北海道・知床の羅臼岳で男性がクマに襲われ死亡した事故で、閉鎖されていた知床五湖の散策路が全面再開されました。観光客が訪れる一方、利用者が途絶えたままの施設もあり、事故の影響が残っています。列をなして遊歩道に入っていくのは、知床を訪れた観光客です。(山本記者)「きょうから開放となった地上遊歩道に、多くの人が続々と入っていきます」フィールドハウス前に集まった人たちのお目当ては、知床五湖の絶景です。
8月17日の高架木道の利用再開に続き、全面解禁となった知床五湖の散策路ですが、閉鎖の原因になったのはー(通報)「友人がヒグマに襲われた」先週14日に羅臼岳で、東京都の会社員・曽田圭亮さん26歳がクマに襲われて、死亡した事故です。曽田さんは当時、通報した友人と2人で羅臼岳の標高550メートル付近を下山中でした。友人は曽田さんの200メートル後ろを歩いていましたが、名前を叫ばれて駆けつけると、太もも付近から出血した状態でクマと格闘する曽田さんの姿がー友人も加勢しましたが、曽田さんはやぶの中に引きずり込まれたということです。死因は「全身多発外傷による失血」でした。こちらは同じ14日に羅臼岳周辺で撮影された映像です。親子グマ3頭が道路を悠々と歩いています。知床財団によりますと、8月はクマが登山客につきまとう事案もあり、警戒を強めていたということです。知床が世界自然遺産に登録されて初めて起きた悲惨な事故。地元の役場担当者はー(斜里町 茂木公司総務部長)「起きた事案が重いので、ヒグマ管理計画に基づいて対応・対策してきたつもりだが、専門家も含めて検討・協議をしていく必要はあるのではないか」こちらは地元の漁師が4年前に撮影した映像です。1頭のクマが何かをむさぼっているように見えますが、突然カメラに突進してきました。(漁師 古坂彰彦さん)「クマがエサを持っちゃうと土まんじゅうと言って土の中に埋める。そのそばに行くとやられますから。エサをとられると思っちゃう。それで一回威嚇されているんです」2025年はマスが不漁で、クマのエサが不足傾向にあることも事故の背景にあるとみています。知床の野営場です。例年キャンパーで賑わうといいますがー(管理人 江刺隆夫さん)「テントが少なくてこういう光景は見たことがない。だいたいお盆から始まってお盆明けくらいまで全体の7割は間違いなく埋まっています」取材で訪れた際に確認できたのはテント2張りのみ。ログハウスのキャンセルも相次いでいるといいます。クマによる死亡事故の発生は、書き入れ時を迎えた知床の観光業にも影響を及ぼしています。
【クマへの対応】知床はクマの生息地です。知床財団ではSNSなどを通じて、クマへの対応について注意喚起しています。まずは、ごみを捨てずに持ち帰る。知床でもポイ捨てなどマナー違反はクマを餌付けする要因となります。当然のことながらエサを与えない。さらには近づかない。そして、クマと遭遇してしまった際、ひと昔前は「荷物を置いて逃げる」ことが推奨されていましたが、クマが人と食べ物を関連づけて学習してしまうため、荷物を持ってゆっくりと立ち去ってください。知床財団では、クマの生息地ではクマとの距離を保ちながら、餌付けにつながるような行動は絶対に避けるよう呼びかけています。