おい、嘘だろ?…年収570万円・52歳会社員、東京私大に通う優秀な息子の〈就職内定〉を心待ちにしていたが…激震が走った「まさかの一言」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

子どもが生まれたら、教育資金の準備を始めることが大切です。どのくらいの金額を用意すべきかについては、「大学の4年間」を想定する場合が多いですが、それ以上の費用がかかるケースも珍しくありません。詳しく見ていきましょう。
地方都市の中小企業に勤めるAさん(仮名・52歳)は、年収570万円のサラリーマン。共働きの妻はパート勤務で年収280万円ほど。世帯年収はおよそ850万円のごく普通の家庭です。
子どもは息子と娘が一人ずつ。どちらも学業優秀で、息子は「東京の大学で学びたい」と強く希望し、大学進学と同時に上京。アパートを借りて一人暮らしを始めました。
学費は4年間でおよそ450万円。毎月の生活費として8万円を仕送りし、不足分は奨学金(月5万円)と本人のアルバイトで補う形。とはいえ、大学3年の夏以降は「忙しくてバイトに入れなかった」と連絡があり、追加の送金を求められることもありました。
引っ越し費用や帰省時の交通費なども合わせれば、息子の大学生活にかかったお金はトータルで900万円近く。子どもたちの進学に備え、少しずつ積み立ててはいたものの、想像以上の出費でした。
Aさん夫婦は節約に節約を重ね、自分たちのために使うお金はほとんどありませんでした。それでも、「せっかく優秀なんだから、きちんと勉強して、良い会社に入ってほしい。ここが踏ん張りどころだ」と、夫婦で声を掛け合って支えてきたのです。
大学3年の夏ごろから、息子は「インターンに参加したり、ぼちぼち活動してるよ」と話すようになり、就職活動に本腰を入れ始めた様子。Aさんは「自分は地方の中小企業勤めで、就活のアドバイスなんてできないから」と、あえて口を出さず、ただ遠くから見守っていました。
そして、翌3月頃から本格的に始まった就活。Aさんは「決まったよ」という連絡を心待ちにしていましたが、7月になっても息子からの報告はありません。
「どうなってるんだろう……」。そんな不安を抱えていたある日、ついに息子から1本の電話が入りました。それは、驚きの内容だったのです。

「どうしても行きたい業界があって、そこしか受けてこなかった。でも全部落ちた。秋採用はほとんどないから、来年またチャレンジするために就職留年させてほしい」
そう電話口で話す息子に、Aさんは言葉を失いました。「まさか大学4年で終わらないなんて……」。
そう思ったのも無理はありません。これまででさえ家計はギリギリ。下の娘の進学も控える中、これ以上息子のためにお金を捻出するのは難しい現実がありました。
息子が志望する業界は非常に狭き門だといいます。業界を変えて受ければ、あの子だったら就職できるはず。それでも、「無理に就職して後悔する人生になるなら、もう1回頑張ったほうがいいのか」と葛藤したAさん。悩んだ末、息子にこう伝えました。
「2つ下の妹の進学費用もあるし、もうお前に使えるお金は残っていない。来年まで粘っても、希望のところに就職できる保証もないだろう。どこでもいいとは言わないけれど、秋採用で他の業界を受けてみるのもいいんじゃないか? それでもチャレンジしたいなら、自分でアルバイトして生活費も大学の在籍費も稼ぎなさい」
そして、自分たちがどれほど節約し、支えてきたかも、この時初めて話しました。
「私の小遣いなんて、月2万円ですよ。でも、親の懐事情なんて、分かってなかったんでしょうね。奨学金を借りてることさえ、あの子にとっては『みんなそうしてる』程度の認識だったと思います」
Aさんは、それでも就職留年したいのか、諦めて秋採用で別の業界を受ける方法もあるのではないか。そう確認しました。
息子は最終的に就職留年を決断し、再び春採用にチャレンジ。“大学5年生”となった1年間は、大学に籍を置くための費用を自分で支払い、生活費の大半もアルバイトと節約で賄いました。
「なんだかんだ心配で、多少の生活費の援助はしましたけどね。でも、かなり頑張ってやりくりしていたようです。就職は結局、第一志望ではなく、第二希望の業界の会社に決まったんですが、本人は『やり切った』って。あの子にとっては挫折だったかもしれませんが、納得できたならよかったですよ」
Aさんは、振り返ってそう笑います。下の娘は地元の国立大学を選択したことで、想定よりも教育費の負担が減り、今は自分たちの老後資金作りに注力しているといいます。
「自分たちの老後のお金を、ようやく本格的に貯め始めているところ。65歳までどれだけ貯められるか……贅沢なんてしてられません。まだまだ小遣い2万円で頑張りますよ」

子育ての中でも、最も大きな割合を占めるのが教育費です。実際にどれくらいかかるのでしょうか。
文部科学省の「令和3年度子供の学習費調査」などをもとに日本政策金融公庫が試算したシミュレーションによると、幼稚園から大学まで全て公立の場合の教育費は約822.5万円。一方、すべて私立で進んだ場合は約2307.5万円にのぼります。
実際には、高校までは公立を選ぶ家庭が多いものの、大学は7割以上が私立に進学すると言われています。したがって、大学の入学費用や授業料の準備は避けて通れません。
また、文系より理系のほうが学費が高額になる傾向があり、子どもの進路によって教育費の差も大きくなります。さらに、ひとり暮らしをする場合は、毎月の仕送りも必要となり、家計の負担は一層重くなります。
ここで注意したいのが、大学4年間で学びを終えないケースの存在です。文部科学省の「令和5年度学校基本調査」によれば、大学(学部)卒業者のうち約12.5%が大学院の修士課程に進学しています。さらに修士課程修了者のうち約10%が博士課程に進むというデータもあります。
つまり、大学を卒業しても1割以上は修士課程へ進み、その中からさらに博士課程に進む学生も一定数いるのです。
進学ではなく「留年」という選択肢もあります。単位不足による留年はもちろん、Aさんの例のように就職活動のためにあえて留年するケースも少なくありません。留年した場合、在籍料、施設費、単位不足であれば授業料などの支払いが必要となり、当然ながら教育費が増加します。ひとり暮らしをしている場合、生活費の補助も長引く可能性があります。
このほか、大学にストレートに入学せず「浪人」をするケースもあるでしょう。こうした点は、家計の計画において見逃せないポイントです。Aさんのように、親としてどこまで支援すべきか悩む家庭は多いでしょう。
しかし、「子どものため」「親の責任」として無理に負担を続ければ、自分たちの老後資金など大切な資金が圧迫されるリスクもあります。教育費はもちろん大切ですが、自分たちの生活や将来の安心も考えながら、どこかで線を引き、冷静に判断することが必要と言えそうです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。