5キロ2000円の備蓄米、おいしく炊くコツは…専門家「十分に白いご飯で食べられる」

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コメの高騰を受け、随意契約で売り渡された政府備蓄米の販売が始まった。
安価なコメは家計にはありがたいが、品質に不安を感じる人もいる。おいしく食べる工夫を専門家に聞いた。(加藤亮)
農林水産省が今月2日に発表した、スーパーで販売されたコメ5キロ・グラムあたりの平均価格(5月19~25日)は4260円。一方、随意契約で売り渡されている備蓄米の販売価格は2000円程度だ。ネット通販では数時間で完売し、店舗での販売も大行列となった。
今回、販売される備蓄米は、2022年産の「古古米」や21年産の「古古古米」だ。備蓄用の古古米や古古古米はこれまで一般になじみがなく、品質を不安に思う人が少なくない。ただ、コメの品種開発などに取り組む新潟大特任教授の三ツ井敏明さんは「味も臭いも新米と食べ比べてやっと分かるくらいの差しかありません」と強調する。
コメの油分が酸化した時に、「ヘキサナール」という臭いの原因になる成分を発する。三ツ井さんは研究用に同じ銘柄の24、22、21、20年産を保管しており、24年産と21年産の成分を機器で測定したところ、21年産のほうが多く検出されたという。
三ツ井さんは24、22、20年産をそれぞれ試食した。「24年産はツヤがあり、やはりおいしい」とした上で、「22年産と20年産は少しぱさぱさとした感じがあるが、24年産と食べ比べなければ分からないほどわずかだった。どちらも嫌な香りはなく、機器測定で数値上は差がでるが、ほぼ普通のご飯です」と話す。
東京都内で米穀店「スズノブ」を営み、「五ツ星お米マイスター」の資格を持つ西島豊造さんは備蓄米の22、21年産を試食し、「思ったよりも品質に問題はないと感じた。少し硬さを感じるところもあるが、炊き方などの工夫で解決できる」と話す。
具体的には、乾燥して割れやすいため、炊く際はザル洗いにせず、炊飯器の内釜で手早く洗う。「しっかり洗いたくなるかもしれないが、洗いすぎると甘みが抜け、割れて団子状になってしまうので注意しましょう」と西島さん。
洗った後は、ふっくらとした仕上がりにするため、1時間以上浸水させる。炊飯器は早炊きモードを使わず、通常モードで炊く。「もっちり」や「うまみアップ」のようなモードがあれば使うとよい。じっくり炊いたほうが甘みを引き出せるためだ。
炊きあがりにツヤがなかったり、ぱさついたりした時は次回以降、少し水を多めに調整して炊飯する。
また、炊飯器の保温機能を使うと、ぱさついたり、味が落ちたりする可能性がある。多めに炊いて冷凍保存したい時は炊きあがったら保存容器に押し込まずにふっくらと入れる。水分を逃がさないように蓋をしてから粗熱をとって冷凍保存するのがおすすめという。
備蓄米は一度に炊く量ごとにジッパー付き保存袋などに入れて冷蔵庫の野菜室で保管する。
コメは通常、精米後1か月半程度で食べきるのが望ましいが、備蓄米は1か月程度で食べきるほうがよい。
使いきるまでにしばらくかかる家庭もあるだろう。時間がたったコメをもんで手に白い粉が付くなら、炊く前にコメを金網のザルに入れて2分ほどごしごしとこすり付ける。表面の酸化した部分や乾いた部分が取れてツヤが少し戻り、嫌な臭いも弱まるという。
それでも、日常的に食べていたコメと比べると、備蓄米に硬さを感じたり、好みに合わなかったりすることがあるかもしれない。その場合は、備蓄米と家庭にあるコメを7対3の割合でブレンドするといい。
西島さんは、「備蓄米は十分に白いご飯で食べられるが、個人で好みに違いがあるので、カレーやお茶漬け、チャーハンやリゾットなどにしてもよい。備蓄米を食べる経験はなかなかないので、この機会に楽しんで味わってほしい」と話す。

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