移動と宿泊をひとつにした、自由な旅の手段として注目されている「車中泊」。
コロナ禍をきっかけにその人気は急拡大しましたが、近年ではマナー違反や利用トラブルが各地で問題視されるようになっているようです。
【画像】「えっ!」 24時間無料でも「22時以降消灯!」の道の駅はこれです(18枚)
移動手段と宿泊手段を兼ね備えたスタイルは利便性が高く、キャンピングカーを購入する人や、自家用車を車中泊仕様に仕立てるユーザーも珍しくありません。
しかし、ブームの拡大とともに、近年はマナー違反やトラブルに関する声も多く聞かれるようになってきているといいます。
SNS上では、「家の近くに海があるけど、車中泊をしてゴミを放置する人が増えたから海辺でのキャンプが禁止になった」、「近所の道の駅で車中泊をしている人が騒いでいて迷惑」、「道の駅の駐車場でバーベキューをしている人いたけど、さすがに非常識すぎない?」といった声があがっており、苦言を呈するコメントも少なくありません。
一部の利用者の行動が、車中泊全体の印象を損なう事態にもつながりかねませんが、いったいなぜ、このような問題が起きているのでしょうか。
車中泊のマナー問題が大きくなった背景の一つとして指摘されるのが、「車中泊」と「キャンプ」を混同するケースの増加です。 そもそも車中泊とは、移動中にクルマで一時的に休息・仮眠をとるための行為を指します。
それに対しキャンプは、炊事や屋外での飲食、レクリエーションなどを含むレジャーです。
たとえば、椅子やテーブルを広げて調理を始めるといった行為は、キャンプに該当するとされています。
問題なのは、こうした行為が本来キャンプ行為が想定されていない場所、つまり道の駅やサービスエリア/パーキングエリアといった公共のスペースでおこなわれている点のようです。
例えば道の駅は国土交通省が管轄する一般道路上の休憩施設で、全国に1221か所(2024年4月時点)にあります。
こうした道の駅での車中泊に関して、国土交通省は「道の駅は休憩施設であるため、駐車場など公共空間で宿泊目的の利用はご遠慮いただいています。もちろん道の駅は、ドライバーなど皆さんが交通事故防止のため24時間無料で利用できる休憩施設であるので、施設で仮眠していただくことはかまいません」とアナウンスしています。
また過去の取材でNEXCOの各担当者は「仮眠と車中泊の違いを明確に定義していませんが、『宿泊を目的とした駐車』は『ご遠慮』いただいております」とコメントしていました。
全国各地にある道の駅、いくつかの運営者に話を聞くと、最も多かったのが「ゴミの放置」。
旅の道中で出たゴミを道の駅に捨てていく利用者が多く、中には駐車スペースにそのまま放置する悪質なケースもあるようです。
多くの道の駅は地元自治体が運営しており、ゴミの処理費用は住民の税金が使われています。
ゴミ処理に人手をとられると、物販や情報発信といった本来の業務に影響が出るため、施設運営に支障をきたすこともあります。
また他の利用者からの苦情が多いのが「トイレ問題」です。
車中泊をする人がトイレで洗顔や洗髪をするため、手洗い場が汚れてしまうといったトラブルも発生しています。
さらに、長時間にわたって駐車スペースを占有するケースも目立ちます。
連泊したり、屋根のある身障者用スペースに停め続けたりする事例も珍しくないようです。
こうした迷惑行為によって、本来道の駅を利用したい人が駐車できないといった苦情が寄せられています。
実際に群馬県内にある道の駅の従業員は、以下のように話していました。
「基本的に、道の駅は仮眠のための場所です。
長時間や長期の滞在を想定した場所ではありません。しかし、それにもかかわらず車中泊をする人たちは一定数います。
そういった人達は、洗面台で歯磨きどころか髪まで洗って床をびしょびしょにしたり、持ち込んだゴミを捨てていく人もいるので、困っています。
他にも、2ヶ月近く同じクルマが出入りを繰り返して長期滞在するケースもあり、実質的な拠点化が進んでしまっているような事例もあります」
一部の道の駅では、車中泊を控えるようにアナウンスしているところもあります。
しかし、利用者から「休憩しているだけだ」と反論されると、施設側は強く注意することが難しく、結果的に容認せざるを得ないのが現状です。
一方で、車中泊を容認している道の駅も存在します。
たとえば、北海道にある道の駅は、利用者のナンバーを申告することで、駐車場での車中泊を認めています。これは、施設内でトラブルが発生した際に、対処するための対策だそうです。
道の駅は、国からの支援を受けて作られた公共施設です。
そのため、全面閉鎖といった強硬な手段をとることが難しいという事情があります。運営側の立場としては、利用者一人ひとりのモラルとマナーに委ねられているのが実情です。
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車中泊は、自由で快適な旅のスタイルですが、その自由には責任も伴います。
不特定多数の人が利用する公共施設では、その場所の本来の目的を理解し、他の利用者や管理者への配慮が不可欠です。
公共駐車場でのマナー違反をなくすため、日本RV協会(JRVA)が「公共駐車場におけるマナー10か条」を提示しているように、車中泊を楽しむ前にルールを確認し、自身の行動が他人に迷惑をかけていないか考える姿勢が求められています。
また、トラブルの心配なく車中泊を楽しみたい場合は「RVパーク」など、車中泊専用に整備された施設を利用することもできます。
なおRVパークとローソンは、店舗駐車場を利用した車中泊施設の実証実験を2025年7月から千葉県で開始しています。