ある漫画をきっかけに「7月5日に大きな災難が起こる」といった情報が拡散されている。
【映像】「7月5日・大災難の予言」と「南海トラフ30年以内に80%」は何が違う?
果たして災害予知は可能なのか? トカラ列島で地震が頻発している原因は何か? 元・気象庁長官 西出則武氏に聞いた。
2011年3月の東日本大震災を予言したというたつき諒さんは漫画『私が見た未来 完全版』(飛鳥新社刊)の中で「2025年7月5日に日本とフィリピンの中間あたりの海底がボコンと破裂(噴火)」「太平洋周辺の国に大津波が押し寄せた」「その津波の高さは東日本大震災の3倍」と予言している。
“7月の予言”について西出氏は「“海底がボコンと破裂”がどういう現象を指しているのか具体的にはわからない」としつつ「台湾からフィリピンの東側にプレート境界があり、プレート境界型の大きな地震が起こる可能性は当然あり、過去にも起こってきた」と説明。
トカラ列島近海で頻発している地震については「トカラ列島の地震はもうしばらく続くと思うので、7月5日の時点で収まっているかはわからない。7月5日にさらに大きな地震が起こるかどうかはわからない。昨日は震度5弱だったが過去を見ると、悪石島で震度5強という地震も起こっている」と説明した。
また、情報が拡散してしまった事態については「漫画の作者は『これは予言とか予知ではない』と言っている。だが、あまり考えないで“尾ひれ”をつけて拡散すると、それはデマになってしまう。だから今の状況は本人の意図ではないかもしれない。皆さんは気を付けなくてはいけない。真偽を確認したり冷静に判断することはやはり大事なことだ」と述べた。
気象庁の野村長官は6月13日の会見で「現在の科学的知見では日時と場所・大きさを特定した地震予知は不可能」「そのような予知の情報はデマであると考えられる」「そのような情報で心配する必要は一切ない」と呼び掛けている。
この発言について西出氏は「野村長官は割と踏み込んで答えたと思う。要するに『作者はそういうデマを流すつもりはなくても、結果的にデマになっている』という意味でデマだと言われたのだと思う。世界有数の地震国に住んでいる我々が地震のこと一切考えなくていい、という意味ではないと思う。『過剰に反応するのは間違っている』という意味かと」と述べた。
さらに、気象庁は「日時と場所を特定する地震の予知は不可能」としている。
一方で、南海トラフ地震や首都直下地震についてはそれぞれ「今後30年以内に発生する確率が80%」「今後30年以内に発生する確率が70%」と内閣府のHPに記載されている。
“大まかな予測”はできるのか?
西出氏は「例えば南海トラフについては古文書、歴史資料で、過去どんな地震が何年何月に起きたかを調べられる。それを見ると、例えば100年とか150年に一度起きていて、一番最近の地震はいつ起こったかと。これを統計モデルに当てはめると確率を計算できる。すると『何月何日に起こる』とは言えないが、30年という範囲で起こる確率が80%、70%という数字が出てくる。これは先ほど日時と場所を指定する予言とは全く違う種類の予測だ」と解説した。
7月5日の過ごし方については「繰り返しになるが我々は世界有数の地震国に住んでいる。いつどんな地震が起こるか残念ながら予測はできない。だがいつ起こってもいいように常に備えはしたい。例えば建物の補強ができれば一番いい。家具の耐震固定だったり、避難するときの非常持ち出しの確認だったり、避難する場所が決まっていれば避難路・避難場所の確認をこの機会に振り返り、次に備えていただく。今回の一連の騒動を糧としてと言うか、いい方に捉えて備えていただければいい」と述べた。(ABEMA/ニュース解説)