「参政党支持者で高学歴の方いるの?」と批判する人もいるが…「極右」「非現実的」と全方位から批判も、バラマキ&現金給付の“無策”石破政権とどちらがマシか?

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参議院選挙での躍進が注目される参政党だが、確かにその公約には理解しがたい点も多い。SNSでは東京都港区議会議員の新藤加菜氏が「参政党支持者で高学歴の方って、いらっしゃるのでしょうか?少なくとも私の見ている範囲では見かけたことがありません」などという発言をし、注目を集めた。しかしその一方で現在の石破政権は、具体的な成長戦略を示すことなく、場当たり的な補助金や現金給付に終始し、既存の利権構造に囚われている。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が、この機能不全に陥った自民党政権と比較し、さまざま矛盾や疑問を抱える参政党について分析する。
【画像】参政党「謎の新人」さや氏の街頭演説
参院選で躍進するのではないかと報じられている参政党は「極右」や「非現実的」といった批判を右から左まで全方位から浴びている。確かに、参政党の主張には、一見して理解しがたいものがある事実は否定できない。
例えば、ネットで「メロンパン一個食べて翌日に死んだ人はたくさん見てます」などという元幹部の過去発言が物議を呼んだが、多くの有権者が戸惑いや警戒心を抱くのも無理からぬことである。今回は参政党の躍進をどう考えるべきかについて述べたい。
そもそも今回の国政選挙は、本格的な政権選択の機会ではない。石破政権に対する国民の信任を問う投票という性格が極めて強い。選挙結果がどうであれ、衆議院における与野党の基本的な議席構図は大きく変動しない。
約3年前、安倍晋三元首相が暗殺されるという衝撃的な事件があった。弔い選挙的な雰囲気が支配する中、自民党と公明党は歴史的な大勝を収めた。今回の選挙における最大の焦点は、この水増しされた議席を含めて、国民が石破政権の現状に明確な不信任を突きつけるかどうかにかかっている。
現在の石破政権では、日本経済の長期にわたる閉塞感を打ち破るための具体的な成長戦略は全く示されていない。政府は歳出削減(ムダ遣いを減らすこと)には手を付けず、国民の可処分所得を恒久的に増やす抜本的な減税も実施しない。
政府の経済対策は、場当たり的な補助金と国民をバカにしたような現金給付に終始しているのが実情である。一時的な現金給付が、日本経済の構造を変え、持続的な成長軌道に乗せるための根本的な処方箋にはなり得ない。
自民党は政策決定の過程で、各種業界団体を集めてヒアリングを実施する。国民の幅広い意見を聞いたという形式を整えるためである。
ヒアリングの場で業界団体から噴出する要望は、決まって自らの業界への補助金の増額や、新規参入を妨げ、競争を制限するための規制強化である。経済学でレントシーキングと呼ばれる利権追求活動が、日本の生産性向上とイノベーションの最大の足かせとなっているのだ。
自民党は、日本経済の将来的な活力よりも、目の前にある団体の要望を聞いて対策を立てるところで仕事が終わると信じているらしい。少子化対策も、地方創生も、予算をつけただけ。成果は何一つ出ていない。
もし、経済成長を半ば放棄するのであれば、政党としての基本理念に立ち返るべきである。自民党の公式な綱領には「自主憲法の制定」が明確に掲げられている。
憲法改正は、1955年の結党以来、片時も揺らぐことのなかった党是であったはずだ。自民党は憲法改正を重要な政治課題としつつも、具体的な行動を全く起こさなかった。
石破首相のこれまでの言動と現在の態度は、この自民党の現状を象徴している。石破氏は権力の中枢にいない時期、時の政権や他者の政策、あるいは言動を執拗に批判し続けた。
だが首相の座に就いた途端、何ら具体的な政策を打ち出せず、重要な課題に対して行動を起こす気配すらない。政策実行の遅れや停滞を、野党の協力不足など他者のせいにする姿勢は全く変わらない。国民にとって魅力のない政策しか打ち出せない政治家としての無能さを露呈しているだけである。
かつて小泉進次郎氏が発言した、「自民党は他の党よりマシ」という言葉が、自民党自身の自己評価の低さと、政策立案能力の欠如を雄弁に物語っている。
農業分野においても、自民党の無策ぶりと現状維持への固執は顕著である。補助金をただばらまくだけで、その国の農業が力強く発展したという成功事例は、世界のどこを探しても存在しない。
日本政府は、効果の疑わしい補助金と時代遅れの規制強化に終始している。現実に農業が大きく発展した国は、例外なく市場における競争原理を大胆に導入し、生産性の向上を促してきた。
日本の農業にも、本来は大きな可能性がある。一部の意欲あるイチゴ農家は、極めて高品質な果物を上海など海外の富裕層に向けて輸出し、大きな利益を上げている。
