大バカ野郎!年収400万円の53歳会社員父、東京私大に通う息子が“大企業・就職内定”で大喜び→半年後、号泣する息子から電話が…。「まさかのひと言」に大激怒【FPが解説】

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大学生活は、学業に励み、友人との交流を深め、将来への準備を進める貴重な期間です。しかし、本来の目的から外れてしまうと、学生本人だけでなく、家計を支える保護者にとっても頭の痛い問題が起こり得ます。本記事ではAさんの事例とともに、我が子の大学進学で起こり得るトラブルについて、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
地方に住む53歳のAさんの一人息子は都内でも有名な私立大学の4年生でした。自宅からはとても通えないため、大学の学生寮に入寮していました。私立大学への入学ということで、学費も大変ですが、離れて暮らすため、さらに仕送りも必要です。
さて、Aさんの息子が大学に入学したのは2020年度です。そう、あの新型コロナウイルスが拡大しはじめたタイミング。入試自体は例年どおり実施されましたが、入学式は中止、授業はほぼ全面的にオンラインと、上京の時期も大幅にずれ込みました。Aさんの息子は、入学から半年遅れで上京したため、大学に初めて登校したのも秋学期でした。
上京しても外出できず、Aさんの息子は憧れの東京生活を楽しむことなどできません。アルバイト先もなかなか見つからず、朝は苦手なのにやむなく早朝の新聞配達を始めました。
業務用食品卸業の会社に勤務するAさんも仕事に影響が出ていました。緊急事態宣言などでホテルやレストラン、居酒屋などあらゆる取引先での取引が縮小し、会社は大赤字となっていきます。それでも倒産はまぬがれ、幸いにもAさんは職を失うことはありませんでしたが、息子の大学在学中は年収が400万円台まで激減。両親から借金するなどしてなんとか4年生まで通わせることができました。
息子は、3年生になった2022年度には早朝の新聞配達を辞め、営業再開して時給も上昇してきた居酒屋でのアルバイトを始めました。
一方Aさんの収入は、会社で続いた大赤字が影響して回復の兆しはみえない状況です。
父親想いのAさんの息子は、父親がかなり無理をして仕送りをしてくれることを知っていました。やがて大手企業への就職内定を早々にもらった息子は、アルバイトのシフトを増やし、「仕送りは少し減っても大丈夫だよ」と親を安心させます。
Aさん夫婦は、優しくて優秀な息子に大喜び。「これで一安心だね。会社も来年はボーナスも例年どおりに戻るだろうし、この4年間は本当に大変だったから二人で温泉でも行こうか」と夫婦で話し合っていました。
しかし就職内定から半年後、息子から思いもよらぬ連絡が入ります。
「どうしよう……」泣きながら電話を寄こしたので、Aさんは慌てました。
「うっうっ、卒業に必要な単位が2単位足りなかったよ。卒業できないよ。内定も取り消しだよ。会社にどうやって説明しよう……」Aさんは唖然としましたが、我に返り、電話越しに息子を怒鳴りつけました。
「大バカ野郎! なにを考えているんだ! せっかくいい会社に内定をもらったって、なんの意味もないぞ! バカにもほどがある!」なだめる妻をよそに、怒りのまま息子を叱りました。息子はただただ泣くばかりです。
必死に頭を巡らせたAさんは、過去に同じような新入社員が自分の会社にいたことを思い出しました。
「そういえば、救済措置があってなんとか無事に卒業できた、とかいってたな。教務課や教授にすぐに相談してみなさい」と少し落ち着きを取り戻して息子に伝えました。Aさんはつい怒ってしまいましたが、息子が苦手な早起きを頑張って新聞配達や居酒屋のシフトを増やし、学費を自分でなんとかしようと家計を助けてくれたことを知っていたので、内心は複雑な気持ちでした。
しかしこれ以上、大学にお金がかかる留年は、親のAさんにとっても死活問題です。会社はなんとか持ち直しましたが、ここ数年の物価上昇は非常に厳しいものがあります。新年度からは学費が上がるのではないか、食費などさらに寮費も上がるのではないか、留年すると就職に影響が出るのではないか、と夫婦の心配は尽きません。
どうにか卒業できるようにと当時は祈るばかりでした。
卒業に必要な単位が不足している場合、原則として卒業はできません。ただし、大学によっては「春学期の再履修」や「特別措置」があることもあるので、すぐに教務課に相談することをお勧めします。不足しているのが必修科目か選択科目かにもよりますが、選択科目であれば、代替科目で対応できる可能性もあります。
