「台風の進路」「線状降水帯」AIで予測を高精度化へ…膨大な観測データ自ら学習でスパコン要らず

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

気象庁は人工知能(AI)を使った気象予報モデルの開発に乗り出す。
過去の膨大な観測データをAIが自ら学ぶ技術「深層学習」を活用して予測する仕組みで、2030年頃の導入を目指す。従来の予報モデルとの併用で、台風の進路予想を高精度化するほか、短時間に大雨をもたらす「線状降水帯」の発生を迅速に予測し、防災対策につなげる。
同庁は現在、気温や風向き、大気中の水蒸気量などの観測データをスーパーコンピューターに入力して天気を予測している。この手法は「数値予報」と呼ばれ、物理学に基づいた計算式によって算出し、同庁の予報官が天気図などの情報も踏まえて予測を発表する。
開発する「AI気象モデル」は、過去の観測データや標高などの地形情報を大量に学習したAIを活用。数値予報のような計算式を使わないため、高性能のスパコンがなくても天気を短時間かつ正確に予測できる。
世界では異常気象による災害が頻発し、人的・経済的被害も大きくなっている。各国では、被害を最小限にするためAI気象モデルの開発が進み、米国のIT大手グーグルや半導体大手エヌビディア、中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)などが参入する。
AIの性能向上には、観測点だけでなく周辺の推定値も含めたきめの細かいデータを学習する必要がある。
同庁は、01年以降の詳細なデータを東京大と共同解析中で、担当する中村尚・同大名誉教授は「品質の高い学習データを使えば、より高精度な予報モデルを構築できる」と述べる。
ただ、AIも万能ではない。台風の場合、進路予想の精度は高いが、風の強さや中心気圧の変化の予測は苦手とされる。同庁の平原洋一・AI戦略企画調整官は「従来の手法や予報官の分析も踏まえたAIの活用を目指したい」と話す。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。