできればそういう区分けをしていただけると。
――改革していきたいという部分で共鳴する候補者はいるということですか?
立場や考え方は違えど、目指すところは一緒っていう方ももちろんいらっしゃると思いますね。だから私派、私じゃない派かっていう切り取りだけになってしまうと、ちょっと本題から逸れてしまっているんじゃないかって思います。
――市長になられて4か月、生活や状況で変わったことはありますか?
町を歩いていたり、ご飯を食べていたりすると声をかけてくれる方が本当に多くて。「頑張って」と言ってくれる人たちは確実に増えているんです。
――逆に「市長を辞めてほしい」と面と向かって言ってくる人もいたりするのですか?
それこそ今日ありましたね。今日は街宣しているときでしたが「早く辞めろ」と言われました。普段も、「早くやめろ」伊東市の評判を落としてる。どう責任とるんだ」とかそういうご意見はありますね。
私はできるだけお話ができるようでしたらしたいなとは思うんですけどね。もちろん全員お話ができる方というわけではありませんが、できる方なら私はお話をしたいですね。
――言いに来られる方は学歴詐称をしたから辞めてくれということを言うのでしょうか?
どういう形でおっしゃられているのかはその方々のそれぞれの考え方があると思います。個人的な人格否定や政局的なことで言ってらっしゃるんじゃなくて、町を良くしていくためにそう言ってらっしゃるのであれば、私はお話をしたいなって思うんです。
――直接辞めろと言われるのはメンタル的には平気なのでしょうか?
営業職をずっとしていたこともあるのですが、クレームを言われるときは、クレームの中に意外と逆転のヒントがあったり、チャンスだったりするときもあるので。
話す余地のない、例えば本当に「嫌い」とかそういうことであればそこは深堀りするべきはないというか。逆にお話をしようとすれば不快感を与えてしまうことになるので、スッと引くべきだと思うんですけど。ちゃんと話ができるのであれば話すと得るものがあります。
――ネットの誹謗中傷と直接言われるのはどちらがきついと思われますか?
ネットの場合は対面じゃないですからね。ネットで議論をできるのであればやろうと思いますが、ネットで議論を繰り広げるというのはないですかね。
――では伊東市内を歩いているときに辞めろと言われたら話し合うということですか?
「どうしてそう思うのですか?」ということはお聞きするし、情報が間違っているなら「いいえ、違います。それはないです」とお伝えします。そこはなかなか折り合いがつかないところではありますけど、「私はそういう風には考えてないです」としっかりお伝えしています。
――市長を辞めたいと思うことはないのでしょうか?
まったくないと言えば嘘になりますが、やるべきことがあるので。周りの方が期待して選んでいただいた結果としてここにいるわけですから、いる以上はやっぱり精一杯責務を果たすために努力したい。それは自分にとっての命題だと思っています。
――市長の言う改革は、具体的には何をされることなのでしょうか?
もっと意見を言いやすい空気感を作るというのが一番大事かもしれませんね。政治って、一部の偉い人たちが密室で会食をしながら決めてしまうんだっていう、なんかそんな風なあきらめがあると思うんです。でもそうではなくて、自分たちが市政にコミットして動かしていくことができるんだっていうような、そういう空気感ができると良いです。
解決しなきゃいけない課題の順番というのは、純粋に町が良くなっていくためや、市民サービスが向上するためという目線で決められなければいけないわけです。そうではない優先順位で何か建物が建ったり、何かが進んでいく、お金が使われていくという仕組みは変えていかなきゃいけないと思います。

「田久保市政の継続」が争点となっている伊東市議選。市民はどのような審判を下すのか。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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