埼玉県議らの“川口クルド”視察が追跡受けトラブルに…両者に聞く“経緯”、共生策は? 「散々会話してきた」「“クルド人問題”で一括りにされるのは疑問」

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「6/2 川口市を超党派の議員で視察。(中略)クルド人集団に車を囲まれ“監禁・威嚇”」。中指を立てる男性の写真とともにこのような投稿をしたのは、高木功介埼玉県議(高ははしごだか)。この日、川口市を訪れてクルド人の解体業者などを車で視察していたところ、トラブルが起こったのだ。
【映像】視察中の車と、それを追いかけて叩くクルド人妻の女性
追跡してくる白い車。高木県議によると、運転していたのはクルド人。この状況を受けて近くの警察署に逃げ込んだそうだが、取り囲まれ、「出てけよ!降りろよ!」などと怒鳴られたという。さらに翌日、この視察をめぐり、クルド人の1人が市役所を訪れてこの件に関してクレームをつけたが、対応をしてもらえず激高。警察が駆けつける事態に発展した。
一連の事態に、高木県議は「公道から視察していただけで、写真も撮影していない。ずっと追尾され、怒声を浴びせられて身の危険を感じた」とXに投稿。ネットでは、「またクルド人かよ いい加減にしろ!」「やっぱりクルド人との共存は無理…」と、怒りが膨れ上がったのだ。
彼らはなぜ騒ぎを起こしたのか。『ABEMA Prime』は川口市を訪れた。警察署、そして市役所に抗議に行ったクルド人の解体業者に話を聞くと、「視察の撮影に関しては、絶対外に出しちゃ禁止だよ、と。撮影したものを消してください、それだけだから、っていうのをしないといけない。あと勝手に撮るなって、無許可だから」。
訴えたかったのは、無断撮影された動画の削除。視察に関して、事前のアポ取りはなく、突然やってきた県議らによって無許可で撮影されたというのだ。「議員って絶対そういうことしない。ちゃんと周囲を守らなくちゃいけないから。なんだこれ?というショックを受けた」(同)。
また、市役所での騒動については、「相談もできない、質問もできない、誰に会うこともできない。テンションがちょっと、声が大きくなって、市役所が警察を呼んだ」(同)。
そして、県議らの視察対象になり、その車を追跡したクルド人とその妻にも話を聞くと、「私がその車に駆け寄って車にコンコンってして、『何で撮っているんですか』と叫んだら、一瞬止まった後、急発進して大通りに逃げていった」(妻・メグミさん)、「外国人じゃなくても、日本人も絶対怪しい・おかしいってなる」(クルド人男性)。
果たして、視察当日に何があったのか。双方を招き、“共生の道”を議論した。
まず高木県議は「1年前に同じような視察をした時、車内から撮影してトラブルになった。なので、今回は『風景などは撮っていいが、ヤード(解体施設)などをズームアップして撮るのは絶対にやめてほしい』と。それを破って撮影した同僚は、車内を見ていた限りいない」と説明。
一方、妻のメグミさんは「車の後部座席の3人がスマホを持って、置き場の方に向けられていた」と主張する。視察車両が写る防犯カメラ画像を元に、「ヤードから2軒隣の場所で、その状態のまま目の前を通り過ぎた。これは“撮られている”と思うのが率直な意見だと思う。さらに車がUターンしてきたので、車の方に駆け寄った」。また、過去にも無許可で撮影・画像が拡散された事例が多数あり、SNSでのヘイトが高まっている背景も訴える。
両者の説明を受け、パックンは「撮っていないなら、『風景だけ撮ってます。よければ確認してください』と、その場で見せて立証できたのではないか」と質問。
高木県議は「1年前も、指笛を鳴らされて囲まれたことがある。“悪くなければ見せる”というのをしなかったのは私の落ち度かもしれないが、後ろからバンバンと叩かれた時の恐怖心も理解していただけるとありがたい」と述べた。
高木県議らは追跡に気づいて110番通報した後、武南警察署に逃げ込んだ。「1台の車に尾行されていたと思ったら、3台だった。停まった瞬間に前を囲まれて車を動かせなくなり、すごい剣幕で怒鳴られ、対話しようという雰囲気ではなかった。それが10分ほど続いた後、警察の人が出てきて、双方に話を聞いて解放された」と高木県議。
