PTAの運動会お手伝い…我が子見られず本末転倒と不満も “外注”したらどうなったか

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「理不尽だ」と親たちが苦しむこともあるPTAの活動を、お金を払ってプロにお願いする「外注」が話題になっている。大手旅行会社などが参入しているが、「運動会の手伝い」を外注したPTAを取材した。
2022年の秋は運動会も徐々に正常化し、我が子の勇姿を見届けたいとカメラを手にした親も必死だが…。
PTAで運動会を手伝いの係になると、けっこう大変だ。学校によって異なるが、PTAの競技があるところもあるほか、テントの設営や参観に来る保護者の受付、学校周辺の不審者の見回りなどを担当することが多いという。
先生たちは、子供たちの競技の運営で忙しく、PTAの人手が欠かせないのはわかる気もするが…。
<SNSの投稿>「来賓へのお茶出しで、我が子が頑張ってる姿が見られない」「役員が勝手に割り振り決めやがった」「PTAがやらないと運動会が出来ないなら、やらなくていいです」
SNSには、来賓のお茶出しまでしなくてはならず、「自分の子供が見られないなんて本末転倒」など、不満の声もあるようだ。
東京都目黒区の不動小学校のPTAは、運動会の手伝いのやり方を変えた。
運動会の会場では、校庭に向かう保護者の列をオレンジのベストを着た人が誘導していた。PTAが依頼した人材派遣会社のスタッフだ。
この小学校では、例年こうした誘導はPTAの担当だったが…。
不動小学校のPTA会長:保護者の方の声としてありましたのが、(PTAの)役を持っていると落ち着いて見られないですとか…
1年に一度の晴れ舞台、1日を子供の応援やだんらんに使いたい、という声があった。
また、2022年はコロナ対策で、学年ごとに時間を区切って観戦に来る保護者を入れ替えることになり、誘導係のシフト調整が困難に。そこで思い切って「外注」を決めたという。
派遣されたスタッフは、保護者の年代にも近い女性5人。朝8時から午後2時までの稼働で、費用約7万円はPTA会費から支出している。
以前、複数の保護者が1か所を交代しながら担当していたときには、引継ぎによる混乱もあったというが、今回はプロが1日通しで担当。誘導はスムーズだ。
母親A:子供たちの姿をしっかり最初から最後まで見ることができるのは、家族としてはすごくいいなと思いますね
(Q.手伝いしたことは?)母親B:(運動会でPTA活動したことが)あります
(Q.どんなことをやられました?)母親B:同じようなこと(誘導)とか、広報もやっていたので写真撮るとか…。楽しいは楽しいんですけど、やっぱり集中できない
母親C:不公平感がなくなるんだったら、いいんじゃないかと思います。実際に、先生だけでやるのは大変だろうなとは確かに思うので
運動会のあとに実施したアンケートでは、約9割の保護者が今回の外注を「よかった」と回答した。
「子供に集中できた」といった評価のほか、「働いているとPTAに協力したくてもできないことが多く、負担が平等になってありがたい」などの意見が出た。
不動小学校のPTA会長:共働きのご家庭も増えておりますし、従来どおりのPTA活動で保護者の時間を長く協力いただく形って徐々に難しくなっていると実感としてありまして。「お手伝いしたい人がいるんじゃないか」ですとか、「(外注すると)交流が薄まってしまう」というお話ももちろんあるんですけど、まずやってみないことには進まないかなと
不動小のPTAが利用したのは、PTAと外注先をマッチングする「PTA’S(ピータス)」というサイト。2020年に運営を始め、広報誌などのデザイン・印刷から議事録の作成代行など、幅広く対応している。
運動会などの行事の手伝いでは、防犯効果を期待して警備会社に外注することもできるという。
中にはこんな「外注」の例もあった。
PTA’Sの代表:教室のカーテンをクリーニング屋さんにお願いしたいんですと…。いままでは(学期末に)保護者が持って帰って洗っていたんだけど、とてもじゃないけどあんな大きなものを干すところがないし、やりきれないのでクリーニング屋さんにお願いしたいというご依頼を
PTA’Sの代表:本当に多岐にわたることを日本中のPTAがされていて、保護者じゃなくてもいいよねとか、むしろそれをプロにお願いしたほうが結果、質が良かったりとか、安定してできると思うことはたくさんあるわけです
PTAの外注サービスには2022年8月、旅行大手の近畿日本ツーリストも参入し、大きな話題となった。
担い手不足のPTAの救世主とも言えそうな「外注」サービス。しかし、PTAは本来「ボランティア」のはず。安易に外注に頼ることには問題があるという意見もある。
PTA問題に詳しい大塚玲子さん:(PTAに)一回、業者が入ってビジネスとしてそれを始めてしまったら、それって拡大していく方向になっていくじゃないですか。余計にその活動が本当に必要なものかどうか、という方向に頭が向かなくなっちゃう
PTAの問題の取材を続けるライターの大塚さんは、本当にその活動が必要なのか、立ち止まって考えてみるべきだと話す。
大塚玲子さん:みんな本当に去年通りにやらないといけないと思い込んでいる。やめられるわけない、だから代行に頼むのがいいんじゃない。いやいや本当に必要なんだと言うんだったら、みんながそう思っているなら、多分その活動は公費でやるべきものなんですね。税金までつかないけどやったほうがいいって、本当にみんなが思うような活動なら、ある程度手が上がると思うんですよ。それがまったく出てこないというんだったら、その活動がどうしても必要というのは、もしかしたら勘違いかもしれないですよと
(東海テレビ)

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