パートナーから束縛をされたり理不尽な嫌がらせを受けたりしていても、周りから「それってモラハラじゃない?」と指摘されるまで、本人はそれが精神的なDVだと認識できない。そんなケースも多いようです。
今回は、そんなモラハラ彼氏から逃げることに決めた女性のエピソードをご紹介しましょう。
◆久しぶりに会った友人が妙に痩せていて……
ネイリストの山口真紀さん(仮名・30歳)は、ある日久しぶりに友人の菜摘さん(仮名・31歳/会社員)とランチをしました。
「菜摘とは学生時代にバイト先で仲良くなって以来の付き合いなのですが、昨年7年振りに彼氏(30歳/会社員)ができて同棲を始めて結婚間近だと聞いて。邪魔したら悪いと思ってあまりこちらから誘えずにいたんですよね」
なので菜摘さんからのお誘いが真希さんはとても嬉しかったんだそう。
「ですが久々に再会してみたら、以前はちょっとぽっちゃりめで肌に張りのある健康的な見た目だった菜摘が、妙に痩せてしまって、どことなく疲れているような印象を受けました。心配になって『大丈夫? 今は幸せなの?』と思わず聞いてしまいました」
◆彼女の様子は、パニック障害の症状とそっくりだった
すると菜摘さんは「大丈夫だよ! ただちょっとこの間、彼と歩いていたら急に動悸が激しくなって息が苦しくなって。立っていられなくなって道路に座り込んじゃったことがあって怖かったの。しかもその後も何度か同じようなことがあって。まぁ、しばらくしたらすぐに治るんだけどね」と、どうってことないように言ってきたそう。真希さんは、妙な違和感を覚えました。
「それは私が以前、派遣社員していた頃にストレスからパニック障害になってしまった時の症状とそっくりだったんですよ。思わず菜摘に『その時に彼は介抱してくれたの?』と聞いたら、座り込んでなかなか復活しない菜摘を道端に置いて先に帰ったって言うんですよ。
あ、これは普通じゃないしかなりヤバいかもしれない……と思い、彼がどんな人なのかを詳しく聞いたんです」
◆不機嫌という名の暴力で彼女をコントロール
するとその彼は基本的には明るく陽気な人のようで、菜摘さんは“心配症で繊細な彼”と語っていました。ですがその話を聞く限り真紀さんには、“束縛の激しい自分勝手なモラハラ男”としか思えなかったそう。
「菜摘はひとりっ子で親ともずっと仲良くやってきた穏やかな性格で、激しく怒られたりマイナスな言葉を浴びせられることなく育ってきたそうです。でもその彼は自分の気分でいきなりブチ切れたり、菜摘を否定する言葉を投げつけたりすることで『お前は俺より立場が下。こっちの思い通りに動かないとまたぶちのめすぞ』と、不機嫌という名の暴力で菜摘をコントロールしているようでしたね」
◆発作の原因が、彼氏のモラハラだと気づいて
お人好しな菜摘さんは、彼が不機嫌になる度に「自分が至らないからだ」と思い込んでしまっているようだったので、真紀さんは絡まった糸を解(ほど)くように“その彼がいかに理不尽なことをしているか”、そして“菜摘さんは全く悪くない”ということを説明しました。
「そして『おそらくそれはパニック障害の発作だと思う。私にも経験があるの。それぐらいストレスで心が疲弊しているんじゃない?』と語りかけると、菜摘は『そう言われてみれば、症状が出たのは全部彼が不機嫌になった後だったかも……』とハッとしていました。そこからゆっくりと洗脳が解けるように、自分の置かれている状況を理解していったんです」
◆モラハラ男の留守中に引っ越しを試みたけれど
そのようにして彼との別れを決意した菜摘さんは、彼が仕事に行って留守にしている隙にその部屋から出ていく決心をしたそう。
「とにかく1日でも早く救出してあげたかったので『彼にバレないように何となく荷物をまとめておいて。私がレンタカーを借りて行くから、それにサッと荷物を積み込んで、こんな生活からはおさらばしよう』と話しました。そして決行の日がやってきたんですが……」