一方のメグミさんの説明は、「私たちも以前に警察に相談している経緯があり、恐怖を感じて110番しながら車を追跡した。視察という名目で怪しい車が通ったのは他のヤードの人たちも見ていたので、“あの車はどこに行ったのか”と探していた。その人たちが一緒のタイミングで警察署に着いて、ブロックするような形で停車した」というもの。
彼らが大声をあげていたことについては、「言っているのは、“なぜ何も言わずに視察をしているのか”“公務なら説明する責任がある”という点。議員さんが乗っている車だということは警察に着いて初めて知ったわけで、そもそもヤードで説明がなされていればここまで来なかったと思う」と訴えた。
県議らは視察に際し、「現象を見るための視察で、話を聞くようなものではない。車内からでも実情はわかる」「事前通告すると、日常風景を見ることは困難」と判断。高木県議は「(説明をしなかったのは)我々に落ち度があったことはあったと思うが、視察の事前に言う必要はあったとは思わない。公道から視察しているし、公共の場所に行っている。私有地に入ったり、周りからジロジロ見たりはしないのが我々のやり方だ。また、事前にアポイントメントを取ると、自然なものが見られないと考えている」と述べた。
タレントの田村淳は「今双方の主張をし合っても何も解決しないと思っていて。メグミさんが『公務の説明があれば納得できた』と言い、高木さんは『落ち度があった』と。まさにそこで、落ち度を改める姿勢が伝われば、今回の問題は解決するのではないか。一方で、仲間を呼んで探せと、3台の車で追いかける行為もおかしいと思う」と投げかける。
メグミさんは「結果として追い回して、恐怖心を煽ってしまったことは申し訳なく感じている。何かやましいことや隠していることもないので、当日に『視察に来た』となれば『わかりました』と応じることはできる。アポを取らなくても、その場に人がいたら説明するべきだと思う」と再度主張した。
今回の視察の目的は、「決して外国人排斥が目的ではなく、共生策を探るため」のもの。“好事例”として中国人の多い地域も視察していた。
そんな中、案内役を務めた奥富精一川口市議は、「芝園団地なんかは15年かかってようやく共生の形が見えてきたが、見に行ったヤードなどは今でもトラブルがある。そういった現状を見て、どうしていくのかという糧にしていきたい」とコメント。
一方で、「2005年から散々会話してきて、今更ボールを投げる対話をする段階ではないだろうと。今までチャンネルを開いて、シンポジウムを開いたりゴミ捨ても一緒にやったり、彼らの支援をしてきた。しかし、何回改善をお願いしてもできなかった。最後には町中で暴走行為や無免許・無保険での事故を何件も起こしている。共生というのは、法治国家である日本にいる資格のある人たちとの話。川口の問題は、そうではない人が主人公になっている」との問題意識も投げかける。
高木県議は、「メグミさんの夫は配偶者ビザという形で、合法な人だと理解しているが、そうではないケースも多くある。合法に在留している外国人に対しての共生を何より大切に思っているし、少なくとも私や奥富さんは排外主義ではない。芝園団地でも、どうすれば共生できるのか、自治会長と会ったりしながら模索をしてきた」との経緯を明かし、「クルド人問題を扱う時はいつも“不法就労”クルド人と前に付けてきた」と主張した。
メグミさんは「SNSなどの投稿を見ていると、一部のクルド人に被害を受けている方が市内にいるのも事実。その点はクルド人側がしっかりと日本のそのルール・マナーを受ける必要はある。ただ、“クルド人”と出るだけでクローズアップされ、一部の事件やトラブルがヘイトや差別に用いられている現状もあり、“クルド人問題”と一括りにされるのは疑問に思う」と訴えた。(『ABEMA Prime』より)

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