日本国際博覧会協会(万博協会)は、大阪・関西万博の会場南側にある水場「ウォータープラザ」と会場中央部にある「静けさの森」でそれぞれ指針値の20倍のレジオネラ属菌が検出されたと明らかにした。
原因は不明で、5日時点で健康被害の報告はないという。水質の改善が確認されるまで噴水ショーを中止し、静けさの森にある人工池「水盤」の利用も見合わせる。
万博協会によると、大阪市保健所が5月26日、噴水ショーが昼夜行われているウォータープラザの海水の簡易検査を行い、29日にレジオネラ属菌を確認した。31日から配管の清掃や塩素による水質の改善などの対策を行ったが、6月4日夜に指針値の20倍の菌を検出。同日夜、保健所の助言を踏まえ、6日まで噴水ショーの中止を決めたと発表した。噴水ショー「アオと夜の虹のパレード」は人気イベントの一つ。約300基の噴水装置が使われ、水しぶきがかかる場所もある。対策の効果を確認し、7日からの再開を目指すという。
静けさの森では5月28日夜、三つある水盤のうち南側の一つの水から指針値の20倍の菌が検出されたと保健所から連絡があった。水盤は子どもの水遊びの場所として人気だが、29日は立ち入りを禁止せず、閉場後に水を抜いて30日から利用を停止。6月5日に菌検出を公表した。今後、清掃や消毒を実施するという。
万博協会の高科淳副事務総長は5日の記者会見で、「噴水ショーの観覧を楽しみにしていたお客様に深くおわびする」と陳謝。協会の山北孝治・施設維持管理局長代行は、検出翌日に水盤の利用を停止しなかったことについて「保健所からただちに利用を停止すべきだとの助言はなく、我々としては速やかに排水作業を行った」と説明した。堺市北区から会場を訪れた男性(62)は「多くの来場者が安心して楽しめるように、問題が確認されたらすぐ対応し、安全第一で管理を徹底してほしい」と話した。
レジオネラ属菌は、水や土、温泉など、自然界に生息している、ありふれた細菌だ。36度前後の温度で増えやすい。国立健康危機管理研究機構(JIHS)によると、2013~23年に2万例を超える感染報告があり、月別では7月が多い。夏場は気温が高くなり、レジオネラ属菌が繁殖しやすいためとみられる。
感染すると、2~10日で発熱や悪寒、筋肉痛などの症状が表れる「レジオネラ症」を患う恐れがある。38度以上の高熱や呼吸困難を伴う重い肺炎を発症することもあり、命に関わる。高齢者や赤ちゃんなど、免疫力が低い人は注意が必要だ。温浴施設などでは、今回よりも高い数値が検出され、問題になった事例が多い。病院の冷却塔でレジオネラ属菌が検出され、患者を含む21人が発症し、2人が死亡したという報告もある。
レジオネラ属菌は、菌を含んだ細かいしぶき「エアロゾル」を吸い込むことで、感染する。ただ、人から人へは感染しない。岐阜大の永井宏樹教授(細菌学)は、「噴水は感染リスクがあり、対策を講じることが必要だが、肺に入らなければ感染しない。検出された場所の周辺を通る程度であれば、過度に心配することはない」と話している。