「食品ロスが発生したことは誠に遺憾だ。強い問題意識を持っている」――消費者庁の堀井奈津子長官は、8月21日の記者会見で、日本マクドナルド(以下、マクドナルド)に対して、このように語気を強めた。
大手ハンバーガーチェーン・マクドナルドが販売するおもちゃ付きのセットメニュー「ハッピーセット」を巡る炎上騒動が、依然として過熱している。そもそも今回の騒動の問題は、無秩序な転売ヤーか、それとも不適切なマクドナルドの対応だったのか。
事件の発端となったのは、マクドナルドが全国の店舗で8月8日より販売を開始した「ポケットモンスター」のハッピーセットだ。同商品では、9日~11日の3日間にかけて、ピカチュウやヒトカゲといった人気のポケモンのおもちゃに加え、「ポケモンカード」も付いてくる、というものだった。
このポケモンカード、通称“ポケカ”は、トレーディングカードゲーム市場ではここ数年非常に人気が高く、一時は新商品は即完売、レアカードが高額取引されるなど、バブル的な急騰ぶりを見せていたことで知られる。
そこに目を付けたのが、いわゆる転売ヤーと呼ばれる者たちだ。
キャンペーン初日となる9日、全国各地の店舗に転売を目的にハッピーセットを大量購入する客が殺到。店舗の大部分が、3日分の配布を初日で終了する事態に追い込まれてしまったのだ。
当然、ハッピーセット本来のターゲット層である子どもたちに商品が行き渡ることもほとんどなく、SNS上では「買えない子どもが泣いてた」などの声も挙がった。
ただ、今回の騒動は転売目的の大量購入に加えて、もう一つ、批判の的が生まれた。それが冒頭で消費者庁も取り上げた「食品ロス」の問題だ。
件の9日、マクドナルド店内や店舗周辺、街角で、ハッピーセットのハンバーガーやポテトが大量に捨てられている様子が次々とSNS上に投稿されたのだ。これらはみな、転売ヤーがカードだけを抜き取った後、放置・廃棄したものと見られている。
一連の混乱を受けてマクドナルドは11日、「多大なるご迷惑をおかけしましたことを、深くおわび申し上げます」と謝罪。また「ハッピーセットの転売目的での購入や、食品の放置・廃棄を容認しない」とした上で、厳格な販売個数制限を設けるなどの対策を強化する方針を示した。
さらに、ポケモンカードと同じく人気のカードゲーム「ワンピースカードゲーム」を付けたハッピーセットの発売を8月29日から予定していたが、この実施を見送ることを決定している。
マクドナルド、消費者、転売ヤー、消費者庁――。あらゆる者たちを巻き込んで発展したこの騒動は、なぜここまで炎上してしまったのか。
フードビジネスコンサルタントの永田雅乙氏は、消費者の怒りの矛先が大きく変化したことに注目したという。
「今年5月、人気キャラクター「ちいかわ」とコラボしたハッピーセットが騒動になったことは、まだ記憶に新しいと思います。この時も今回同様、転売ヤーが殺到し、予想を大幅に超える売り上げによって、販売開始からわずか数日で完売となりました。
その後すぐ、メルカリをはじめとするフリマサイトに大量に出品されていたことが発覚すると、消費者の批判の矛先は転売ヤーたちに集中しました」
3ヵ月前の「ちいかわ」騒動をきっかけに、マクドナルド側も考えをあらためたのだろう。ポケモンカード付きのハッピーセット販売に際しては、それなりの対策を講じている。
具体的には、一人5セットまでの購入制限。それにフリマアプリのメルカリと連携し転売抑止をはかり、「食べ残す量を注文しないように」と注意を呼び掛けていた。
だが、永田氏に言わせれば「あまりにお粗末な対策」だ。
「たとえばスターバックスの場合、お正月に販売する人気の『福袋』は、会員サービスの『My Starbucks』にログインしてオンライン抽選に申し込む形にすることで、徹底した購入制限を実現しています。
マクドナルドのようなグローバルな大企業であれば、同様のシステムを構築するのは簡単なはずです。にもかかわらず、ちいかわ騒動以来、何も改善されていないことにやきもきした消費者も多いでしょう。
しかも、マクドナルドはSDGsを重要な目標と定め、〈食品ロスをなくそう〉お店でお食事を提供する際、必ず出てしまう廃棄物。可能な限り削減するためにどうするか、常に向き合い取り組んでいます。〉と掲げていますが、今回の件で食品ロスを助長してしまい、さらに怒りを買いました。
もはや世間は、従来の『転売ヤー=悪』という論調から一転、マクドナルドに対して怒っている。これが今回の炎上騒動が過熱した理由だと考えられます」
マクドナルドは、今回のハッピーセットの転売対策を不十分だと思わなかったのか。世間の批判を集めると考えなかったのか。その答えは、同社の経営方針の《大きな変化》にあった。
【後編記事】『《ハッピーセット騒動》黒幕は中国系新社長か…行き過ぎた「客集め戦略」でマクドナルドのモラル崩壊』につづく。
【つづきを読む】《ハッピーセット騒動》黒幕は中国系新社長か…行き過ぎた「客集め戦略」でマクドナルドのモラル崩壊