鶏ささみのタタキ「食中毒」で示談金「1億円超」のリスク…”新鮮でも安全ではない”厚労省も警告

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「新鮮だから安全」は間違い──。厚生労働省が公式Xで、刺身やタタキなど、加熱していない、あるいは加熱不足の鶏肉を提供することによる「カンピロバクター食中毒」の防止を呼びかけています。
厚労省によると、カンピロバクターとは、ニワトリやウシなどの腸管内にいる細菌で、わずかな量でも食中毒の原因になります。このため鶏肉を食べる際には十分な加熱が不可欠とされています。
万が一、生や生焼けの鶏肉を提供して、食中毒と断定された場合、店は営業停止など行政処分を受けるほか、客に対する賠償責任も負う可能性もあります。
過去には、生の鶏肉を提供したことが高額な損害賠償に発展した事例もあるようです。
日食協ニュース(日本食品衛生協会・日本食品衛生共済協同組合発行)によると、2016年3月、兵庫県内の店舗で「鶏ささみのタタキ」を食べた親子がカンピロバクター食中毒を発症しました。
当時10代だった子どもは回復しましたが、当時40代の父親はカンピロバクター食中毒が原因と考えられるギラン・バレー症候群を発症し、手足の麻痺などの後遺症が残ったといいます。
日常生活にも介助が必要となったことから、示談額は約1億円にのぼったそうです。被害者が働き盛りで扶養家族もいたことを踏まえ、「一般的な損害賠償の相場では2億円に迫る事故」だったと同紙は指摘しています。
食品衛生法には鶏肉の生食を直接禁止する規定はなく、提供自体がただちに違法となるわけではありません。実際、一部地域では郷土料理として提供されています。
たとえば、鹿児島県では「鶏刺し」が知られています。農水省のサイトによると、江戸時代に薩摩武士が士風高揚のために闘鶏をおこない、負けた鶏をその場でしめて食べる習慣がありました。家庭でも鶏を飼い、来客や祝い事の際に振る舞ってきた歴史があります。
鹿児県ではこうした文化を踏まえつつ、安全な食を守るため、生食用食鳥肉について独自の衛生基準を設けています。鶏肉の処理工程や店での取り扱いについて、細かい基準が定められています。
厚労省は、生や加熱不足の鶏肉による食中毒が多発していることから、次の点を呼びかけています。
・中心部の色が変わるまで加熱する(中心部を75度で1分以上)・食肉は他の食品と調理器具や容器をわけて、処理・保管する・食肉を取り扱った後は十分に手を洗ってから他の食品を取り扱う・食肉に触れた調理器具などは使用後に消毒・殺菌をする
同省の資料では、「鶏刺し」「鶏たたき」「鶏わさ」「生焼けの焼き鳥」などが原因、または疑われる事例が多数報告されているとしています。安全のためには、加熱と衛生管理の徹底が欠かせません。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。