銀行のATMコーナーには現金用の封筒が置かれています。無料で入手できるため、活用している人は多いと思います。ただ、最近、銀行の封筒が大量に持ち去られ、フリマアプリで転売されるケースが相次いでおり、SNS上では「窃盗罪」「郵便局や銀行の封筒が転売されているとは驚き」「欲しい時にないからマジ困る」「無料配布物を転売する感覚は、まったく理解できない」などの声が上がっています。銀行の現金用の封筒を大量に持ち去り、フリマアプリで転売した場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。
Q.銀行のATMコーナーに設置されている現金持ち帰り用の封筒が大量に持ち去られるケースが相次いでいます。このような行為自体は、法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。
佐藤さん「窃盗罪に問われるなど、法的責任を追及される可能性は否定できません。窃盗罪は、他人の占有する財物を、占有者の意思に反して自分の物にする犯罪です(刑法235条)。ATMコーナーに設置されている現金持ち帰り用の封筒は、各銀行がATMを利用する客の利便性のために無料で提供しているものであり、必要性を超えた大量の持ち去り行為は、銀行の意思に反すると考えられます。
また、窃盗罪が成立するには、盗んだ物を経済的用法に従い利用する意思も必要になります。例えば、銀行に対する嫌がらせやいたずら目的で大量に持ち去ったというようなケースでは、窃盗罪に問うことはできません。
今回、大量に持ち去られた理由は明らかではありませんが、フリマアプリで転売されているケースが相次いでいることから、売って利益を得る目的があった可能性が高く、法的には窃盗罪が成立する可能性があります。窃盗罪の法定刑は『10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金』です。転売目的の窃盗は悪質性が高いと評価され、厳しく処罰される可能性があります」
Q.フリマアプリで銀行の封筒が大量に転売されている件について、フリマアプリの運営会社が法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。また、フリマアプリで銀行の封筒を買った人については、いかがでしょうか。
佐藤さん「現金持ち帰り用封筒が大量に出品されていたとしても、フリマアプリの運営会社は、直ちにそれが盗品であると判断できるわけではないと考えられます。大量の持ち去り被害を受けている銀行や警察から連絡を受け、フリマアプリの運営会社が、犯罪行為につながる可能性の高い商品であることが分かれば、出品禁止にする可能性が高く、そうであるならば、フリマアプリの運営会社が法的責任を問われることはないでしょう。
フリマアプリで出品されている銀行の封筒を買った人についても、通常は、盗品であるとは知らずに購入しているものと考えられ、そうであるならば、盗品等譲受け罪の故意がなく、罪に問われることはないでしょう」
Q.物の大量持ち去りによる事例、判例について、教えてください。
佐藤さん「古紙回収業者が、ゴミ捨て場から無断で古紙を回収し、自治体から持ち去りをしないよう命じられたにもかかわらず、持ち去りを繰り返した事案で、条例違反の罪に問われ、有罪判決を受けた事例が複数存在します」