【牧野 容子】絶滅危惧種まで? 日本の「アニマルカフェ」「ふれあい動物施設」調査で判明した危険な現実

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テレビの情報番組やSNSなどで、紹介されることが多い「ふれあい動物園」や「アニマルカフェ」。フクロウ、ハリネズミ、サル、トカゲなど、多様な野生動物たちと直接ふれあえることも多く、人気を集めている。こういった野生動物カフェ(以下、犬や猫、ウサギといった家畜化されていない動物とふれあえる施設を記事内では「野生動物カフェ」と明記する)の施設数は依然として多い。
しかし、さまざまな種類の動物たちが同じ空間に集められることや、制限なく人と接触することで、動物福祉(アニマルウェルフェア)が十分に満たされていない実態もある。犬や猫は長い歴史をかけて人との暮らしに適応してきたが、もともと野生で暮らす動物たちは、人間とのふれあいが大きなストレスとなり、動物たちに大きな負担がかかることをFRaUwebでは過去に何度か記事にしてきた。
実際に、野生動物に対するふれあい施設に規制をかけている国は多い。韓国も一時ブームになりそうだったが、2023年に野生動物カフェが禁止になった。日本では問題意識を訴える人もいるが、野生動物との適切な付き合い方について、まだ十分に議論されているとはいえないのが現状だ。
現在、2026年の動物愛護法の改正に向けて、国会議員が議論をしている。その中では、動物の“展示の規制を強化する”ということも検討事項のひとつに挙がっている。
そんな「野生動物カフェ」だが、課題はあっても実態把握すらされていない。野生動物カフェは一体どれだけあるのか、どんな動物を展示して、展示や衛生管理はどのように行われているのか、不透明な部分が多い。
10月3日、WWF(世界自然保護基金)ジャパンから、野生動物カフェの課題と対策に関する最新レポート『野生動物との触れ合いの現在地:野生動物を扱うアニマルカフェのリスク緊急評価』が発表する。野生動物を扱うアニマルカフェの展示の現状がまとめられている。丁寧に調査され、調査の中には衝撃的なデータもあり、野生動物カフェのあり方について考えるきっかけになるレポートでもある。発表されたデータをいち早くお届けするために、WWFジャパンの浅川陽子さんにお話をうかがった。
「今回、野生動物カフェの現状を調査しました。アニマルカフェにおける野生動物(※1)の利用については、動物福祉の観点からの問題だけでなく、『生物多様性への影響』や『人の安全の確保』『病原体の伝搬』の懸念を示す意見が以前より専門家から指摘されていました。
そういったことを踏まえ、飼育されている個体の把握(数や種類)と、特に“衛生”と“安全”をポイントにし、それらが配慮されているかどうか、野生動物の展示状況の調査(※2)を行いました。また、カフェで接触できる動物の体表に存在する細菌の保有状況についても調べました」
野生動物カフェの実地調査は、2025年6月、7月に実施された。東京近郊の野生動物カフェ25施設において展示・販売されている動物の種類や頭数、由来(野生捕獲、繁殖の別)等の情報に加えて、事業者の法令遵守や衛生対策の実施状況を、目視とヒアリングで確認、記録した。さらに、北海道大学大学院獣医学研究院と協力し、展示されている動物との接触によって生じる病原体感染リスクについての調査も行った。
「まず、今回調査した野生動物カフェ25施設では、合計205分類群(4目、2亜目、4科、9属、186種)、1,702頭の動物が展示されていました。そのうち、101分類群(1亜目、3属、97種)、781頭は販売もされていました。
施設の中には、希少種や持続可能性が担保されていない動物を展示している施設も確認されました。たとえば、絶滅危機種(=国際自然保護連合(IUCN)が策定するIUCNレッドリストでCR、EN、VUに選定された動物)に該当する動物が、展示個体のうちの31種(15%)、459頭(27%)、販売個体のうち12種(12%)、308頭(39%)確認されました。
また、輸出入を規制して野生生物を絶滅から守るワシントン条約で保護されている動物が、展示個体のうち131分類群(1目、3属、127種)(64%)、561頭(33%)、販売個体のうち70分類群(70種)(69%)、160頭(20%)いたことも明らかになりました。
こういった希少な野生動物の展示や接触機会の提供は、利用者の未知の動物や自然への興味・関心を高める効果も期待されますが、野生個体群に負の影響をもたらす可能性もあります。実施調査では入手の合法性が疑われる絶滅危機種のコバルトツリーモニターや、過剰捕獲が懸念されているアカメカブトトカゲの展示が確認されました。こうした種を利用者は“かわいいもの”、“飼いならされたもの”と思うことでペットとしての需要が増え、絶滅の危機が加速する懸念があります」
