絶滅危惧種の渡り鳥「ブッポウソウ」、巣箱での営巣に成功もヒナは餓死…原因はカメラマンの集結か

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

絶滅危惧種の渡り鳥「ブッポウソウ」が今夏、北陸で初めて巣箱による営巣を行ったが、生まれたヒナが死んでいたことが7日、わかった。
巣箱を設置した北陸鳥類調査研究所(石川県小松市)によると、営巣が確認された7月以降、現地にカメラマンが集まり、親鳥がヒナの子育てをあきらめた可能性が高いという。(戸辺悠大)
ブッポウソウは全長30センチほどの渡り鳥で、光沢のある青や緑の体に赤いくちばしが特徴。アジア東部からオーストラリアにかけて分布し、国内には夏鳥として飛来する。営巣地として木のうろなどを好むが、近年は営巣に適した木や餌となる昆虫が減り、環境省のレッドリストでは「絶滅危惧IB類」に指定されている。
同研究所は2019年から、ブッポウソウの営巣地を増やそうと白山麓を中心に計35箱の巣箱を設置。このうち一つの巣箱で7月13日に営巣が確認され、中には1羽のヒナの姿があった。
だが、営巣の成功が広まると、子育てするブッポウソウを撮影しようとカメラマンが巣箱の近くなどに集まるようになり、親鳥がおびえて近寄れなくなっていたという。
その後も餌を求めるヒナの鳴き声が聞こえていたが、今月5日の巡回で、ヒナが餓死していることが判明した。親鳥はすでに渡りを済ませたとみられる。巣箱の設置から7年目にしてようやく営巣にこぎつけただけに、今森達也代表は「あと一歩だったのに、また出直しだ」と肩を落とした。

野鳥撮影時のマナー違反は全国的に問題となっている。日本野鳥の会(東京)によると、デジタルカメラの普及で野鳥を狙うカメラマンの人口は一気に増加。近年はSNSの普及もあり、撮影地に人が殺到するケースも出てきた。
同会は22年、野鳥撮影の初心者向けにマナーのガイドラインを策定。子育て中は特に注意が必要だとして、▽営巣中、育雛(いくすう)中の野鳥や巣へは近づかない▽希少な渡り鳥の画像や情報の公開は撮影地から鳥がいなくなってから――などの項目を盛り込んだ。
同会は毎月、マナー啓発の講座も開いており、参加者からは「知らなかった」「言ってもらえると助かる」などの声が寄せられた。ただ、「故意にマナー違反をする人もいる」(担当者)のが現状だ。
ヒナが死んだ巣箱に翌年もブッポウソウが飛来する可能性は低く、同研究所は来月にも巣箱を撤去する。今森代表は「巣箱があっても決して鳥を待ち構えるようなことはしないでほしい。カメラマンのモラルが問われている」と語った。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。