「この2択で本当に大丈夫?」自民党総裁選 高市早苗と小泉進次郎の一騎打ちという「茶番劇」

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「あなたも行ってしまうの……?」
退陣表明前日の9月6日、夜の帳が下りた首相公邸で石破茂首相(68)は小泉進次郎農水相(44)と相対していた。石破首相の目の下には深いクマができ、顔には強い疲労感が漂っている。
実はこの日、菅義偉副総裁(76)と3人で会談が行われていた。石破首相は終了後、冒頭のように進次郎氏を引き留め、二人きりで1時間半にわたり話し込んだ。この1年間の苦労話、やり残したことへの後悔――話題が多岐にわたるなかで、石破首相はこう言葉をかけた。
「成し遂げられなかった農政改革や防災庁新設を、前に進めてほしい」
進次郎氏は〈反石破派、中でも高市だけは総理にさせない〉という首相の心中に気づくや、静かにうなずいた――。
9月22日、次の自民党総裁を決める戦いの火ぶたが切られる。9月17日午後5時時点で出馬を表明しているのは林芳正官房長官(64)と茂木敏充前幹事長(69)、小林鷹之元経済安保相(50)の3人。さらに高市早苗前経済安保相(64)と進次郎氏も出馬の意向を示しており、この5人で次期総裁の座が争われると見られている。
今回は国会議員による投票と全国の自民党員による投票の合計で争う「フルスペック型」で行われる。1回目の投開票で過半数を獲得する候補者がいなければ、上位2人による決選投票が行われる。最新情勢を全国紙政治部デスクが解説する。
「党員票で圧倒的な支持を集めているのが高市さんです。強硬右派である彼女は、党の岩盤保守層からの支持が厚い。対抗馬となるのは進次郎さんでしょう。菅さんからの支持に加え、決選投票となれば高市さんと政治信条を異にする岸田さん(文雄・68)、苦楽をともにした石破さんからの支持も見込める。基本的には、この二人の一騎討ちになるでしょうね」
大きな影響力を持つ首相経験者からの支持を集めつつある進次郎氏だが、いまだ動向が読めないのが、麻生太郎最高顧問(84)が領袖を務める志公会の判断だ。43人の議員を抱える一大派閥で、前回は土壇場で高市氏を支持した。
「高市は総裁選を見据え、早くも7月に麻生のもとを訪れ、支持を呼び掛けている。しかし、どうやら片思いで終わりそうだ。麻生の頭にあるのは『どうやったら主流派に戻れるか』ということだけ。首相経験者からの支持が厚い進次郎のほうが、今のところ総裁の可能性が高いからね。8月には国会内で進次郎が麻生のもとを訪れ、30分も談笑しとった。周囲には『進次郎はちゃんと挨拶に来る』と、満更でもない様子だったとか」(自民党ベテラン議員)
着々と党内基盤を固めつつある進次郎氏。仮に小泉総裁が誕生したとして、政治家としての能力には疑問しかない。たとえば喫緊の課題とされる物価高対策に打つ手はあるのか。
「″コメ担当大臣″を自称し、テレビに出まくってコメ価格引き下げをアピールした進次郎さん。しかし、9月第1週の5kgあたりの平均価格は6月以来の4000円台となるなど効果ナシ。むしろ後の解散総選挙の際に、大票田の農業票が反旗を翻すかもしれないというアキレス腱となってしまった。もともと政策立案・実行能力には疑問符が付く人で、前回の総裁選でも論戦が始まると支持を失っていった。トンチンカンな″セクシー発言″がいつ飛び出すかと思うと、適任者とは思えない」(自民党中堅議員)
一方の高市氏にも不安がつきまとう。
「なんといっても党内基盤が脆弱。政策を立てても、人気がないから全然実現しない。″女石破″と揶揄する声まであります。そのくせ、論戦で熱くなるクセがある。’23年の放送法の政治的公平の解釈を巡る討論では、野党の追及に怒り心頭になり、資料を机にたたきつけて怒鳴ったことも。感情的で、石破さんのようにのらりくらりと煙に巻く老獪さがない。連立を組む公明党から『保守中道の方でないと組めない』と暗にNGを出されているのも痛い。気脈を通じる野党大物もいないので、他党に頭を下げながらやっていくことになる。総裁になったあとの国会運営は難航するでしょう」(同前)
本命候補がどちらも党の、国のトップを担う器量があるとは思えない……。そんな体たらくに、若手議員のなかから、「候補者が弱ければ、結局、派閥の力に頼るしかない。解党的出直しが求められるなかで、派閥政治に逆戻りして大丈夫か」という不安の声が漏れている。政治ジャーナリスト・角谷浩一氏が言う。
「首相経験者――派閥の長老たちは勝ち馬に乗りたいだけ。そうすれば論功人事で自分の派閥に良いポストが回ってきますから。長老たちが方向性を決めるかつての自民党に先祖返りする……。どちらが総裁になっても、そんな″茶番劇″が繰り返されるかもしれないのです」
総裁選の開催を巡り、国政は停滞している。しかも、どちらに転んでも不安しかないという不幸な2択。この茶番劇が日本の″終わりの始まり″となる可能性は決して低くない。
『FRIDAY』2025年10月3・10日合併号より

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