参院議員選挙の選挙戦が本格化する中、比例投票先で野党トップに立つなど、参政党が急激に支持を集めている。しかし、神谷宗幣(そうへい)代表(47)の言動には危ういものが少なくない――。
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【レア写真】可愛らしい小学生時代! 神谷宗幣代表の「卒アル写真」
参院議員選挙が公示された7月3日、東京・銀座で第一声のマイクを握った参政党の神谷代表は、
「子どもを産めるのも若い女性しかいないわけですよね。これを言うと差別だという人がいますけど、違います。現実です。男性や、申し訳ないけど高齢の女性は子どもが産めない」
と、発言。これが女性に配慮を欠く発言だとメディアが取り上げて各方面から批判を招く事態となった。
政治部デスクが言う。
「参政党は帰化・永住権の要件の厳格化を含む、日本人ファーストや減税を掲げて支持を伸ばしています。ほかにも、学校給食の有機食材使用義務化をうたっており、子育て世代にもアピールしています」
現在、参政党は神谷代表が参院で1議席を有するだけだが、
「全国比例で6議席に届く勢いがあり、東京選挙区で1議席獲得する見込みです。大阪や神奈川など、定数4の複数区でも議席を争っています」(同)
先週末に共同通信が実施した調査では、比例投票先で参政党が8.1%と、国民民主党の6.8%や立憲民主党の6.6%をしのいだ。有権者は神谷代表の件の発言など意に介していないようだ。
しかし、その神谷代表には、著作などで陰謀論らしき言説を主張していた過去がある。
以下は神谷代表の編著『参政党Q&Aブック基礎編』からの抜粋である。
〈Q27 参政党のメンバーが言う「あの勢力」とは何でしょうか?
A ユダヤ系の国際金融資本を中心とする複数の組織の総称です。(中略)日本は「あの勢力」に数百年前から標的にされ続けてきました。私たちが歴史で学んだ出来事の多くの背後には「あの勢力」が存在していたのです〉
神谷代表は変革者を装った陰謀論者なのだろうか――。その原点ともいえるのが、大学4年で1年間休学して臨んだ、カナダでの短期語学留学と世界各地でのバックパッカー生活だ。自身の著書『日本のスイッチを入れる』でも以下のように記している。
〈カナダ、アメリカで今までの生き方に疑問を抱き、ヨーロッパでその疑問が正しかったことに気が付き、北アフリカで世界の現実を知りました。そして心から日本人に生まれてよかったと思えるようになり、両親を筆頭に自分がお世話になった方々への感謝、日本という国への感謝の思いが持てるようになりました〉
ここにすでに、参政党のキャッチフレーズ「日本人ファースト」の萌芽が見られよう。帰国後には、周囲の友人に〈生き方や考え方を変えないと〉と訴えて回っていたというのである。
ほどなく〈メッセージを発するには社会的な立場を確立せねば〉との考えに至り、政治家を目指すと決意。2007年4月に大阪の吹田市議選に29歳の若さで当選した。
その後は12年に吹田市議の2期目の途中で辞職し、自民党公認で大阪13区から出馬するも落選。ネットでの活動に活路を見いだし、「株式会社グランドストラテジー」を設立(後に「イシキカイカク株式会社」に社名変更)して保守系言論人との対談などの動画コンテンツを配信するほか、自己啓発セミナーを運営するなどの活動を続けた。
そんな雌伏の期間を経て、彼は参政党の母体であるYouTubeチャンネル「政党DIY」を、保守系ユーチューバーのKAZUYA氏(37)、政治アナリストの渡瀬裕哉氏(43)らと立ち上げると、彼らのほか松田学元衆議院議員(67)らがボードメンバーとなり、20年4月に参政党が結党された。
ところが、ここで問題が発生したという。創設時を知る元党幹部が語る。
「神谷さんは参政党とは別に『イシキカイカクセミナー』を主宰していたのですが、講師の中にはスピリチュアル系の思想に染まった講師がたくさんいました。その受講生が参政党に流れてきたので、当然、危うい考えを持つ党員が蔓延(はびこ)る状況になったのです」
別の元党員は、神谷代表自身が陰謀論に染まり切っていると言う。
「神谷さんは内輪の勉強会で“歴史の真実”を語るのですが、それは“明治維新の裏には国際金融資本がいた”などという陰謀史観そのものでした」
21年にKAZUYA氏、渡瀬氏らが抜けて、代わりにコアメンバーとなったのが元中部大学特任教授の武田邦彦氏(82)や医療問題アナリストで歯科医師の吉野敏明氏(57)=現在日本誠真会党首=、右翼活動家の故・赤尾敏の姪、赤尾由美氏(60)だった。彼ら三人と神谷氏と松田氏の五人は、党内で“ゴレンジャー”と称された。
「“ゴレンジャー”が活動した時期はコロナ禍と重なります。武田氏や吉野氏らが反ワクチン的な主張を展開し、それが政府のコロナ対策に不満を抱える有権者に刺さりました。22年7月の参院選で、神谷代表が比例で議席を得る原動力になったのです」(前出のデスク)
しかし、神谷代表は側近との人間関係が長続きしないようだ。23年、赤尾氏と吉野氏が相次いで離党。武田氏は除籍処分となった。
吉野氏が言う。
「神谷さんは、参議院議員に当選してから独裁者に変わりました。松田さんを初代代表の座から引きずり下ろし、私が神谷さんにワクチンの問題点を助言したのに、コロナ禍が去ったら利用価値がないからか、私も排除した。彼のワクチンに関する発言は、以前とは180度変わっています」
武田氏にも話を聞いた。
「神谷さんは街頭演説などで“参政党は愛人OK”なんて言っていますし、今の参政党はまともじゃないですよ」
神谷代表に“愛人OK”発言について尋ねると、
「当該演説での発言は、過去に失敗や問題を抱えたとしても、それを克服し、能力があれば再び活躍の場を得るべきだという趣旨を、例示的に表現したもの」
と、書面で回答。また、陰謀史観については、
「『あの勢力』は、グローバリストのことで『国際金融資本』等ですが、『あの勢力』との言い方が良く伝わらなかった」
神谷代表と参政党の危うい実像。7月20日の投開票では、どんな審判が下るだろうか。
「週刊新潮」2025年7月17日号 掲載