「”金あり老後”でも不幸な人」の残念な共通点

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「お金があるだけでは、幸せになれないかもしれない。年をとるほど人とのつながりが大事だ」ということは、心に留めておいてほしいのです(写真:EKAKI/PIXTA)
【話題の書籍】「この1冊読めば、老後の心配がなくなる!」と好評の7刷3万部のベストセラー『「おふたりさまの老後」は準備が10割』
共働きが多く経済的に豊か、仲よし夫婦が多いなどのメリットはあるものの、一方で「老後に頼れる子どもがいない」という不安や心配がある。
そんな「おふたりさまの老後」の盲点を明らかにし、不安や心配ごとをクリアしようと上梓されたのが『「おふたりさまの老後」は準備が10割』だ。同書は7刷3万部を突破するベストセラーになっている。
著者は「相続と供養に精通する終活の専門家」として多くの人の終活サポートを経験してきた松尾拓也氏。北海道で墓石店を営むかたわら、行政書士、ファイナンシャル・プランナー、家族信託専門士、相続診断士など、さまざまな資格をもつ。
その松尾氏が「二極化する高齢者の老後」について解説する。
物価高の昨今、将来必要な老後資金を考えるとため息が出る、という人も多いでしょう。

実際、70代で金融資産を保有していない世帯は、なんと2割以上。
逆に金融資産を保有している70代世帯の中では、3000万円以上持っている人が最も多く、2割以上です(「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」)。
つまり、老後の資産保有については二極化が進んでいることになります。
老後は、お金があれば安心。お金がなければ悲惨な末路になる……。
たしかにそういう面もないとはいえませんが、実際に多くの高齢者の方々を見てきた私からすれば、一概にそうとは言いきれないのが本音です。
「金あり老後」と「金なし老後」の二極化が進む日本。
私の知人のA子さんとB子さんが、まさにそれに当たります。
A子さんとB子さんはおふたりとも70代後半の女性です。どちらも配偶者に先立たれ、ひとり暮らしをされています。
A子さんは、若いころから無駄遣いをせずにしっかりお金を貯めて、十分な資産をお持ちです。
対してB子さんは、お金があれば使ってしまうという気質で、現在は貯蓄はほとんどなし。月10万円ちょっとの年金でなんとか暮らしています。
これだけ聞くとA子さんのほうが幸せで、B子さんはみじめな老後生活を送っているように思えます。
しかし不思議なことに、私の目からはB子さんのほうが幸せに見えるのです。
その理由は、人とのネットワークです。
B子さんの周りには、いつも人がたくさんいます。
毎日のように友人同士で集まって大笑いをしながらお茶を飲んだり、各自が持ち寄った惣菜を分け合ったり。お金のかからない近場のハイキングなどにもしょっちゅう出かけています。
お金はカツカツだそうですが、B子さんはいつも楽しそうです。
対してAさんは、いつもおひとりです。
ひとりで買い物に出かけ、ひとりで食事をつくって食べる。朝から晩まで誰とも一言も話さないという日も少なくないそうです。
生活には困ることはありませんが、いつもどことなく寂しそうなのです。
もちろん「ひとりのほうが気楽だ」という人もいらっしゃるでしょう。
しかし、高齢期に欠かせないのは、お金よりも「社会的ネットワーク」であると言われます。私は多くの高齢者を見てきましたが、幸せそうなお年寄りの周りには、人がたくさんいました。
人とのつながりには、お金は必要ありません。話をしたり、話を聞いたりするだけで十分なのです。
地域の中で友人や知人とのつながりを持って生きることは、幸せに老いるためのコツなのだと、私は彼らから教えられました。
「遠くの親類より近くの他人」と言われるように、実際に、いざというときに頼れるのは、近所に住む友人だったりします。人とのつながりがあることで、社会生活が広がり、地域の情報交換もできて、自然と老後も活動的に過ごせるようになります。
また、口コミなどの情報が多いと、「福祉」や「介護」などの公的サービスにもつながりやすくなります。
実際に、お金があっても介護サービスなどとうまくつながれず、暮らしが荒んでいく人を、私はたくさん見てきました。
人とのコミュニケーションを大切にしている人は、高齢期になっても楽しそうにデイサービスに通っていたりします。
老後の「お金の二極化」だけでなく「つながりの二極化」も進んでいるのです。
高齢になってから「今日から友人がほしい」と思っても、なかなかうまくいきません。また、お金を出して手に入るものでもありません。
地域での友人・知人づくりは、若いころからの積み重ね(=準備)がものをいいます。
・市民サークルに参加するなど、自分から行動してみる・誘いがあったら乗ってみる・チャンスがあれば、自分から声をかけてみる
このような、まずは一歩踏み出す行動が大切です。
その積み重ねが、人とのつながりを少しずつ強くしていくのです。
もちろん、老後はお金があるに越したことはありません。
ただ「お金があるだけでは、幸せになれないかもしれない。年をとるほど人とのつながりが大事だ」ということは、心に留めておいてほしいのです。
幸せに老いるため、40代、50代くらいのうちから、少しずつでも「人とのつながりをつくる準備」をしてほしいと思います。
(松尾 拓也 : 行政書士、ファイナンシャル・プランナー、相続と供養に精通する終活の専門家)

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