「トイレに行くついでに家事」ができる人はヨコ型回路!わかると「ついでにやってよ…」の夫婦間のイライラが減少する脳の仕組み

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日常生活の中で「トイレに行くついでに片付け」がスムーズにできる人もいれば、できない人もいる。それは、家事の向き不向きではなく、脳の神経回路の使い方によるものだとする。私たちの脳にはとっさに使う「タテ型」「ヨコ型」の2種類の回路があり、基本的にはどちらかを優先して使っているという。夫婦、上司と部下、友人関係などで「会話のすれ違い」を感じるのは、優先する型の違いによって、対話の様式が異なるから…。

累計100万部超の「トリセツ」シリーズを手がける、黒川伊保子さんの著書『対話のトリセツ』(講談社+α新書)から、「ついで家事」を通してヨコ型・タテ型回路の特徴を一部抜粋・再編集して紹介する。パートナーがどちらの回路を優先しているかわかることで、夫婦の衝突も少なくなるかもしれない。
タテ型回路とヨコ型回路、これらは、同時に起動することはできない。
私たちの目は、遠くと近くを同時に感知することはできない。遠くの電光掲示板を読みながら、手元のパンフレットを読むことは誰にもできないはず。
このため、ふと不安を感じて、とっさにその根拠を確かめるとき、私たちは、遠近を選ぶ必要に迫られる。遠くの目標物に注視するか、近くを満遍なく見るか。これは脳が生来持っている、本能的な二者択一なのである。
ちなみに、目の不自由な方でも、もちろん、同じ二者択一がある。
「遠くの音、一点」に意識を集中するときはタテ型。「身の回りの空間で起こる音を満遍なく、皮膚感やにおいも使って」意識するときはヨコ型である。
そして、あまりにも自然で気づきにくいが、日常生活の中のあらゆるシーンでも、脳は常に二者択一しているのである。
たとえば、テレビCMの間にトイレに立つようなとき、ヨコ型回路を起動している人は、半径数メートル以内を満遍なくサーチしながらトイレに行く。
目の前の使用済みのビールグラスに気づいてキッチンカウンターに置く。トイレの帰りに玄関に干してある傘に気づいて、くるくる畳んで傘立てにしまう。
ついでに靴箱の上の消臭剤が残り少ないことを感知する(これだけで後日、スーパーで消臭剤と目が合う。関連記憶のきっかけを脳に仕込んだから)。
これだけしても、最後にビールグラスがテーブルに残した水滴を拭きとる台ふきんを持って戻るのを忘れない。これらを、ほぼ無意識のうちにやってのけるのである。
なんなら、子どもの靴の汚れ具合や、明日履く靴の確認もするかも。トイレのちょっとした汚れもぬぐってくるかも。
タテ型回路は、目的から意識をそらさないので、トイレに行くとなったら、トイレしか頭にないはず。
あとから家族に「ついでにビールグラスを片付けてよ。いつだって置きっぱなしなんだから」と叱られても、気づくことなんて、はなっから眼中にないので、「言ってくれればやったのに」となる。
ヨコ型回路優先の人は、「気づかないこと」にイラついているので、タテ型回路の「言ってくれればやったのに」は二重に腹が立つ。
「なんで私がいちいち言わなきゃいけないの? 私が片付け役だとでも?私は、あなたのお母さんじゃない」と思うから。こういうときは、「気づかなくてごめん」が正解ですよ。
逆に、家具を組み立てる、なんていうときには、タテ型回路のブレない目的意識が役に立つ。
ヨコ型回路は、気づいたことを半分無意識のうちにさっさと片付けていくタイプ。ある意味、無責任なマルチタスクなのである。
やかんのお湯が沸くまでに、あれもこれもと思いついたタスクを積み重ね、そのうちお湯を沸かしていることを忘れて、お湯が半分になっていた…なんてことも起こるけど、たまのそれは想定内リスクなのである。
やかんのお湯が沸騰するのを待っているようじゃ、家事は絶対終わらない。
