「手に汗じっとり…」車間詰め、執拗なクラクション、幅寄せ…危険な“あおり運転”にあったらどう対応すべき?弁護士に聞いてみると

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警察庁の調査では、過去1年間に3人に1人が「あおり運転」をされた経験があるという。「車間距離を詰める」「幅寄せ」「執拗なクラクション」など、身近な脅威に遭遇した時、身を守るためにできることとはどんなことなのか、専門家に聞いた。【写真を見る】「手に汗じっとり…」車間詰め、執拗なクラクション、幅寄せ…危険な“あおり運転”にあったらどう対応すべき?弁護士に聞いてみると■「これって私に鳴らしてる?」執拗なクラクションに焦る筆者穏やかな土曜の朝だった。筆者は自身が運転する車で、4歳の子どもをスイミングスクールへ送り届ける途中だった。スクールは商業施設の5階にあるため、施設内の立体駐車場の上り坂を上がっていた。その時、“事件”が起きた。

後ろから車がスピードを上げて近づいてきたのだ。そして大きくこちらに向かってクラクションを鳴らす。「ブーブ―!」はじめ、このクラクションは「危険を知らせるもの」と解釈した。何かあったのかなと、安全運転をより心掛けた。しかし、クラクションは止まなかった。筆者の車が先行しながら、立体駐車場を上る間、相手は車間距離を詰め、執拗にクラクションを鳴らし続けたのだった。筆者の運転に何か問題があったのだろうか。立体駐車場という“一方通行”の構造では、逃げることは難しい。不安、焦り、ハンドルを握る手には汗がじっとりだった。ようやくスペースを見つけ、駐車し、相手を先に行かせることができたが、筆者の前を相手の車が横切る際、運転手の男性は一度止まり、車中から筆者を思い切り睨みつけてきた。怖かった。そして、後ろの車のことで頭がいっぱいで、運転自体が疎かになっていたことに気づき、もし何か不測の事態が起きていたら対応できていただろうかと、血の気の引く思いがした。あおり被害にあったとき、どうすればいいのだろうか。■3人に1人があおり被害 恐怖と焦り…その時にすべき3つのこと警察庁のアンケート調査では過去1年間に3人に1人があおり被害を受けた経験があると答えている。危険な「あおり運転」に遭遇してしまった際には、どう対応すべきなのだろうか?交通事故に詳しい菅藤浩三弁護士に話を聞いた。――今回のような「執拗なクラクション」「車間距離を詰める」という行為にとても不安を感じたのですが、法的に問題がある行為だったのでしょうか?菅藤浩三弁護士「令和2年6月から、あおり運転そのものを取り締まる 『妨害運転罪』という新しい法律が成立しました。今回のケースだと『警音器の使用等』の違反、『車間距離の保持』の違反という点で『妨害運転罪』(あおり運転)に該当します。まず『警音器の使用等』は、例えば“警告”のためにクラクションを鳴らす必要があることは分かりますよね。ぶつかりそうになった時など『危ない!』という意味です。それは『適切な利用』ということになりますが、それを超えて“執拗に”鳴らす、また、立体駐車場を上っている最中に鳴らし続ける必要はないわけですよね。さらに車間距離も本来は極端に詰める必要はないですから「車間距離の保持」違反なわけです。ただ『妨害運転罪」は公道を想定している法律なので、“それ以外”の場所で起きた行為に対して適用するかというとまだはっきりと詰められていません」――なるほど。でも場所がどこであれ、被害に遭っているときは、パニックになってしまいますよね。不安と焦燥感で、事故につながりかねないと思いました。どう対応すべきだったんでしょうか?菅藤弁護士「危険なあおり運転にあった場合は必ず『停車して、ロックして、警察を呼ぶ』のが正しい対応になります。基本的にあおり運転をする人というのは、非常に興奮状態にあります。あおった相手が怒鳴ったり、ドアや窓ガラスを叩いたりするケースもこれまでありました。鍵をロックして、警察が到着するまでは車内から絶対に出てはいけません」――警察が来ても、水掛け論になりそうな気もします。というのも、今回、私の車にはドライブレコーダーが前方だけで、クラクションの音は記録されているものの、後続車の車間を詰める様子までは記録されていませんでした。菅藤弁護士「正直に言ってそれだけでは証拠としては非常に弱いと思います。クラクションの音が録音されていたとしても、今回のように前方しか撮影されていないとなると、そのクラクションが後続車の鳴らしたものかが特定できないわけです。警察に相談する際には、加害者側のナンバーの特定も必要にになりますし、何よりも加害者が、言い逃れができなくなるための道具をどれだけ集めることが出来るか、ということが重要です」――具体的には何ができるのでしょうか?菅藤弁護士「後方部分を、例えばスマートフォンで同乗者に撮影してもらうというのもひとつです。停車して警察を呼ぶ間も、相手が挑発行為を続けるようなら、その行為もすべて撮影して記録してください」いつ遭遇するかわからない危険なあおり運転。もちろん、知らないうちに自分の運転がそのきっかけをつくっている可能性は大いにある。まずは自分の運転と周囲の車への配慮を再確認することが必要だ。そのうえで、万が一危険なあおり被害にあっても、相手に引きずられず、冷静な気持ちで「停車して、鍵をロックして、警察を呼ぶ」ことを忘れないようにしたい。
