パニック障害当事者語る、発作の意外なトリガー

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クイズ作家として活躍しながら、28年間パニック障害と向き合ってきた日大介さん(撮影/今井康一)
【写真】苦しさを抱えながらも、パニック障害への対処法を余すことなく語ってくれた日高さん
『クイズ!ヘキサゴンII』や『超逆境クイズバトル!! 99人の壁』(ともにフジテレビ系)などの人気クイズ番組も手がけたクイズ作家・日大介さん(47)。高校生の頃からクイズプレイヤーとしても頭角を現し、『パネルクイズ アタック25』(テレビ朝日系)では優勝も手にしている。番組での解答時に見せる冷静沈着な姿からは想像できないが、実は19歳からパニック障害を患っているという。
日さんは「同じような病気に苦しむ人の参考になれば」と、これまでも自身のnoteやXで経験談や対処法を語ってきた。先日は『夢をかなえるゾウ』の著者である作家・水野敬也さんとX上で、パニック障害の当事者同士としてのやりとりも交わしていた。
昨今ではパニック障害という言葉を耳にすることは珍しくないが、実際にどんな症状が出るのか。この病気で苦しむ人を前にしたとき、私たちはどのように接すればよいのだろうか。27年もの間、この病気と向き合ってきた日さんの目線から、詳しく語っていただいた。
*【あわせて読みたい】→クイズ作家・日大介(47) ≪パニック障害≫でセンター試験は途中帰宅し、仕事も次々降板…“ライオン16頭に囲まれているような恐怖”を語る
──前回の記事では、日さんが浪人生の19歳の頃にパニック障害を発症し、その後、第1志望の大学の受験を諦めたり、症状がひどくなってお仕事をストップしたりと苦労されたことも多かったと伺いました。パニック障害の発作は、具体的にどこでどのような症状が出るのでしょうか?
まず、満員電車や美容院、歯医者など「その場から逃げられない場所」で発症するのが典型的ですね。センター試験の教室もそうでした。僕の場合は動悸や息苦しさ、吐き気や強烈な恐怖感を感じます。症状が出たら、自分の腕やお腹の皮膚に爪をグッと食い込ませるんです。発作のつらさを「痛み」でカバーする感じ。
でも長年、病気と付き合ってきたなかで、症状が起きる前に発作を察知して対処できるようになりました。たとえば電車に乗っていて、次の駅までに発作が起きそうかも、と感知したら潔く、電車からホームに降りるようにしています。
──日さんは、パニック障害の発作は「サバンナの真ん中で、16頭ものライオンに囲まれている感覚を覚えるほどの恐怖体験」とおっしゃっていました。症状が出るたびに、そのような恐ろしい緊張感が続くのでしょうか?
ひどいときはそのくらい追い込まれますね。まさに筆舌に尽くしがたい不快感と恐怖です。「ああ、発作が起きるかも」という予兆があるのですが……例えば、体育の授業で平均台を渡ったことはありますか?
僕はパニック発作を過剰に意識してしまうと実際に発作が起きてしまうことが多いのですが、その感覚が、平均台や綱渡りで「あー落ちてしまう」という感覚に似ているのです。細いけれど一本道だし、普通にしていれば平気なはずなのに、下を意識した途端にちょっと怖くなり、身体がなぜか引っ張られて落ちてしまう感じ……。あの心理に似ているなあと思います。
ただ、パニック発作で死ぬことはなく、たいていの発作は20分も続けば収まりますし、自身に合う薬を服用すると収まることがほとんどです。しかし、「死ぬことはないから大丈夫」で済む病気ではありません。それくらいつらいです。
──パニック障害の発作を誘引する要因はありますか?
人それぞれ違いますが、一般には不規則な生活や睡眠不足などと言われます。でも僕の発作のトリガーのひとつは「吐き気」です。だから吐き気が起きないように、食事をした後などは絶対にタクシー以外の乗り物に乗らないようにしています。仕事がある日は、食後に気分が悪くなるのを避けるため、一切ご飯を食べません。美味しそうなロケ弁は家に帰ってからのお楽しみにしています。
──実際に食事のあとに体調が崩れた経験があるのですか?