施設によっては、飼育体験サービスを提供している施設もあり、「動物との接触機会の提供から販売へと誘導する、ビジネスモデルが存在している可能性もある」と浅川さんは話す。
※1:今回の記事内の野生動物とは、家畜化された動物(ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、マウス、ニワトリなど長年にわたって人に飼育され、交配と品種改良がおこなわれてきた動物)以外の哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類のことを指している。また、野生捕獲か、飼育下繁殖かの別は問わない。
※2:今回の調査は統計調査と実地調査の2種類。統計調査は東京都と大阪市を対象に行われた。野生動物カフェの動向を把握するために2020年、2023年、2025年時点で東京都と大阪市の第一種動物取扱事業者の展示業登録された営業所のうち、野生動物カフェの営業所数を計数、比較。さらに、2025年時点で、営業所の登録業種(展示、販売、貸出、保管、訓練)も併せて確認した。
「今回の調査では、野生動物との接触によって生じる、人に対するリスクに関しても調査しました。そのひとつが、『傷害のリスク』です。この傷害とは、接触によって人間の安全が脅かされる可能性、ということです。
どんな小さい動物でも、絶対に噛まない、引っかないという保証はなく、傷害の危険性がゼロ、とは言い切れません。私たちは、展示しているすべての個体に関して、まず施設側が“正しい接触方法を利用者に説明すべきである”、“正しい接触方法をしていたとしても利用者が怪我をする可能性はゼロではない”という事前説明も必要だと考えています。
実際に施設を訪れ、接触方法の説明と怪我のリスクの説明の有無を確認したところ、どちらも実施している施設は全体の約半分、どちらも実施していないという施設は44%でした。つまり、事前の説明がなく、“利用者の接触への理解が不十分な状態”で動物と接触させている施設が半分近くある、ということになります」
さらに、他国では危険が伴う可能性が高いと認識されている動物たちとの無制限なふれあいが可能な状態にあることも確認された。
「たとえば、イギリスの『動物園ライセンス法』の実施基準である近代動物園の業務に関する基準では、動物の特性(どう猛さなど)から動物種を『危険動物1~3』のカテゴリーに分類しています。『危険動物1・2』のカテゴリーに該当する動物(以下、ハイリスク動物と呼ぶ)については、利用者と接触させる場合に、“訓練され、十分な知識を有したスタッフが立ち会う”ことが求められています。
コツメカワウソやナマケモノ、一部のフクロウやオオトカゲ、ビントロング、ミーアキャットなどが危険動物1・2に当てはまります。どれも日本の野生動物カフェで多く展示されていますが、今回の調査では、こうした動物が無制限に(利用者が好きなタイミングで好きなように触れる状態)接触できる状態にあったことがわかりました」
日本の野生動物カフェでは、“ふれあい”と言っても、撫でるだけでなく、餌を与えたり抱っこしたり、手や肩の上に乗せる、など、多岐にわたるふれあいが実施されている。しかも、同じ動物を取り扱っていても施設によってその接触方法が異なり、一部の店では、他国では接触に高い危険性が伴うとされているコツメカワウソやナマケモノなどが、人気動物として無制限な接触状態にあるのが現状だ。
「見た目がかわいらしいコツメカワウソや、おっとりした感じにみえるナマケモノはカテゴリー1に当てはまる動物で、その動物に対して無制限な接触をしているということは、人の安全が侵害される恐れがあります。また、カテゴリー2に当てはまるフクロウは無制限の接触をさせている施設が非常に多く、傷害リスクを回避する対策は不十分だといえます」
調査によってさまざまな課題が浮き彫りになってきた野生動物カフェ。後編『O157やサルモネラ菌がいたケースも…アニマルカフェやふれあい動物施設、専門家が鳴らす警鐘』では、動物が保有する病原体に感染する「感染リスク」に関しての衝撃の調査結果について、引き続きWWFジャパンの浅川さんに話をうかがう。
【後編】O157やサルモネラ菌がいたケースも…アニマルカフェやふれあい動物施設、専門家が鳴らす警鐘

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