警察庁の調査では、過去1年間に3人に1人が「あおり運転」をされた経験があるという。「車間距離を詰める」「幅寄せ」「執拗なクラクション」など、身近な脅威に遭遇した時、身を守るためにできることとはどんなことなのか、専門家に聞いた。
【写真を見る】「手に汗じっとり…」車間詰め、執拗なクラクション、幅寄せ…危険な“あおり運転”にあったらどう対応すべき?弁護士に聞いてみると■「これって私に鳴らしてる?」執拗なクラクションに焦る筆者穏やかな土曜の朝だった。筆者は自身が運転する車で、4歳の子どもをスイミングスクールへ送り届ける途中だった。スクールは商業施設の5階にあるため、施設内の立体駐車場の上り坂を上がっていた。その時、“事件”が起きた。

後ろから車がスピードを上げて近づいてきたのだ。そして大きくこちらに向かってクラクションを鳴らす。「ブーブ―!」はじめ、このクラクションは「危険を知らせるもの」と解釈した。何かあったのかなと、安全運転をより心掛けた。しかし、クラクションは止まなかった。筆者の車が先行しながら、立体駐車場を上る間、相手は車間距離を詰め、執拗にクラクションを鳴らし続けたのだった。筆者の運転に何か問題があったのだろうか。立体駐車場という“一方通行”の構造では、逃げることは難しい。不安、焦り、ハンドルを握る手には汗がじっとりだった。ようやくスペースを見つけ、駐車し、相手を先に行かせることができたが、筆者の前を相手の車が横切る際、運転手の男性は一度止まり、車中から筆者を思い切り睨みつけてきた。怖かった。そして、後ろの車のことで頭がいっぱいで、運転自体が疎かになっていたことに気づき、もし何か不測の事態が起きていたら対応できていただろうかと、血の気の引く思いがした。あおり被害にあったとき、どうすればいいのだろうか。■3人に1人があおり被害 恐怖と焦り…その時にすべき3つのこと警察庁のアンケート調査では過去1年間に3人に1人があおり被害を受けた経験があると答えている。危険な「あおり運転」に遭遇してしまった際には、どう対応すべきなのだろうか?交通事故に詳しい菅藤浩三弁護士に話を聞いた。――今回のような「執拗なクラクション」「車間距離を詰める」という行為にとても不安を感じたのですが、法的に問題がある行為だったのでしょうか?菅藤浩三弁護士「令和2年6月から、あおり運転そのものを取り締まる 『妨害運転罪』という新しい法律が成立しました。今回のケースだと『警音器の使用等』の違反、『車間距離の保持』の違反という点で『妨害運転罪』(あおり運転)に該当します。まず『警音器の使用等』は、例えば“警告”のためにクラクションを鳴らす必要があることは分かりますよね。ぶつかりそうになった時など『危ない!』という意味です。それは『適切な利用』ということになりますが、それを超えて“執拗に”鳴らす、また、立体駐車場を上っている最中に鳴らし続ける必要はないわけですよね。さらに車間距離も本来は極端に詰める必要はないですから「車間距離の保持」違反なわけです。ただ『妨害運転罪」は公道を想定している法律なので、“それ以外”の場所で起きた行為に対して適用するかというとまだはっきりと詰められていません」――なるほど。でも場所がどこであれ、被害に遭っているときは、パニックになってしまいますよね。不安と焦燥感で、事故につながりかねないと思いました。どう対応すべきだったんでしょうか?菅藤弁護士「危険なあおり運転にあった場合は必ず『停車して、ロックして、警察を呼ぶ』のが正しい対応になります。基本的にあおり運転をする人というのは、非常に興奮状態にあります。あおった相手が怒鳴ったり、ドアや窓ガラスを叩いたりするケースもこれまでありました。鍵をロックして、警察が到着するまでは車内から絶対に出てはいけません」――警察が来ても、水掛け論になりそうな気もします。というのも、今回、私の車にはドライブレコーダーが前方だけで、クラクションの音は記録されているものの、後続車の車間を詰める様子までは記録されていませんでした。菅藤弁護士「正直に言ってそれだけでは証拠としては非常に弱いと思います。クラクションの音が録音されていたとしても、今回のように前方しか撮影されていないとなると、そのクラクションが後続車の鳴らしたものかが特定できないわけです。警察に相談する際には、加害者側のナンバーの特定も必要にになりますし、何よりも加害者が、言い逃れができなくなるための道具をどれだけ集めることが出来るか、ということが重要です」――具体的には何ができるのでしょうか?菅藤弁護士「後方部分を、例えばスマートフォンで同乗者に撮影してもらうというのもひとつです。停車して警察を呼ぶ間も、相手が挑発行為を続けるようなら、その行為もすべて撮影して記録してください」いつ遭遇するかわからない危険なあおり運転。もちろん、知らないうちに自分の運転がそのきっかけをつくっている可能性は大いにある。まずは自分の運転と周囲の車への配慮を再確認することが必要だ。そのうえで、万が一危険なあおり被害にあっても、相手に引きずられず、冷静な気持ちで「停車して、鍵をロックして、警察を呼ぶ」ことを忘れないようにしたい。
