鶏がらベースのこってりラーメンでお馴染み、全国209店舗(2025年6月6日時点)を展開するラーメンチェーン「天下一品」(通称「天一」)が、6月末に大量閉店することが大きな注目を集めている。新宿西口店、池袋西口店、川崎店など、首都圏の繁華街にある10店舗を閉店することになり、気軽に天下一品に足を運ぶことが難しくなりそうだ。
国内飲食店全体の競争激化、都市部の賃料上昇、飲食業界のスタッフ不足、原材料費の高騰など、考えられる要因はいくつもある。今回の大量閉店は数を絞って質を高める「計画的な撤退」というポジティブな解釈もあるが、長年通うファンにとって寂しさを感じるニュースには違いない。
閉店ニュースで話題を集めている天下一品ではあるが、6月4日に放送された『水曜日のダウンタウン』(TBS系)では、天下一品に絡んだ“説”が放送された。
その説は「天下一品に来た客が『こってり』頼むか『あっさり』頼むかギャンブル」というもの。2023年11月に放送され、盛り上がりを見せた説の第2弾である。今回も天下一品に来店した客の外見や所作などから、何を注文するのかを芸人たちが予想した。ただ、序盤から“本命”の「こってり」を頼む客は0人。「味噌ラーメン」や「塩ラーメン」など、“大穴”が注文されるまさかの展開に芸人たちは頭を抱えていた。
◆“こってり離れ”が進行中? 番組から感じた空気
とはいえ、その後「こってり」を注文する客は増え、最終的には「こってり」(8杯)、「あっさり」(2杯)、「屋台の味」(2杯)、「塩ラーメン」(1杯)、「こってりMAX」(2杯)、「味噌ラーメン」(2杯)という結果に。下馬評通り「こってり」が最多注文となった。
この時間帯に天下一品を利用した客が全員撮影に協力してくれたわけではないはずだ。もしかしたら「こってり」を注文した人の割合はもう少し高かったかもしれない。統計的な裏付けにはならないが、それでもこの結果だけを見るのであれば、半分近い客が「こってり」「こってりMAX」以外を注文しており、“こってり離れ”をついつい感じてしまった。
株式会社日本政策金融公庫が今年2月に公開した「消費者動向調査(令和7年1月調査)」によると、現在の食の3大志向は、「経済性志向」「健康志向」「簡便化志向」だ。中でも「健康志向」は前年調査と比べて、20代では低下していたものの、30代と50代~70代では上昇している。その理由の上位は「健康状態に改善すべきところがある」「健康でいることが最も経済的」といったものだ。消費者の健康志向が高まっている中、脂質も塩分も多く含む濃厚ラーメンを避ける傾向が広がっていることも、天下一品の向かい風になっていないだろうか。
◆身近になった二郎系や他店に足が向いてしまう
天下一品の代名詞と言える「こってり」が注文されにくくなっている背景を考えてみると、「こってり」の“お株”を他店に奪われているからではないか。
もう一つのこってり代表といえば、濃厚豚骨スープと極太麺が特徴のラーメン二郎。同店には煩雑なルールが多く、“ジロリアン”と呼ばれるラーメン二郎の愛好家の存在もあり、これまではなかなか近づきにくいイメージが強かった。しかし、近年は二郎風のラーメンを提供するインスパイア系の店舗が増え、コンビニでもレンジで温めて食べられる二郎系の麺が多く販売されている。一時と比べれば、かなり身近になった。
二郎系だけではなく、濃厚な豚骨スープが特徴的で近年目にする機会が増えた「壱角屋」、とんこつ出汁をベースに背脂を加えた濃厚スープが売りで関西中心に大きな支持を集める「ずんどう屋」など、“こってり”をセールスポイントにしているラーメンチェーンは増えた。二郎系をはじめとしたライバルが身近になり、こってりの舌になった時は他所に足が向くようになったことが、「天下一品の『こってり』」が注文されにくくなっている一因かもしれない。
◆“1000円の壁”超える、チェーン店では高めの価格帯