就職内定先には、卒業見込みでの採用前提になっている場合がほとんどでしょう。卒業できなかった場合は内定の保留や取り消しとなる可能性が大きいです。ただし、誠実に事情を説明することで入社時期の調整など柔軟に対応してくれる企業もあります。
教務課に状況を説明し、救済措置が取れるか早急に相談。就職先の人事担当に誠意をもって説明、卒業見込みが外れたこと、対応中であることを伝え、指示を仰ぐのが大切です。
単位不足でも卒業できたケースをご紹介します。
・再試験・追加レポートの実施・追試や追加課題により単位を認定してもらえることもある・集中講義・補講の受講・他科目での代替単位認定・TOEICや簿記などの資格取得による単位認定・成績評価の異議申し立て(再評価)
・再試験・追加レポートの実施
・追試や追加課題により単位を認定してもらえることもある
・集中講義・補講の受講
・他科目での代替単位認定
・TOEICや簿記などの資格取得による単位認定
・成績評価の異議申し立て(再評価)
……「採点ミスがあるかもしれない」「出席が反映されていない」などの場合、成績の再確認を申請できる制度も確認してみましょう。
救済措置があるとわかり、なんとか卒業できそうになった場合、内定企業に報告しなくてもよいのでしょうか。
「報告すると将来の昇進などに影響が出るのではないか?」と考えてしまいそうですね。ですが、大学の救済措置で単位が取得できる見込みがあっても、内定先には「卒業が確定するまで不透明な状況」であることを早めに報告するのが望ましいです。なぜ報告すべきかというと、企業は「卒業見込み」で内定を出しており、卒業できなければ、法的にも「新卒採用」の条件を満たさないため、入社できない可能性があるからです。
また、早めに誠実に報告することで、「責任感のある人物」として評価されることもあり、信頼関係を築くチャンスにもなります。さらに、万が一卒業できなかった場合のリスクヘッジにもなりますし、企業側も事前に知っていれば、入社時期の調整やインターン雇用など柔軟な対応を検討してくれる可能性もあるのです。
報告しなかったことで、もし卒業できなかったとなると、突然の内定取り消しや信頼失墜につながる可能性があります。仮に、入社直前のタイミングで発覚すると、企業側の準備(配属・研修・人員計画)に大きな影響を与えてしまうことにもなりかねません。最悪の場合、経歴詐称とみなされる危険性もゼロではありません。
まずは電話で状況を伝え、電話後に「ご報告とお詫び」のメールを送ると丁寧で印象もよいでしょう。もし電話が難しい場合は、最初からメールでも構いません。
Aさんの息子は、教授が出してくれた追加課題によってなんとか卒業でき、内定を受けた企業にも予定どおり就職することができました。
「親を助けるためにバイトを増やしたのに、それがまさか親不孝になるところだったので心底驚きました。両親には初任給でそれぞれプレゼントを買って改めてお詫びしました」Aさんの息子はこれに懲りていまは就職先で新入社員として頑張っています。
ほとんどの方が教育資金設計をする場合、留年することなど考えることはありません。ですが、留年してしまうと通常の学費に加えて追加の授業料や教材費がかかってしまいます。結果、家計に負担がかかってしまい、最悪の場合は在学が難しくなるリスクもあります。
また、留年して就職が遅れることで、本来得られるはずの収入が得られなくなるため、将来の計画にも影響をおよぼす可能性も想定できるでしょう。学費支払いの分割や延納制度学費を一度に支払うのが難しい場合、分割払い制度や延納制度を活用することができます。
・分割払い制度:学費を数回に分けて支払うことができる制度・延納制度:支払期限を延長してもらうことができる制度
これらの制度の利用は、大学の教務課で相談・確認してみましょう。万が一の留年を考え、大学進学を決定する場合は、「留年しても家計に余裕があるか」「在学中に父親の収入ダウンなど起こることはないか」といった点を考えておく必要があります。
なお、人生の三大資金は教育資金のほかに住宅資金、老後資金があります。子どもにお金をかけすぎて、住宅ローンが払えなくなったり、老後の生活に影響が出たりといったことのないよう、早いうちから考えておく必要があります。

川淵 ゆかり
川淵ゆかり事務所
代表

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