35歳くらいの頃、テレビのお仕事で、関東近県のレジャー施設に行くロケ番組があり、帰りのサービスエリアでスタッフさん達といつも通りラーメンを食べたんです。その帰りのロケバスで気持ち悪さに襲われ、胃薬を飲んだり、いつもより多めに抗不安薬を飲んだりしたのですが、治らなくて。でも、高速道路の途中で「降ろしてほしい」なんて言えないじゃないですか。スタッフさんにも迷惑をかけたくないですし……。僕は物心ついた時から「嘔吐恐怖症」があるんです。
だから悟られないように必死に耐えて、本当はテレビ局まで戻るはずだったところを、「次の用事があるので」と早めに降ろしてもらい、なんとか解放されました。外に出ると楽になるのが不思議なんですよね。その経験から、仕事があるときは食事をしない、というマイルールを決めました。テレビの特番収録などでも、僕だけ食事をしていなくて不思議がられることがありますが、事前対策です。
──食事が思うようにとれないのはつらいですね。
あと、僕のパニック発作の二大トリガーのもうひとつは「暑さ」です。夏の暑さもさることながら、冬の暖房がとにかくつらくて。暖房が効きすぎていると、症状が出そうになっていつもドキドキします。あるクイズ番組の収録で、その頃はまだお弁当を食べていたうえに、暖房も強かったことがあって。今思えば、その時点でいつ具合が悪くなってもおかしくありませんでした。
その番組では司会を担当していたので、僕が「問題です」って言わないと始まりません。でも、気持ち悪さと暑さから症状が現れて、どうしても問題が読めない。「いけそうです!」「やっぱりすみません。ちょっと待ってください」っていうのを3回くらい繰り返してしまい……。解答者の方々も理解ある方々で待ってくれていてくださり、30分後くらいに何とか体を持ち直して、最後までやり遂げられました。
──一般的には、カフェインやアルコールなどの摂取もパニック障害の発作を誘発すると言われていますが、日さんはどうですか。
僕はどちらも大丈夫なほうです。でも、アイスコーヒーは一日1杯まで、アルコールは強いのでそれなりに(笑)。個人差があるところなので、病気の方はご自身の「合う・合わない」を事前に知っておくことをおすすめします。それよりも「口の渇き」が天敵ですね。飲み物がまったくないと不安になってしまうので、冷たいノンカフェインのペットボトルを必ずカバンに入れて持ち歩くようにしています。
──電車やロケバスなどだと、何かあればすぐ降りられるタクシーと違って、発作が起きやすいとおっしゃっていましたよね。
逃げられない場所にいる場合は、「あとどれくらいの時間で解放されるのか」を知ると、症状が緩和する裏ワザがあります。例えばJR中央線だと、隣の駅までの所要時間がだいたい2、3分じゃないですか。スマホのストップウォッチのカウントダウン機能を2分間にセットして、先頭車両に乗るんです。
電車の行き先の風景が見えるところに乗って、カウントダウンの数字を見ながら「あと〇秒我慢すれば解放される」って気を紛らわしているうちに、次の駅のホームが遠くに見えてきます。すると「やった!最悪あのホームに降りることができる」とホッとできますよ。飛行機の場合は、僕は搭乗の20分前に睡眠導入剤を飲んでいます。ただ、遊園地の観覧車だけは、どうやっても無理ですね。ゆっくりですし、降りられないですから(笑)。
パニック障害との付き合いが長いだけあって、対処法を的確に理解している日さん(撮影/今井康一)
──日常生活にもいろいろと制限があって大変ですよね。
うーん、そうですね。たとえば数年前、大好きなサザンオールスターズのツアーを映画館で観られるライブ・ビューイングがあったんです。当選したチケットが映画館の真ん中辺りの席で、それでもせっかくの機会だからと会場入りしましたが、最後まで耐えきれず、一番大好きな曲のときに離脱してしまいました。
──やはり具合が悪くなってしまったのでしょうか?