北海道のホタテ漁業協同組合は、中国政府による理不尽な禁輸措置という逆境を乗り越え、アメリカや東南アジアに新たな市場を開拓して成功を収めた。
農林水産省が公表する農林水産物・食品の輸出実績データは、和牛や日本酒、高品質な果物といった品目が、海外で高く評価され、輸出額を伸ばしている事実を示している。
これらの成功事例の多くは、政府の補助金に依存することなく、生産者自らの知恵と努力によって新たな市場を開拓した結果である。
政府・自民党が米だけを過剰に保護し続ける政策は、日本の農家が持つ本来の可能性を信じていない証左に他ならない。
補助金を手厚く与えておけば、自民党の重要な地方の支持基盤である農業協同組合(JA)から政治的な文句は出ない。自民党の農業政策は、日本の農業の未来や食料安全保障ではなく、自らの政治的利益を維持するためだけに存在している。
参政党が掲げる政策には、確かに論理的におかしい点や、非科学的と指摘されても仕方のない主張が散見される。アメリカのトランプ大統領が、不法移民の排斥を声高に叫びながら、自身の支持基盤でもある農業分野での移民労働力の活用を容認するように、一見して矛盾した政策を抱える政党は世界中に存在する。
イギリスで既存の二大政党を脅かすほど支持率を伸ばしているリフォームUKも、厳しい移民政策を公約の中心に掲げつつ、医療などを支えるエッセンシャルワーカーとしての外国人は受け入れるという、柔軟とも矛盾とも取れる姿勢を見せる。
既存政党が拾いきれなかった国民の多様な不満や日々の要求を真正面から吸い上げようとすれば、政策全体として多少の矛盾や非一貫性が生じるのは、ある意味で避けられないのかもしれない。
むしろ、何の明確な主張もなく、官僚が作成した当たり障りのない矛盾のない文書をただ読み上げるだけの自民党の政治家のほうが、国民にとっては不気味な存在ともいえる。
参政党は「DIY政党」を標榜し、一般の党員が政策立案に直接関与できる仕組みを導入している。少なくとも国民の声を直接政治に反映させようとするその姿勢は、評価されるべき点でだろう。
対照的に、自民党の政策決定は、党の政務調査会傘下にある各部会で、特定の業界の利益を代弁する族議員と、関連省庁の官僚、そして業界団体の代表者が密室で利害を調整する旧来のプロセスに、今なお大きく依存している。
そこで最優先されるのは、国民全体の利益ではなく、特定の業界や組織の個別利益である。改革案に含まれる矛盾や対立点は、この調整過程で骨抜きにされ、抜本的な改革は常に先送りされる。一見、矛盾がないような自民党の政策とは、こうした不透明な利害調整と政治的妥協の産物に過ぎない。
自民党の陳腐化した体質は、自らの綱領が持つ極端な分かりにくさにも端的に表れている。日本国憲法の条文は分かりにくいと声高に批判しながら、自らの基本理念を示すはずの綱領は、それ以上に抽象的な言葉が並び、現代の国民に何を伝えたいのか全く理解できない。
国の根幹である社会保障制度も、すでに持続可能性を失っている。厚生労働省が5年ごとに行う公的年金の財政検証は、将来の年金給付水準が、現役世代の所得に対して着実に低下していく暗い未来を明確に示している。
マクロ経済スライドという難解な名前の仕組みは、高齢化の進展に合わせて年金の給付額の伸びを抑制する、実質的な給付カットに他ならない。制度そのものを破綻させないための延命措置である。
その負担は、将来世代、つまり現在の現役世代へと一方的に先送りされている。70歳、80歳になっても働き続けろと言われ、その一方で、若い頃に約束されたはずの社会保障は大幅に削減されているという未来が、多くの現役世代を待ち受けている。
自民党政権は、こうした社会の根本的な問題から目をそらし、小手先の対策でお茶を濁し、ごまかしを続けている。参政党の政策の是非を一つ一つ詳細に議論する前に、まず統治能力を失い、機能不全に陥った自民党政権をどうにかすることこそ、停滞する日本社会を前に進めるために必要不可欠である。
参政党から当選する議員は、今後、国民からの厳しい批判と検証に絶えず晒されるだろう。その批判に耐えられない未熟な政策は潔く変え、国民の支持を得られる政策はさらに磨き上げていけばよい。
変化に対応できる柔軟性こそ、既存政党にはない新しい政党の強みになり得る。
明確な国家ビジョンも、具体的な政策も、改革への意欲も失い、ただ現状を維持することだけに汲々とする自民党が政権の座に居座り続けるより、たとえ多くの矛盾や未熟さを抱えながらも、国民の声と真剣に向き合おうとする新しい勢力が議席を伸ばす方が、日本の未来にとって100倍マシであることは間違いない。
(文/小倉健一)

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