【臨時国会が開会】党内で退陣要求が加速も…石破茂総理が“続投”を宣言できる「自民党の特殊事情」

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石破政権はいつ退陣するのかーー。
7月28日、利害と怨恨が複雑に交錯した両院議員懇談会が開催された。冒頭、石破茂総理(68)は「国家国民に対して決して政治空白を生まないように責任を果たしたい」と改めて続投を表明した。7分に及ぶ挨拶後、参加した議員からの拍手はまばらだった。
懇談会は2時間の予定が4時間半に及んだ。「質問を打ち切らない。最後まで聞く」と綴られた石破氏の手書きのメモが、ひな壇に並んだ執行部に回ったからだ。
懇談会に参加した青山繁晴参議院議員(73)によれば、退陣を求める声が大半で、63人が発言し、即刻の辞任を要求した議員は38人にのぼったという。反対に続投を支持したのは船田元元経済企画庁長官(71)の1名のみ。青山氏は長丁場での石破氏の振る舞いにこう注文をつけた。
「カメラがなくてよかったという場面があった。お疲れなのか、うとうとされる場面が2、3度あった。国際社会の交渉では一瞬のうちに付け込まれる。国際社会で活躍できる人じゃない」
参院選敗北の責任を問う両院議員総会の開催も決まり、石破降ろしが加速するなか、懇談会後の囲み取材で石破氏は「続投方針に変わりはないか」と問われ、「ございません。果たすべき責任を果たしていきたい」と改めて続投を宣言した。
「石破総理が続投宣言したことで反石破派も引けなくなった。だが、反石破派の対応は難しい。辞めろ一辺倒で石破総理を退任させられるわけもなく、党内抗争が続くことで逆に自民党が支持を失いかねない。反石破派が総裁選の開催を叫んでも、『表紙だけ代えて刷新感の演出か』と逆効果になりかねない」(全国紙政治部記者)
首の皮一枚の石破政権に世論は好意的だ。7月25日には首相官邸前で「石破、辞めるな」と続投を求める人が約500名も集まった。SNSにも《石破辞めるな》という投稿が増えている。
朝日新聞の世論調査(26日・27日)では、辞任は「必要ない47%」で「辞めるべき41%」を上回った。参院選敗北の要因についても「自民党全体に問題がある81%」が「総理個人の問題10%」を大きく上回った。
23年ぶりに自民党に復党した鈴木宗男参議院議員(77)が気炎をあげる。
「(参院選の選挙運動で)全国津々浦々を歩いた感じでは、(裏金の)不記載議員へのケジメがついていないことに国民は怒っている。政治とカネの問題が未解決のまま国政選挙となった結果であって、決して石破総理一人の責任ではない。
そもそも裏金問題が発覚した時点で、旧清和会(安倍派)、旧志帥会(二階派)の領袖がバッジを外していれば、ここまでこじれなかった。不記載議員へのケジメがまず必要」
石破氏も懇談会後、「国民世論とわが党の考え方を一致することが大事だ」と旧安倍派を牽制している。5度の総裁選敗北を経て掴んだ総理・総裁の座を簡単に手放す気はないのだ。
しかし、これまで石破政権を支えてきた森山裕幹事長(80)が参院選総括委員会で報告書をまとめた後に「幹事長として責任を明らかにする」と引責辞任を示唆した。「裏総理」と呼ばれ、公明党や野党にも幅広い人脈を持ち、政権の屋台骨となっている森山氏が辞任すれば、石破政権は窮地に追い込まれる。
視界不良のまま8月1日から始まる臨時国会では、先の参院選で躍進した参政党が初めて委員長ポストを獲得する見通しだ。秋に開催される臨時国会でも野党に委員長ポストを奪われており、より丁寧に説明し、さらに頭を下げねば、法案1つを通すこともできない。
「直ちに辞任をすることが、責任の取り方ではない。衆参ともに過半数を割った国会で法案、予算案を通せるのか。死に物狂いで何とかするのが総裁の責任だ」
衆議院内閣委員長を務める大岡敏孝元環境副大臣(53)はそう憤った。衆参で少数与党となり、与党だけで法案や予算案を成立させることができなくなった。自民党ベテラン秘書は、政権基盤が弱体化し、厳しくなった政局をこう読む。
「もう、自民党総裁=総理大臣という時代ではない。野党に平身低頭し、内閣不信任決議案に気を揉みながら国会運営をせねばならない。見せ場も乏しく、見栄えは非常に悪くなる。
石破総理は党内での人望が乏しいが、立憲民主党の野田佳彦代表(68)、日本維新の会の前原誠司共同代表(63)とは気脈を通じて赤坂宿舎で会合を開いている。森山幹事長も立憲のキーマンの安住淳元財務相(63)、日本維新の会で寝技ができる遠藤敬前国対委員長(57)とは昵懇の仲。
いまの自民党内で石破氏に匹敵する人脈の持ち主は菅義偉副総裁(76)のみ。他の議員では野党との水面下の折衝ができない。石破政権しか政権運営ができない状況となっている」
石破氏は周囲に「この政治状況で誰が舵取りできるのか」と自身の失政を棚にあげ、そう嘯(うそぶ)いているという。国民不在のチキンレースはいつまで続くのだろうか……。

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