待ちに待ったライブだったのに、いざ始まったらどうしても「どうすればこの2時間が早く終わるのだろう」っていう不安な気持ちのほうが勝り、発作が起こりそうになってしまったんです。
あと、今でも覚えているのは、20年ほど前、高円寺の行きつけの美容院でシャンプー中にリタイアしたこと。急な発作が押し寄せてきて、髪が泡立った状態のまま「もう帰ります」って席を立ってお会計をして。髪の毛の泡も流し切っていない状態で、自転車を飛ばして無我夢中で帰りました。通りすがりの人から、「高円寺っていろんな人が住んでいるんだね」って言葉が聞こえてきました(笑)。
そういう経験をした日は、「普通の人が難なくできていることが、なぜ自分にはできないんだろう」と切なくなりますね。
──そのもどかしさを消化するのは簡単なことではないですよね。
自己肯定感も下がってしまいますしね。この部分は長年、病気と付き合ってきても、まだ克服できていないというか、受け入れ切れていません。僕の人生では、病気を患っている期間のほうが長くなってしまいました。とにかく元気になって「もっとできるはずの仕事を楽しくやりたい!」という気持ちを抱えながら生活しています。
ただ、パニック障害という病気について世間の人たちにもっと知ってもらいたいので、自分の知名度がもう少し高くなったらいいなという気持ちはあります。今後はクイズ関連以外に、メンタルヘルスを知っていただくための講演活動も行っていきたいですね。その際に「日さんが適任だ」って思ってもらえたり、僕の言葉で救われる人がいてくれたりしたら何より嬉しい。ですから、そのための努力や発信は怠らないようにしていきたいですね。
明るく受け答えしてくれたが、つらくて悔しい経験もたくさんされてきたのだろう(撮影/今井康一)
──日さんは最初に発症したとき、前触れもなく突然、症状が現れたのですよね。もし心身の不調を感じた場合、まずはどうすればいいのでしょうか? 心療内科を受診するのにも、最初は壁を感じる人もいるのではないかと……。
特に最初はそう感じますよね。でも、動悸やめまい、発汗にたびたび襲われるなど、体に不調を感じたら、まずは内科などで身体面に異常がないかを検査することが先決です。そこで原因がわからなかったときに、勇気を出して心療内科の先生に相談する、という順番ですね。
心療内科で診てもらうことになった場合は、「自分に合う先生を見つける」ということがすごく大事だと思います。先生によって話し方やトーン、治療の方針はさまざまです。ご自身と「相性」の合う先生を見つけられると、通院の不安も軽減されます。
だから場合によっては2、3の病院にかかってみる利点もあると思います。僕がパニック障害になったのは1997年ですが、上京や引越しのたびに病院を変えてきました。相性の合う先生、話しやすい先生に診てもらうと、ちょっとした疑問や不安もぶつけることができて安心につながりますよ。僕は何十年も病気と付き合ううちに薬や症状に詳しくなりすぎて、新しくかかる先生に驚かれたりもしましたが(笑)。
──発作が起きないように日さんが気をつけていることはありますか?
薬を持っておくのは大前提ですが、あとは自分にとって“これがあれば安心”というものを常に持っておくこと。僕の場合は、フリスクやミンティアのミントタブレットが、お守り代わりになっています。ミントは心を落ち着かせる作用があると聞いて、口に含むと心が落ち着く、と思い込むようにしています。
あと僕は、枕元に冷蔵庫を置いて冷たいお水を常備していますし、家のいろんな場所、お手洗いや台所、玄関などに、好きな香りのついたハンカチを置いて、安心材料にしています。外出時にも携帯すると落ち着きますね。
「ライナスの毛布」(安心毛布)という心理用語がありますが、人はお気に入りのものや愛着あるものを肌身離さず持っていると、やはりホッとできるようです。だから自分にとってそれが何かを理解して、いつも携帯することはいい手だと思いますね。YouTubeやミュージックアプリなどで好みのヒーリングミュージックや波の音、焚き火の音などを探して、自分に合うものを探すのも役立ちますよ。
──パニック障害に関する書籍などは読んだりされますか?
はい。周りで見守る方々や、病気の概要を知りたい方々は、精神科の先生が書かれた分かりやすい本などを読まれるといいかと思います。ただ、当事者が気持ちを落ち着かせるという面では、精神科の先生などが書かれた本よりも、タレントさんなど実際の体験談が記された本や記事を読むことを個人的におすすめします。
実際にうつ病やパニック障害になった方の話を読むと、自分と似た症状や実践的な対処法が書かれていて、すごく安心できるんです。
僕の場合は、棋士の先崎学さんが書かれた『うつ病九段』(文藝春秋)という本に救われました。あとは、『酒井若菜と8人の男たち』(キノブックス)という対談本のなかで、ナインティナインの岡村隆史さんとの対談で病気について語っていた章があって。自分と重ね合わせて読んだのですが、ダーっと涙が溢れてきましたね。壮絶な日々だったのだろうなと想像しました。
同時に「苦しいのは自分だけではないんだな」と、光が差したような、勇気づけられる思いがしました。
