【中村 清志】ココイチに「過去最大級の客離れ」が起きていた…!《カレー1200円》がもたらした「あまりに重すぎる代償」

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カレーチェーン最大手「カレーハウスCoCo壱番屋」、通称ココイチがかつてない苦境を迎えている。国内で最も多い1206店舗(’25年6月時点)を誇る同店だが、深刻な“客離れ”が明らかになったのだ。
運営会社の壱番屋が7月7日に発表した’25年6月度月次情報によれば、直近6月の既存店の客数は前年と比べて11.4%減と大きく落ち込んだ。これは’24年9月から10ヵ月連続での前年比マイナスとなるが、二ケタのマイナスは今回が初。また既存店売上高に関しても2.6%減、全店ベースでも1.9%減と前年割れとなっている。
気がかりなのは、これだけ客数が減少しているにもかかわらず、客単価は10%増と相変わらずの上昇を見せている。相次ぐ値上げと客離れ――この負のスパイラルから、ココイチが抜け出せる日はくるのだろうか? 同店の状況を分析しつつ、気になる今後を展望していく。
帝国データバンクによると「カレーライス物価」は1食421円(2025年3月)と、12ヵ月連続で過去最高値を更新した。家庭料理の代表である国民食のカレー。しかし、これだけ米や肉、野菜、そして水道光熱費まで高騰すれば、家庭でカレーをつくるハードルも上がるのは致し方ない。
そういった中、そのカレーを専門として多店舗展開するカレーハウスCoCo壱番屋(以下、ココイチ)も、かつてない経営環境への対応に苦慮している。
ココイチはカレーチェーン市場では他社に圧倒的な差をつけて、長きにわたり首位の座に君臨し続けるいわば“カレー界の王者”。「値上げで昔よりずいぶん高くなったな」と実感しながらも、「やっぱりココイチのカレーが一番だ」というコアユーザーはいまだ多く、ブランドロイヤリティも高い。
ただ、大概の顧客はカレーだけでは物足りず、トッピングやサラダを追加するのがココイチというもの。今や同店の平均客単価は1208円まで上昇している。
その結果、もはやココイチは「行きたくても気軽に行けない店」にすらなっており、客数の減少が続いている。客単価の上昇で、その時の売り上げは向上する。しかし、このまま再来店の頻度が低下していけば、ココイチの将来は不安でしかない。
ココイチは近年の物価高騰に対応すべく、これまで度々値上げを実施してきた。この3年間で見ると、ベースカレーの価格を’22年6月に5.9%(+33円)、さらに同年12月に7.4%(+44円)引き上げた。
ただ、この時点では客単価・客数指数を見る限り、値上げによる客単価の上昇に対し客数の影響はあまりなく、乖離幅も軽微だった。潮目が大きく変わったのはちょうど1年前にあたる’24年8月のことだ。
この時、ココイチは10.5%(+43~76円)もの値上げに踏み切っている。あまりの上げ幅の大きさに客離れが加速。’25年2月期の下期累計(’24年9月~’25年2月)の前年比で客数はマイナス5.2%まで下振れた。
この影響は今なお続いている。’25年3~5月も客数の前年割れが続き、そして最新の6月には冒頭で示した通り、前年比11.4%減まで達したのだ。この状態は今後も続きそうで、経営上、最も肝心な顧客基盤の脆弱化が懸念される。
もちろん、ココイチも深刻な客離れを前にして、ただ手をこまねいていたわけではない。
前年8月の値上げ後に大きく下落した配達代行の再生策として、UberEatsキャンペーンの実施や、テレビCMの積極投入で幅広い顧客層へアプローチするなどマーケティング活動を強化したきたのである。ただ、それでも客数の減少に歯止めはきいてこないのが実情だ。
今年6月からも、アプリ会員にスクラッチキャンペーンを開催。外れなしのトッピング無料クーポンを配信しているが、これが功を奏するかはまだ分からない。
ココイチを事業別で見てみると、2026年2月期第1四半期(’25年年3月~5月)の決算資料によれば、国内事業の売上(直営店とFC店)は、全店ベースで224億900万円と前年同期比+4.0%。既存店ベースでも同+3.6%であり、客離れのなか、何とか踏ん張っているように思える。
一転、海外事業は伸び悩んでいるのが現状だ。全店ベースの売上で44億1800万円(前年同期比1.8%減)となり、為替の影響を除いた既存店ベースでもイギリスは好調に推移したものの、それでも同1.8%減となった。
特に厳しいのが中国だ。最近、回転寿司チェーン大手「くら寿司」が中国市場での完全撤退が話題となったが、ココイチも近しい状況に置かれている。
出退店の状況を見ると、たとえば同じアジア圏である韓国は出店8店舗、退店8店舗と増減なしだが、中国は出店1店舗、退店7店舗で6店舗も減らしている形だ。背景には、不動産不況による不景気があるようで、単価の高いカレーでは集客が難しそうである。
5月にグアム1号店をオープンするなど、他の海外市場の開拓も積極的に推し進めているココイチだが、巨大マーケットである中国市場での苦戦は計算外だったかもしれない。
国民食であるカレーという、飲食における絶対的な市場の中で、脅威となるライバルも存在せず、先駆者として先発企業の利益を独占してきたココイチ。1974年の創業からすでに半世紀が過ぎ、ココイチのカレーで育ってきたコアファンは多い。それゆえに、客離れは深刻な問題と言える。
ただ、それでも首位の座を維持することを可能としてきた“原動力”が失われたわけではない。飽きが来ない、頻繁に食べれる味にして、選べる辛さや豊富なトッピングを用意し、顧客の好みでオリジナルカレーを作れる。その楽しさは今も昔も変わらない。
また、店舗の構築力も他チェーンの追随を許さぬ見事なものだ。店舗の約9割がFCであり、他人資源を活用して低コストでの勢力拡大を実現している。
ココイチのFCは一般のFCとは違い、独立志向の人に最適な「ブルームシステム」だ。この制度は将来、ココイチのオーナーになる事を前提に、店舗運営のノウハウを正社員として徹底的に教え、本部と加盟店が経営理念共同体として強固な関係を構築するというもの。だから一般のFCと比べて“絆”が強いと言われる。
ゆえに客数の減少で運営基盤が揺らいでいるとはいえ、この逆境を跳ね返す力がココイチにはまだある、と筆者は考えている。今後も動向に注視していきたい。
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