穏やかな土曜の朝だった。筆者は自身が運転する車で、4歳の子どもをスイミングスクールへ送り届ける途中だった。スクールは商業施設の5階にあるため、施設内の立体駐車場の上り坂を上がっていた。その時、“事件”が起きた。
後ろから車がスピードを上げて近づいてきたのだ。そして大きくこちらに向かってクラクションを鳴らす。
「ブーブ―!」
はじめ、このクラクションは「危険を知らせるもの」と解釈した。何かあったのかなと、安全運転をより心掛けた。しかし、クラクションは止まなかった。筆者の車が先行しながら、立体駐車場を上る間、相手は車間距離を詰め、執拗にクラクションを鳴らし続けたのだった。
筆者の運転に何か問題があったのだろうか。立体駐車場という“一方通行”の構造では、逃げることは難しい。不安、焦り、ハンドルを握る手には汗がじっとりだった。ようやくスペースを見つけ、駐車し、相手を先に行かせることができたが、筆者の前を相手の車が横切る際、運転手の男性は一度止まり、車中から筆者を思い切り睨みつけてきた。
怖かった。そして、後ろの車のことで頭がいっぱいで、運転自体が疎かになっていたことに気づき、もし何か不測の事態が起きていたら対応できていただろうかと、血の気の引く思いがした。あおり被害にあったとき、どうすればいいのだろうか。
警察庁のアンケート調査では過去1年間に3人に1人があおり被害を受けた経験があると答えている。危険な「あおり運転」に遭遇してしまった際には、どう対応すべきなのだろうか?交通事故に詳しい菅藤浩三弁護士に話を聞いた。
――今回のような「執拗なクラクション」「車間距離を詰める」という行為にとても不安を感じたのですが、法的に問題がある行為だったのでしょうか?
菅藤浩三弁護士「令和2年6月から、あおり運転そのものを取り締まる 『妨害運転罪』という新しい法律が成立しました。今回のケースだと『警音器の使用等』の違反、『車間距離の保持』の違反という点で『妨害運転罪』(あおり運転)に該当します。
まず『警音器の使用等』は、例えば“警告”のためにクラクションを鳴らす必要があることは分かりますよね。ぶつかりそうになった時など『危ない!』という意味です。それは『適切な利用』ということになりますが、それを超えて“執拗に”鳴らす、また、立体駐車場を上っている最中に鳴らし続ける必要はないわけですよね。
さらに車間距離も本来は極端に詰める必要はないですから「車間距離の保持」違反なわけです。
ただ『妨害運転罪」は公道を想定している法律なので、“それ以外”の場所で起きた行為に対して適用するかというとまだはっきりと詰められていません」
――なるほど。でも場所がどこであれ、被害に遭っているときは、パニックになってしまいますよね。不安と焦燥感で、事故につながりかねないと思いました。どう対応すべきだったんでしょうか?
菅藤弁護士「危険なあおり運転にあった場合は必ず『停車して、ロックして、警察を呼ぶ』のが正しい対応になります。基本的にあおり運転をする人というのは、非常に興奮状態にあります。あおった相手が怒鳴ったり、ドアや窓ガラスを叩いたりするケースもこれまでありました。鍵をロックして、警察が到着するまでは車内から絶対に出てはいけません」
――警察が来ても、水掛け論になりそうな気もします。というのも、今回、私の車にはドライブレコーダーが前方だけで、クラクションの音は記録されているものの、後続車の車間を詰める様子までは記録されていませんでした。
菅藤弁護士「正直に言ってそれだけでは証拠としては非常に弱いと思います。クラクションの音が録音されていたとしても、今回のように前方しか撮影されていないとなると、そのクラクションが後続車の鳴らしたものかが特定できないわけです。警察に相談する際には、加害者側のナンバーの特定も必要にになりますし、何よりも加害者が、言い逃れができなくなるための道具をどれだけ集めることが出来るか、ということが重要です」
――具体的には何ができるのでしょうか?
菅藤弁護士「後方部分を、例えばスマートフォンで同乗者に撮影してもらうというのもひとつです。停車して警察を呼ぶ間も、相手が挑発行為を続けるようなら、その行為もすべて撮影して記録してください」

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