元山口組幹部・盛力健児氏、独占インタビュー「ヤクザは必要悪」「山口組がやるべきことはカネ儲けではない」

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取材中、盛力氏はどんな質問にも丁寧に答えた。堅気を威圧するのは、任ではないという。伝説の人物が、ヤクザのあるべき姿を語った。
前編記事『【元山口組幹部・盛力健児氏インタビュー】「極道社会は狂ってしまった…」伝説のヤクザが「一般社団法人」を設立した意外な理由』より続く
山健組への捜査は体を張って防いだが、盛力氏自身は殺人罪で起訴され、懲役16年の実刑判決が下る。’80年3月から服役した宮城刑務所では、六代目山口組の司忍組長と知己を得る機会もあった。
当時、司組長は弘道会の前身にあたる弘田組の若頭で、敵対組織の幹部を日本刀で刺殺した事件で懲役13年の実刑判決を受けていた。
「秋にあった刑務所の運動会を見ながら、初めて言葉を交わしました。司は腰の低い男でね。年はワシが一つ上で、当時は座布団(組織内の地位)も上やったけど、ワシは座布団の高い低いで人を見る人間じゃないから、すぐに打ち解けた。彼は手先が器用で、ワシのために見事な貼り絵をつくってくれたこともあった。
司とはヤクザの組織づくりについても話しましたよ。義理と人情を重んじる組織にしたいと、彼ははっきりと言っていた。そんな人物がトップにいながら、なぜ今のような堕落した山口組になってしまったのか……」(盛力氏。以下、「」内は同)
服役中に田岡三代目や山本若頭が相次いで死去。盛力氏が出所したときには、山一抗争を経て、山口組は五代目体制になっていた。
16年ぶりに組織に戻った盛力氏は、その変貌ぶりに驚愕したという。
「みんな、カネ、カネ、カネや……。バブルは社会を変えたけど、その筆頭がヤクザやったわけや。三代目時代の直参連中には、大金を持っている人なんかおらなんだ。それが五代目になったら、みんな大金持ちですがな。
かつての山口組では組織のために体を張った人間が取り立てられた。しかし、五代目時代は親分のところにカネをようけ持ってくる奴が偉くなるようになった。もともと、渡辺いうのは処世術だけでトップまでいったような男でしたからね。五代目のときから山口組がおかしくなったのは間違いない」
その後、クーデターによって渡辺組長は引退に追いやられ、’05年に司組長の六代目体制が発足。次第に、ヤクザは食えない時代になっていく。
「五代目時代の直参は月に80万~90万円の『経費』(上納金)を本部に納める必要があったんやけど、六代目になると水や雑貨も買わされるようになった。すると、月々の経費に四苦八苦する組が出てくるようになったんです。貧乏になると、堅気を喰いモノにしたり、シャブに手を出す奴が現れる。
しかしその一方で、上層部の一部だけは異様に潤っている。ワシはこの状況はおかしいと、声をあげとったんです。みんな『山口組』という看板で稼いでいるんやから、儲けたカネはプールして、組織全体に行き渡るようにすべきや、と。そうでもせんと、貧富の差ができすぎて山口組が潰れる思た。
六代目の執行部からしたら、そんなワシがうとましかったんでしょう。当時、ワシ以上に組織に貢献した人間はおらんかったし、ワシは司にも平気でモノを言うから。だから、若頭の高山(清司・現六代目山口組相談役)は、’09年にワシを除籍処分にしたんです。あの処分に、理由なんてものはなかった。
さっきも言うたけど、司には古き良き山口組を継承していこうという気持ちがあったと思う。でも、腹心の高山が、上意下達型の組織づくりをしすぎてしまった。
高山は、親分と会ったときに、若い衆たちに壁を向くよう指導するんです。下のモンが親分の顔をまともに見たらアカンというわけ。これは、刑務所のやり方ですよ。所内を偉い人が歩いてきたら、受刑者はパッと壁を向く。高山はそれを取り入れた。こんな組織では、人間同士の義理人情なんて生まれるわけない」
暴対法に加え、’11年には暴排条例も全国で施行された。ヤクザは年々稼げなくなってきているが、山口組内部では厳しい締め付けによって上納金の支払いが求められる。
結果、暴力団構成員の数は激減しており、全盛期は10万人以上だったが、’24年末には9900人となった。代わりに台頭しているのが半グレやトクリュウといった新手の犯罪集団で、特殊詐欺や強盗といった事件も多発している。
「大阪のミナミなんかはもう、半グレにグチャグチャにされてる。各地で同じことは起きているでしょう。そういう状況を見て、原点である任道に立ち返るべきと考え、一般社団法人を立ち上げたんです。
ワシは、ヤクザは必要悪やと思てます。薬物や堅気を狙った小汚い犯罪やなしに、警察が介入できないトラブルを助けたり、街の治安を守ることをシノギとする。もちろん、そんなもんは儲かりませんよ。だからこそ、義理と人情による連帯組織として支え合う。そうすれば、ヤクザを取り巻く厳しい状況も変わり、結果として犯罪も減っていくんやないかと考えています。
現役や服役中のヤクザでも、ワシの考えに賛同してくれる者がいれば、一般社団法人に加わってもらいたい。できることは限られているかもしれませんが、少しずつ任道の啓蒙活動をし、世直しをしていくつもりですわ」
傘寿を過ぎてなお意気軒高。伝説のヤクザは、極道社会を変えられるか。
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「週刊現代」2025年08月04日号より
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