【新宿タワマン殺人・初公判】「オフ会でBBQ、2人でお台場デートにも…」和久井学被告の弁護人が主張した25歳被害女性の「振る舞い」

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東京・新宿のタワーマンションの敷地内で2024年5月、当時25歳だったガールズバー経営者の女性・Aさんが刃物で刺され、殺害された事件。殺人などの罪に問われ起訴されていた川崎市在住・配送業の和久井学被告(52)の裁判員裁判の初公判が、7月4日に東京地裁で開かれた。
【写真】シャンパンタワーを前にしたAさん(25)。店でのドレス姿のほか、和久井被告が売った「命の次に大切な車とバイク」
黒いスーツを身に纏い入廷した和久井被告の頭髪は薄くなり、頬はこけていた。愛車やバイクを売却してまで被害女性に貢いだ末に殺害に至ったことで、注目を集めたこの事件。最終的に被告は裁判官の問いかけに対し、淡々とした口調で「間違いありません」と起訴内容を認めたのだった。【前後編の前編】
和久井被告は2024年の5月8日深夜3時すぎ、新宿のマンション敷地内で、Aさんの腹部・背部・胸部などを2本の果物ナイフで複数回刺し、殺害した容疑に問われている。裁判官は今回の公判で、起訴内容の事実関係については争わず、量刑について争うことを双方に確認した。
親子ほど歳の離れた男女が起こしたタワーマンション敷地内での事件は、当時多くの関心を呼んだ。和久井容疑者のSNSには大切にしていた車とバイクを売却したことなどが投稿されており、ガールズバーやキャバクラ店を経営するAさんに大金を“貢いでいた”ことなどが話題になった。
検察は冒頭陳述で、次のように今回の事件までのあらましを語った。
検察官「2人は2018年、Aさんが19歳の頃に、ライブ配信を通じて知り合いました。2021年にはAさんがガールズバー、そしてキャバクラを開業。被告は通い詰め、ある時には1600万円をAさんに支払いました。被告はAさんに結婚を求めるメッセージを送ったこともありましたが、店の中で被告が暴れ、店を出入り禁止になったこともあった。
その後被告はAさんの自宅や店を何度も訪れ、ストーカー化します。Aさんは当時、経営していたキャバクラ店の店員・Bさんと交際しており、Bさんに被害を相談。そして2022年の5月、被告はAさんに対するストーカー規制法違反容疑で逮捕され、接近禁止命令が出された。1年後に命令は効力を失ったが、2024年5月の事件の日まで、2人が会うことはなかった」
そして、事件当日の出来事について、「Aさんは和久井被告に『話したいことがある』と伝えたが、被告は『死んでくれ』と聞く耳を持たなかった」と強調した。
検察官「事件前日となる5月7日の夜、Aさんはライブ配信の冒頭で『ライブが終わったらコンビニに行く』と話していた。また、和久井被告のニックネームや名字を名指しし、逮捕されたことについても言及していました。それを聞いた被告が、川崎の自宅からAさんの自宅へ向かった。
被告はAさんをマンションに併設されているコンビニ前で待ち伏せ、果物ナイフを持って接触。Aさんは悲鳴をあげて逃げたが被告は追いかけ、倒れたAさんの髪を持って、マンション敷地内のサブエントランス前に引きずっていった。周囲には他の住民がいたが、被告は我を忘れて激昂し、1本目の果物ナイフが折れると2本目のナイフを取り出して、強い殺意で何度も、Aさんのことを刺したのです」
検察の冒頭陳述が終わると、弁護側の冒頭陳述に移る。弁護人は裁判官や裁判員に語りかけるように、「和久井さんは深い絶望のなかにいました」と和久井被告の胸中を語り、情状酌量を訴えた。
弁護人「和久井さんは信じていた人に裏切られ、命の次に大切にしていた車とバイクはもう戻らない。多額の借金を抱え、そうした生活のすべての反動があの日、Aさんに向かってしまったのです。
Aさんと和久井さんはライブ配信で知り合い、居酒屋でのオフ会で初めて会いました。参加者は和久井さんともう1人のリスナー、そしてAさんの3人でした。その後も、和久井さんはAさんが主催した3~4人の少人数でのオフ会に複数回参加し、バーベキューや遊園地に行った。2人でお台場に訪れたこともありました」
Aさんと被告が深い関係にあったということを強調する弁護人。そして、「Aさんが結婚の約束を反故にした」と主張するのだった。
弁護人「2021年、和久井さんはAさんに交際を申し込み、AさんはOKをした。その後、大きなケンカをするが、しばらく経ったある日、Aさんのほうからこう言ったのです。『これまでのことは水に流してほしい。私の夢は関西コレクションのランウェイを歩くこと。そのために有名にならなきゃいけないから、私のためにシャンパンタワーをして、人生を賭けてほしい。車とバイクを売って、お金を作ってほしい。そうしてくれたら、結婚する』。
和久井さんは命の次に大事な車とバイクの売却に悩んだが、決意を固めた。そして売却し、1600万円をAさんに渡しました。しかしその後、和久井さんはAさんと連絡が取れなくなってしまったのです。
和久井さんはお金を取り返すために警察に相談したが、ていよく追い返された。そして直接話そうとAさんのもとを何度も訪れ、ストーカー容疑で逮捕されてしまいます。しかし、釈放された後も、大事にしていた車もバイクも失った和久井さんは、気を紛らわせることもできませんでした」
さらに弁護側は、事件の引き金となった前日のライブ配信を見た時の心情や、殺害に至った動機について、こう説明するのだった。
弁護人「和久井さんがAさんのライブ配信の活動再開を知ったのは、事件の1~2か月前のことです。ライブを見ると、和久井さんのニックネームや名字を出し、一方的にストーカーだと断罪し、『被害を受けた』と発信していました。
事件前日のライブ配信で、Aさんが『ライブが終わったらコンビニ行く』と話していたので、和久井さんは直接会ってナイフを見せて脅せば、謝ってくれる、お金を返してくれると思っていたが、Aさんは逃げ出しました。Aさんを捕まえた後も悲鳴をあげ続け、周りに人が集まってきた。
和久井さんは『ここで逮捕されたら、また一方的に配信される』という思いが頭をめぐり、パニックになってしまった。そして『一矢報いたい』という思いがエスカレートし、Aさんを殺害してしまったのです」
事件現場となったのは、Aさんが住むタワーマンションのサブエントランス前だった。周辺に設置された3台の監視カメラには、被告がAさんを殺害するまでの様子が克明に記録されていた–後編記事では、法廷に流された映像の一部始終について詳報する。
(後編につづく)

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