警察庁が2025年1月に公表した資料によると、「15 歳~79 歳までのオンラインカジノの国内利用者数は推計で約 196.7万人、年間賭額の総額は約1兆2,423億円」だという。社会を不安定にし、日本の金融資産が急速に失われようとしているにも関わらず、「もしバレても、事情をきかれるだけ」と軽くみる風潮に抗うように、対策が急ピッチですすめられている。ライターの宮添優氏が、オンカジ対策として次に注目される「インフルエンサー」たちの存在についてレポートする。
【写真】オンラインカジノでは、SNSでどんなことをやると違法になるのか?
* * *「万が一、という悪い予感はありました。マスコミとして言い訳が全く出来ない不祥事です」
苦悶の表情で取材に答えたのは、フジテレビ報道局で働く現役スタッフ(40代)。話を聞いたその日、日本国内からの利用が禁止されている「オンラインカジノ」を利用して賭博をしていたとして同社社員が「逮捕」されたことに加え、同じ疑いで謹慎中だったアナウンサーが書類送検されたと報じられた直後だった。
フジ現役スタッフが続ける。
「今回逮捕された社員は、昔から韓国のカジノに通うほどのギャンブル好き。オンカジに関する社内調査には”以前やっていた”と答えていたようですが、その後、今年になってからも会社に黙ってオンカジに精を出していたとか。同僚にも借金をしていたという話もあり、相当なギャンブル依存であったことは間違いない」(フジ現役スタッフ)
逮捕されたフジ社員については以前、筆者も「公表対象になっていない模様」と報じていた。が、ここにきて、オンカジを取り巻く環境が大きく変わりつつあるかもしれない。事件を取材する大手紙社会部記者が打ち明ける。
「アスリートや芸能人などが次々にオンカジ関連で書類送検されたり公表されたりしましたが、微罪扱いという空気が広がっていて、ある球団関係者からは、オンカジ関与選手をかばうような発言まで飛び出していました」(大手紙社会部記者)
ところが、警察当局側は落ち着くどころか、鼻息荒く捜査を進めているという。
この数年で一気に社会問題化したオンカジへ規制のため、国会では「改正ギャンブル等依存症対策基本法」が6月18日成立し、賭博行為だけでなく、広告や宣伝も禁止となった。そして、外国を拠点とするオンラインカジノのサイトに接続できないよう、ブロッキングを検討しているという。大手の三菱UFJ銀行は、オンカジ関連の入金が確認された場合には「口座を停止する措置」を取ると顧客に通知をすでに始めている。当局側は「本気」なのだ。
「プロ野球・西武ライオンズも、最近になってオンカジ関与選手を実名で公表しており、さらに捜査が進められている。常習者や高額利用者の実名摘発が今後相次ぐかもしれません」(大手紙社会部記者)
有名人の利用者、次に常習者の摘発に着手とくれば、もちろんオンラインカジノの「胴元」にも捜査の手が及ぶはずだが、目下、捜査関係者が重大な関心を寄せているとみられるのが、薬物事案であれば「売人」に当たるような人物たちの存在だ。社会部記者が続ける。
「当然、日本国内から参加することは違法なオンラインギャンブルですから、胴元であるオンカジの運営会社もターゲットになります。しかし、海外に拠点があったりして摘発は困難。したがって、当局の狙いは、オンカジを紹介していたインフルエンサーに移行しつつある。彼らは、薬物の売人のように、一般人に違法なオンカジを紹介し、胴元や運営から”報酬”をもらっているのです」(大手紙社会部記者)
警察はすでに「明鏡止水」というハンドルネームを用い、総額280億円以上をオンラインカジノにつぎ込んでいた男を逮捕している。男は、マイナス収支を取り戻すべく、オンラインカジノをSNS上で他のユーザーに「紹介」し手数料を受け取っていたと言われている。こうした「インフルエンサー」の存在が、オンカジに手を出すユーザーを次々に生み出している、という指摘もある。
「捜査当局は、SNS上でオンカジの宣伝をしているようなインフルエンサーに捜査の焦点を移しているようです。インフルエンサー本人がオンカジをしている、といった書き込みなどもくまなくチェックし、仮に本人がオンカジに手を出していなくても、オンカジの紹介で金銭を受けとるなどしていれば、徹底的に調べられるはず。報酬系統を突き上げれば、胴元が判明する可能性もある。オンカジ関連の広告を出稿していたラジオなどの一部メディアについても、説明責任が追及されるはずです」(大手紙社会部記者)
一部のインフルエンサーの中には、すでに自ら警察当局に「相談」をしているインフルエンサーもいるというが、もはや「合法だと思っていた」という言い訳は通用しない。