──昨今では、著名人の方でパニック障害やうつ病などをカミングアウトされる方も増えてきました。ただ、以前よりメジャーな病名となってきたわりには、実際に患っている人に対してどのように接すればいいのか、周知されていないように感じます。
そうですよね。まずは当事者側から、職場や学校、家庭など各コミュニティにおいて信頼できる人に、“自分は症状が出たらこうなります”とあらかじめ伝えておくことが大事です。周囲の人は患者さんのパニック発作が急に出たら驚いてしまうでしょうから、例えば“薬を飲めば元に戻るし、死ぬ病気ではないので”と伝えておけば、慌てず見守ってくれるはずです。
それから、発作中にどんな対応をとってほしいのかは、なるべく具体的に伝えてください。一緒にいて背中や肩を軽くさすってほしいとか、呼吸が整うまで「大丈夫だよ」と言ってほしいとか、僕のように一旦放っておいてほしいとか。
僕は周囲に自分のタイプを伝えているので、例えば職場で体調が悪くなったときは「ちょっと外気を吸ってきます」と出ていって、「はーい、いつでも帰っておいでー」と軽く受け止めていただけることが多いです。そうすると事前に安心できますし、感謝の気持ちでいっぱいになりますね。
──とにかくパニック障害の症状は、人によってケースバイケースなのですね。
だから事前の周知が大切ですし、当事者は、もし症状が続いて自分がしばらく動けなくなっても、授業や業務、家事などが滞りなく進むような状況を前もって作っておくことも大事です。僕は、病気によって職場などに迷惑をかけないようにという点においては、特に細心の注意を払ってきました。
無理はしすぎず、責任を持って完遂できる範囲のみ請け負って全力を注ぐ。そのうえで、発作が起きてしまったときのことを考え、もしものための代役の方を立てておいたり、共有できる資料を作っておいたりするとベターではないでしょうか。そこまでできたら、あとは周りの人の力を借りながら、思い切り甘えてしまいましょう。
──もし、駅などで具合が悪そうな人を見かけたり、自分の周りでパニック障害のような症状が出ている人がいた場合、どのような対応をとるのがいいのでしょうか。
人によって症状やしてほしいことが異なるので、様子見が必要ではあります。一歩目の対応としては、お水が必要か聞いてみるのがいいかもしれません。必要であればその場で待てるか確認して買いに行けば、その間に次はどうしようかと考えられるし、発作が起きた人もひと息つけます。そのあとも、「ついていようか?」「一人のほうが楽かな?」など、二者択一の質問を投げかけると、相手も答えやすいでしょう。
本当はカバンなどに付ける「ヘルプマーク」ってそのためのものなんですよね。中に紙が入っていて、どのような対応が必要かを記しておくためのマークなんです。でもそういう情報って、なかなか知られていないですよね。僕も最近知りました(笑)。その辺りの周知も進んでいくといいな、と。
はじめての場合は難しいかもしれませんが、つかず離れずの距離感で、なるべく相手が気を遣わないで済むような声かけをしつつ、ベストな方策を見つけてあげる。これができると、相手はだいぶ救われると思います。
まさに「経験者は語る」。具体的なアドバイスが多く、すぐに実践できそうだ(撮影/今井康一)
──反対に、パニック障害の人にしてはいけないことはありますか?
よくないのは、「気の持ちようだよ」とか「誰でも緊張することはあるんだから」などと軽々しく言ってしまうこと。もちろん、相手がパニック障害なのかどうかを見極めたうえでという前提があるのですが、当人は気持ちの面だけではどうしようもできないから、苦しんでいるわけなので。否定せず、寄り添う姿勢を見せてあげてほしいです。
──日さん自身は、パニック障害に対する周囲からの言動で、ショックだったエピソードはありますか?
僕はパニック障害のほかにうつ病なども併発したとお伝えしましたが、それでも調子がよければカメラの前に立つと元気にやれるし、人前に出る仕事ができてしまいます。だから勘違いをされやすいのか、具合が悪くなっちゃった際に、「ただ休みたいだけでは?」とか、「いつよくなるの?」などの言葉を受けたこともありました。相手は悪気はなく、冗談から出た言葉なんだと思いますけどね。
ただ、こちらの患者側も、病気であることを振りかざしてはいけないと思います。要は、お互いの思いやりですね。
最後に、この記事を読んでくださった、この病気などの当事者の方々には、この一言を伝えたいです。
「本当によく頑張ってきましたね。闘病することはとても難しいことです。それだけでも、あなたはすごいんですよ。僕も含めて(笑)。お互い、ゆっくり治しましょう」
「目に見えない病気」だと、やはり周囲の理解を得にくいですし、互いに対応が難しい部分もあると思います。だからこそ、こうして当事者の経験や思いを伝えることで、世間の見方が少しでもいい方向に変わったり、同じように悩む人の励みになってくれたらいいなと、心から思っています。
*【あわせて読みたい】→クイズ作家・日大介(47) ≪パニック障害≫でセンター試験は途中帰宅し、仕事も次々降板…“ライオン16頭に囲まれているような恐怖”を語る
(池守りぜね : ライター・編集者)

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