〈手取り月16万円〉45歳の離婚女性の絶望。元夫「早く住所変更をしろ、不愉快だ」の電話とともに受け取った、差出人・日本年金機構の赤い封筒「もう人生詰みました」

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離婚を機に、経済的に不安定になることは珍しくありません。月17,000円ほどの国民年金保険料さえ払うのをはばかれ、滞納が続いてしまう――そんなケースも。その先に訪れるのは、悲劇でしかありません。
フリーランスで活動している鈴木優子さん(45歳・仮名)。5年前に元夫と離婚。しかし、当時まだ中学生だった一人息子のことを考え、奇妙な「同居生活」を続けていました。
「お互い顔を合わせないように生活していましたし、息子の精神的な負担を考えれば、それが最善だと思っていました。私がフリーランスとしてある程度の収入を確保できていたことも、同居を続けられた理由の一つです」
しかし、息子が大学に進学すると、子育てという共通の目的が薄れたことで、元夫からの風当たりは日に日に強くなっていきました。そして半年前、「もうOO(息子の名前)も大丈夫だろ。いい加減、出て行ってくれ」と、事実上の退去勧告を突きつけられたのです。
タイミングの悪いことに、優子さんの仕事もその頃、大きな転機を迎えていました。長年の大口クライアントだった企業が経営方針を変更し、突然契約を打ち切られてしまったのです。収入は激減。正社員の職も探しましたが、40代で社会人経験が乏しい優子さんにとって、その壁はあまりにも厚いものでした。細々とフリーランスの仕事を続けるしかなかったのです。
「それまで月収で40万円を超えていたのが、いまは20万円以下。手取りにすると16万円ほどです……まさか自分が、ここまで困窮するなんて想像もしていませんでした。離婚したことや家を出たことを後悔したくない、その一心で毎日を過ごしています」
そんなある日、優子さんのスマートフォンが鳴りました。表示されたのは、もう話したくもない元夫の名前。重い気持ちで電話に出ると、吐き捨てるような声が聞こえてきました。
「お前宛に、また郵便が届いている。いつまでこんなことを続けさせるんだ。早く住所変更をしろ、不愉快だ」
多岐にわたる住所変更。いくつかの手続きが後手に回っているのは事実でした。数日後、元夫から転送されてきた郵便物の束。そのなかに、ひときわ目を引く赤い封筒がありました。差出人は「日本年金機構」。優子さんは、その封筒が何を意味するのか、直感的に悟ったといいます。
意を決して赤い封筒を開封した優子さんは、そこに書かれた文字を見て、深い深いため息をつきました。「最終催告状」。国民年金保険料が、1年ほど未納になっていることへの最終催告でした。
収入があったころは、問題なく保険料を納付していました。しかし、収入が激減したここ1年ほどは、月々約17,000円の保険料を支払うことができず、見て見ぬふりを続けていたのです。催告状は、収入がまだ安定していた時期の所得に基づいて送付されています。現在の困窮した状況などお構いなしに、過去の所得を基準に「支払能力がある」と判断され、最後通告を突きつけられた形です。
「書かれた未納額を見て、絶望感に襲われました。今の自分には、月17,000円を払う能力もないんだなと……改めて思い知らされました。もう、私の人生は詰んでしまったんだと、本気で思いました」
国民年金保険料の納付は国民の義務です。未納のまま放置すると、将来の老齢基礎年金が減額されたり、受け取れなくなったりするだけでなく、万が一の際の障害年金や遺族年金が受給できないリスクもあります。そして、この「最終催告状」を無視し続けると、財産の差し押さえが強制的に執行される可能性もあるのです。
日本年金機構によると、2023年、赤色の封筒に入った最終催告状は176,779件に送付。督促状は102,238件に送付され、最終的に30,789件が財産差し押さえとなりました。
では、優子さんのように、収入が急激に減少し、保険料の納付が困難になった場合はどうすればよいのでしょうか。そのような状況に陥った人のための救済制度が「国民年金保険料免除・納付猶予制度」です。
この制度は、本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定額以下の場合や、失業、事業の廃止、天災などの理由で保険料を納めることが経済的に困難な場合に利用できます。申請が承認されると、保険料の納付が所得に応じて「全額」「4分の3」「半額」「4分の1」免除されたり、納付が猶予されたりします。優子さんのように、フリーランスで大幅に収入が減少した場合も、失業や事業の廃止に準ずる状況として、特例的に免除が認められる可能性があります。
「財産差し押さえになっても何もないので、困ることなんてありませんが……」
自嘲気味に笑う優子さん。しかし、実際に差し押さえとなると、取引先に迷惑が及ぶこともありますし、今後のフリーランス活動にも影響を及ぼしかねません。その後、年金事務所を訪れ、正式に保険料猶予の申請をしたといいます。
[参考資料]日本年金機構『国民年金保険料』日本年金機構『国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度』厚生労働省『年金制度基礎資料集』

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