「せいろ蒸し」ブームにひそむ高カロリーのワナ

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「蒸す」調理法は本当にヘルシーなのでしょうか?(写真:nozomin/PIXTA)
これをやめれば痩せられる!
いま、せいろ蒸しが一大ブームになっています。健康志向の高い人からの支持を集め、手軽かつヘルシー、見た目もよい調理法として人気が高まっているようです。
しかし、「蒸す」調理法は本当にヘルシーなのでしょうか?
健康的なイメージと裏腹に、実は食材の脂が全然落ちていないとしたら、どうでしょう?
のべ30万人以上を診察した内科医の奥田昌子医師は、新著『これをやめれば痩せられる』で、科学的根拠をもとに日本人がもっとも効率よくやせる方法を紹介。
以下ではその奥田医師が、蒸し料理にまつわる誤解を指摘しつつ、「ダイエットに適した調理法」について解説します。
ダイエットの黄金ルールは、まず摂取カロリーを抑え、次いで脂質、その次に糖質を控えることです。

油を使う揚げ物、炒め物は1回の食事で1品にしたいですね。
煮る、茹でる、蒸す、焼く、炊くなど、油を使わなくてもできる調理法はたくさんあります。
まずは食材選びから始めましょう。魚の切り身なら腹側より背側、頭側より尾側のほうが、脂が少なく、あっさりしています。
肉であれば赤身。同じ100gでも、牛バラ肉と、脂身をはずしたモモ肉や、ヒレ肉は、脂質の量がまったく異なり、それぞれ33g、4g、5gです。
焼肉でカルビと呼ばれる牛バラ肉は、肉の3分の1が脂質なのですね。いやはや!
そして、同じ部位でも和牛は輸入牛の平均2倍も脂質が多いので、お財布にも優しい輸入牛を選びます。
豚肉も同様で、ふちに脂身がついたロース肉には、ヒレ肉の5倍以上多く脂質が含まれています。ロース肉を使うなら、調理する前に脂身を切り落としましょう。
この作戦は鶏肉にも使えます。
鶏肉は、皮の下に黄色くてぶよぶよした脂がついていますね。あれが鶏の皮下脂肪です。ですから、鶏肉を使う際は、皮ごと脂を取り除いてしまいましょう。
それだけで、鶏モモ肉なら脂質を75%カットでき、低カロリー高タンパクとして人気の鶏胸肉では、なんと約90%もカットできます。
大量飼育されるブロイラーは脂に臭みがありますが、取ってしまえば風味もよくなります。
ということで、いよいよ調理です。何を作りましょうか。
ときには豚肉の生姜焼きもいいですね。最近のフライパンは焦げつかないように処理してあるものが多いので、油はできるだけ引かずに、肉から出る脂だけで調理します。
焼きながら肉を上からジュッと押さえると、さらに脂が出てきますから、よぶんな脂をキッチンペーパーで吸い取りましょう。
さて、ここでクイズです。油を使わなくてもできる調理法のうち、食材の脂を一番落とせるのはどれでしょうか。
脂身を切り落とした生の豚ロース肉200g、262キロカロリーのものを使って比較しましょう。
ロース肉を、鉄板焼き、直火焼き、茹で肉、蒸し肉にします。
答えはちょっと意外ですよ。
まず、鉄板焼きで脂を12%カットできるのに対し、直火焼きでは29%カットです。
これは納得ですね。鉄板焼きで、出てきた脂をキッチンペーパーで拭き取ったとしても、火に脂をパチパチ落としながら焼く直火焼きにはかないません。
続いて茹で肉です。茹ですぎたらパサつくイメージがありますが、なんと茹で肉は脂を5%しかカットできません。
しゃぶしゃぶはダイエット向きではないといえそうです。
そして、蒸気で脂を落とす蒸し肉はというと、なんと、わずか1%カット。調理前とほとんど変わっていないのです。
なぜ、こんなことが起きるのかというと、茹でたり、蒸したりしても、肉の周囲の温度が100℃を超えないのに対し、鉄板焼きは200℃前後、直火焼きでは230~290℃まで上がるからです。
温度が高ければ高いほど、脂が溶けて外に出やすくなります。
蒸し肉より鉄板焼きのほうが、食べたときにしつこく感じるのは、脂が肉の表面まで出てきているからでしょう。
魚も同じで、蒸し魚、煮魚、焼き魚であれば、焼き魚が一番多く脂が落ちます。
さて、脂を減らせるのは嬉しいのですが、脂は脂でも、あまり落としたくない脂があります。
それは、魚に含まれる脂であるEPAとDHAです。
EPAは中性脂肪の合成を抑え、その分解を促すことで体内の中性脂肪を減らします。また、血の塊ができるのを防いで、心臓の血管を詰まりにくくする働きもあります。
そしてDHAは、中性脂肪だけでなく悪玉コレステロール(LDL)も減らします。
どちらも中性脂肪を減らすため、脂肪がつきにくくなるわけです。
サンマのEPAとDHAが、調理法によってどれだけ失われるかを比較した研究が日本で実施され、2016年に結果が公表されています。
この実験では、サンマを丸ごと1尾使って、グリル焼き、フライパン焼き、素揚げにしました。
すると、EPAとDHAが残っていた割合は、グリル焼きでは、それぞれ92%と87%、フライパン焼きでは80%と85%、素揚げでは51%と58%でした。
揚げると、EPAもDHAも、ほぼ半分まで減ってしまうのです。
魚はフライにしても、竜田揚げにしても、南蛮漬けにしてもおいしいものですが、EPAとDHAをしっかり摂取したいなら、揚げるのは避けたほうがよさそうです。
(奥田 昌子 : 医学博士/内科医)

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