さて、この回路を起動しながら家具を組み立てると、「あ、これとこれをはめ込むんじゃない?」なんて気づいたところから手を下しがち。設計図なんて、どこ吹く風である。
小さなことならこれでもいいけど、機構の複雑なものだと、最後に「あれ?この部品なに?あ~、最初にここに通しとかなきゃダメだったんじゃん」なんてことが起こる場合も。このため、ヨコ型回路優先の人には、家具の組み立てや、電子機器の起動は苦手という人も多いはず。
一方、タテ型回路は、空間認知を得意とし、目的遂行のために余計な気づきは起こさない。これが功を奏して、設計図通りに組み立てていくのが得意なのである。
精緻なシングルタスクを得意とする回路で、Wi-Fi設定も、テレビのインターネット切り替えも、各種フィルターのお掃除も、タテ型回路でなきゃストレスが溜まる。
私が尊敬してやまない、友人のベテラン主婦たちは、タテ型・ヨコ型をすばやく切り替えて、臨機応変なマルチタスクもこなせば、家具の組み立てもWi-Fi設定もさらりとやってのけてしまう。
家事も育児もほぼ一人でこなすワンオペママで20年超え、なんていう脳は、本当にすごすぎる。
トイレに行くとき、家具を組み立てるとき。こんなときでさえ、私たちは、タテ型回路とヨコ型回路を取捨選択している。
脳の信号を、潔くタテに使うか、ヨコに使うか。この二者択一によって、私たち人類はとっさに、遠くの動くものに瞬時に照準が合う人と、近くのわずかな気配までものごとをキャッチする人とに分かれる。
日常は、美しい使命感で目標クリアに専念する人と、多次元気づきの才能を発揮して組織の混乱を防ぐ人によって成立している。
どちらが正しいとか正しくないとか、そういう問題ではない。どちらも生き残るために不可欠のセンスで、脳は、そのとき必要と直感したほうを起動する。
そして、ここが大事なこと。
多くの「とっさ」には迷っている暇がないので、脳は、あらかじめとっさの優先側を決めているのである。野球の外野手は、バットがボールに当たる瞬間には、既にタテ型回路を起動しているはず。ボールに当たってから回路を選んでいたら、間に合わないもの。
多くの場合、その場の役割で、脳の優先側が決まる。
私は46年間、社交ダンスを楽しんでいるけれど、私たち女性ダンサーは、ヨコ型回路が強く優先されているはず。だって、組んでいる男性の横隔膜の動きひとつで、身体を切り替えるタイミングを察知しているのだもの。社交ダンスは、あらかじめ振り付けの順番が決まっていないので、男性のリードを女性がフォローすることを基本としているからね。
赤ちゃんを抱いて面倒を見る者は、赤ちゃんの体調を察知するためにヨコ型回路を使う。餌をとって帰る必要がある者たちは、狩猟に長けたタテ型回路を優先することになる。太古の昔から、男女が生殖のペアとなったときには、女性がヨコ型、男性がタテ型となることが圧倒的に多かったはず。
そのためだと思う。脳には、特に役割に縛られないときに起動する「基本の優先側」があるのだが、それについては、女性の大半(私のコミュニケーション教育の現場での実感では9割以上)がヨコ型、男性の大半がタテ型である。
誰もが、家族や友人とのフランクな付き合いでは、自然と基本の優先側を使うことが多い。
先ほど例に挙げたように、ふとトイレに立つときとか。あるいは逆に、激しいストレスにさらされたときに、基本の優先側が起動することもある。
黒川伊保子人工知能研究の立場から、脳を機能分析してきたシステムエンジニア。脳のとっさの動きを把握することで、人の気分を読み解くスペシャリスト(感性アナリスト)。コンピュータメーカーにてAI開発に携わり、男女の感性の違いや、ことばの発音が脳にもたらす効果に気づき、コミュニケーション・サイエンスの新領域を拓く。『妻のトリセツ』(講談社+α新書)をはじめとするトリセツシリーズは累計で100万部を超える。

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