「時効がきたらそれはあたたかく迎えてあげるよ。ところがね、時効というものを相手(被害者)の方が引き延ばす運動をしている。孫が生きているならば、いつかはこちらの主張もせんといかんなと思います」──昨年12月、取材にそう応えたのは重要指名手配犯の八田與一容疑者(28)の祖父である。
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男は2022年6月29日、事故を起こしたまま行方をくらませたままだ。あるキー局社会部記者が事件を解説する。
「別府市内の商業施設で買い物を終えた男子大学生2人がバイクに乗ってそれぞれ駐車場の別の出口から出ようとしたところ、片方の男性が軽自動車に乗る八田容疑者に声をかけられ軽い口論になった。このとき彼は八田容疑者と面識はなかったそうですが、トラブルを避けるためかすぐに謝ったそうです。
その後、大学生らは合流し商業施設から500メートルほど走行。交差点で信号待ちをしていたところを後方から時速100キロ以上のスピードで走ってきた容疑者の車にひかれ、10メートル以上吹き飛ばされた。大学生1名は軽症を負い、もう片方の男性は搬送先で死亡しました」
その後、容疑者は事故を起こした年の12月にひき逃げをしたとして道交法違反容疑で指名手配され、おととし9月には警察庁がひき逃げ犯としては初となる重要指名手配に指定。まもなく事件から3年が経とうとしているなか、新たな動きがあった。
「6月2日、大分県警は新たに殺人と殺人未遂の疑いで八田容疑者に対し、逮捕状を取りました。捜査関係者が車の走行実験などを進めたところ、男が十分な殺意をもって車を走らせたと証明されたということです。『ひき逃げ犯』としての時効は7年間でしたが、容疑に殺人が加わったことにより、公訴時効はなくなりました」(前出・キー局社会部記者)
NEWSポストセブンは昨年12月初め、八田容疑者の祖父のもとを訪ねていた。記者が声をかけると、「なんで(八田のことを)取材するんだ」などと怪訝な態度をみせながらも、孫の犯行に対する“言い分”を語っていた。
「事件の当日、母親が與一に会っているんですが、コロナでもう朧とした状態だったと聞いていた。與一はあのとき、入社した会社で、6か月の試用期間があけて正式に採用になるかどうかの時期だったの。でもコロナにかかってしばらく休んでいた直後で、後遺症でほとんどまともに勤務できないし、うまく動けずフラフラの状態だったみたいなんだよ」
取材中、被害者に対して謝罪の意を示しつつ、容疑者を擁護するような場面もあった。記者は「(現場から逃げることで)男が証拠隠滅を図ったのではないか」などとも尋ねたが、祖父はこれを頑なに否定。繰り返し、「孫に暴力性はない」「殺人を犯す必然性がない」と主張していた。
当時はまだ犯行に対して時効もあるなかで、取材の最後にこう本音を漏らした。
「若い人が亡くなったことは申し訳ないとは思ってるよ。だけども、ニュースでは死んだ人よりももうひとりの生き残った人間の状況がどうだったとか、時効をなくしてくれとか、そういうことばっかりを言っているので、どうしたもんかなと思ってる。
時効がきたらそれはあたたかく迎えてあげるよ。実の孫だからね。ところが、時効というものを相手(被害者)の方がなくす運動をして、7年の時効をなくそうとしていると警察から聞いています。あっちはあくまでも一方的に、被害者の方の言い分でそういう運動をしている。もし生きているなら、出頭させて当時の状況の話をして、『考える余裕がなかった』『俺にはなんの得もない』『俺が事件を起こすわけがない』と、こちらの主張もさせんといかんなと思います」
遺族らは2023年9月に、八田容疑者に対して殺人と殺人未遂の両容疑で告訴状を県警に提出し、受理されている。その後、殺人罪の適用を求めて約7万7000人分の署名も提出していた。時効がなくなったいま、八田容疑者が罪から逃れることはできなくなった。雲隠れを続ける男に、警察は捜査の手を伸ばし続けている──。
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