不倫夫、4年前に覗き見した「妻の不倫LINE」を蒸し返し…妻が迫られる「元カレを見殺しにするか、夫に金を払うか」地獄の二択【弁護士が解説】

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不貞慰謝料を請求できる権利は、時効を過ぎると消滅します。その期間はどのくらいなのかは、慰謝料を請求する側、される側どちらにとっても押さえておきたいポイントです。そこで、実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」ココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、不貞の慰謝料請求の時効について、小林聖詞弁護士が解説します。

夫の不貞行為が発覚したため、相談者が不倫相手に慰謝料請求しました。すると、夫が激怒し「お前の4年前の不倫相手にも慰謝料請求する」といってきました。
相談者の不貞行為については、関係が始まってすぐに夫が相談者のLINEをみたため、不倫の事実と、相手の名前、職場を知っていました。しかし夫は「4年前だから時効じゃない」と言い張ったり、「俺は最近不倫の事実を知った」と嘘をつき、時効の起算点を変えようとする発言をしたりして、話し合いが思うように進まない状況です。
そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の2点について相談しました。
(1)不貞の慰謝料請求の時効はいつか。このような場合、時効が成立している可能性はあるのか。(2)相談者の不倫相手への慰謝料請求を避けるために、対応すべきことはなにか。
(1)不貞の慰謝料請求の時効はいつか。このような場合、時効が成立している可能性はあるのか。
(2)相談者の不倫相手への慰謝料請求を避けるために、対応すべきことはなにか。
不貞の慰謝料請求の時効については、不倫相手(不貞相手)に請求するのか、それとも配偶者に請求するのか、によって変わります。
まず、不貞相手へ請求する場合について。法律上は、「被害者……が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき」は時効によって消滅するとなっています(民法724条1号)。
このなかで、「損害」を知ったときというのは、不貞の事実が発覚したとき、ということです。つまり「加害者を知った時」がいつか、というのが問題になります。
この点、最高裁昭和48年11月16日判決は、「加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況のもとに、その可能な程度にこれを知った時を意味するものと解するのが相当」として、被害者が当時加害者の住所氏名を的確に知らず、しかも当時の状況においてこれに対する賠償請求をすることが事実上不可能な場合は、いまだあたらないものと判断しています。
そうなると、本件のように、氏名がわかっていても、住所がわからない場合、「加害者を知った時」とはいえず、時効が成立しない、と考える余地もありそうです。
しかし、民事訴訟法上、訴える相手の現住所が調査してもわからない場合、例外的ではありますが、相手の勤務先(就業場所)に訴状を送達してもらう、という方法があります。すなわち、不貞相手の氏名と勤務先がわかっていれば、慰謝料請求の訴訟を提起すること自体、できないわけではありません。この点を踏まえ、氏名と職場がわかっている以上、賠償請求が事実上可能な状況にあったとして、そのときから時効が進むという反論が考えられるでしょう。
そのうえで問題になるのは、こういった話について消滅時効を主張する側、今回であれば慰謝料を請求された側が証明しなければならない、ということ。4年前に夫が相談者のLINEをみた、それにより不貞相手の氏名・職場もわかったと不貞相手側が証明することは、極めて大変です。
夫が「最近不倫の事実を知った」と嘘をついているということについては、どのような証拠を示せるかがポイントとなります。しかし実際にはかなり厳しいでしょう。たとえば、夫が3年以上前に探偵に依頼しており、そのときに探偵に提供した情報の中に、相手の氏名や職場の情報が含まれている、ということがわかれば可能性はあるかもしれません。しかしなにも証拠がないとなると、時効の成立が認められる可能性は極めて低いといえます。
これに対し、配偶者への慰謝料請求については、不貞から3年以上が経過していても、離婚から6ヵ月が経過しない限り、時効にはなりません(民法159条)。したがって、夫が相談者に対して慰謝料請求をすることは、問題なく可能であることに注意しましょう。

続いて、夫が相談者の4年前の不倫相手へ慰謝料請求するのをやめさせるためには、どうすればよいのでしょうか。そもそも、この質問が出ている時点で、相談者の夫婦関係はどうなっているのか、疑問が沸きます。
相談内容からすると、配偶者よりも不倫相手を優先しようとしているようにみえますが、まずは相談者の中で、離婚したいのか/したくないのかをはっきりするべきです。そのうえで、同じく不倫をしていた配偶者にもはっきりしてもらったほうがよいでしょう。
前提として、相談者の過去の不倫の責任は、法律上、相談者と当時の不倫相手が“二人で一つのセット”として負うことになっています。これを「連帯債務」といいます。つまり、相談者の個人のお金をもって、夫に対し慰謝料相当額を支払うことにより、不倫相手の夫に対する慰謝料支払義務を消滅させる、ということが理論上考えられます。連帯債務は2人のうちのどちらか一方が責任を果たして慰謝料を支払えば、もう一方の支払い義務も消滅するためです。
それ以外の選択肢についてですが、まず、離婚するとなった場合には、離婚合意書を作成することになるでしょう。そのなかで、財産分与等とは別に、お互いの不貞慰謝料請求については相殺し、不倫相手には請求しないという条項を設けておくことが考えられます。
一方、離婚をせず、関係を再構築する場合は、「なぜ夫が不倫相手に慰謝料請求をしてはいけないのか」この理由を合理的に話す必要があるでしょう。「あなたも浮気していたから」というような感情的な理由では、到底説得は難しいと思われます。
お互いに、不倫に至った経緯があるはずで、そこには相手方に対する不満があるはずですから、まずはその点をしっかり話し合い、反省し、謝罪すべきです。当たり前ですが、お互い、不倫相手との関係継続は一切しないことを約束したうえで、それでもなお、夫が不倫相手に慰謝料請求をしてはいけない理由を説明する必要があります。
よほどの理由がない限り、そのようなことをいわれた夫側は、相談者と不倫相手がいまも繋がっていると疑い、いい思いはしないでしょう。夫婦関係はうまくいかなくなってしまうように思います。それでも、どうしても慰謝料を請求してほしくないということであれば、最初に戻り、相談者個人のお金で慰謝料相当額を支払うほかないでしょう。

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