「トイレでスマホ」は言語道断! 梅雨時にリスクが激増する「スマホ食中毒」を専門家が解説 用を足した後には“手の甲”や“親指の付け根”まで洗うべし

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九州南部や沖縄で梅雨入りし、都内ではすでに真夏日を記録するなど、今年もじめじめと不快な季節を迎えようとしている。この時期、特に気をつけなければいけないのが「食中毒」だ。
【写真】調理器具やドアノブは思った以上に汚れていて…細菌を測定できる機器を覗くと無数の“白い点”が
厚労省のデータによると、昨年の食中毒の発生件数は全国で1037件、患者は1万4229人にのぼり、死者も3人を数える。地球温暖化に伴う気温の急上昇に伴って、その数は年々、増加傾向にあるのだ。
家庭でも食材の保存や弁当を作る際に細心の注意が必要だが、見落とされがちな“盲点”もあるという。
「それは“スマホ”です。みなさん、料理を始める前には入念に手洗いをすると思いますが、料理の最中に電話やLINEが来て応対したり、レシピサイトで手順を確認したりしていませんか?」
こう注意喚起するのは、埼玉県を中心に首都圏で飲食店の厨房のクリーニングなどを請け負う有限会社アートクリーン(本社・埼玉県鴻巣市)の代表・上原謙一氏だ。
「実は、スマホは細菌やウイルスの宝庫。外出時には駅の自動改札にタッチしたり、コンビニやスーパーの支払いに使用したりする方も多いでしょう。中には、トイレに持ち込んで新聞がわりにニュースをチェックしたり、ゲームに興じる方もいるはずです。こうしたスマホやパソコンのキーボードは、トイレの便器より細菌やウイルスに汚染されているとの報告もあるほどです」
同社は、食品衛生管理の国際基準HACCPに準じた厨房のクリーニングを実施しているというが、客に食事を提供する飲食店の従業員でもトイレにスマホを持ち込んでいるケースがあるそうだ。
「さすがに店側も、トイレから出たら手は洗うように従業員に指導し、包丁やまな板などの調理器具の消毒も徹底していますが、スマホの消毒まで義務付けている飲食店はほとんどありません」(上原氏)
コロナ禍以降、公衆衛生に対する意識も高まり、手洗いや消毒を欠かさない習慣が身についているはずだが、食べる側も食事中に電話やLINEの着信があると、思わず反応してしまうだろう。
「そもそも、料理を作る側も食べる側も、スマホがそんなに危険なものだという認識がない。だから注意が必要なのです。こうした“スマホ食中毒”と呼べる被害が増える恐れが高まっていると考えます」(同)
日本食中毒防止協会の中島孝治専務理事も、スマホの危険性を早くから指摘していたひとりだ。
「スマホを介した食中毒の危険性が高いのは、黄色ブドウ球菌と、腸内の悪玉菌の一種・ウェルシュ菌です。前者は健康な人の約3割が持っている皮膚の常在菌。自分が持っていなかったとしても、家族や調理場の誰かが持っていて、その人が触った冷蔵庫のドアノブなどから食品に付着する恐れがあります」
一方、ウェルシュ菌は大便に含まれているため、やはりトイレに注意が必要だと続ける。
「読者の皆さんも、自分で大便後にお尻を拭いた時、手のどこがお尻と接触するか、一度チェックしてみてください。実は、親指の付け根が必ず自分のお尻と接触しているはずですから。大便が便器の水に落ちた時に、お尻に菌が付着。そのお尻に親指の付け根が当たっているのに、手を洗う時には指先を中心に洗っている人がほとんどなんです。さらに、水を流す時などに舞い上がった菌は手の甲にも多く付着しますが、そこも入念に洗えていません。それほど汚染のリスクが高いトイレにスマホを持ち込むなんて言語道断ですよ」(中島氏)
食品などが、どれほど菌に汚染されているかを測る基準として「RLU値」という単位がある。食品工場などでは1000RLU以下が絶対で、基準値としては800RLU以下が求められるというが……。
「一度、私のスマホケースで菌の繁殖リスクを調べたところ、なんと1万7000RLU以上の数値が出て、驚いたことがあります。もちろん、私はトイレにスマホを持ち込まないのに、これだけ高い汚染度が示されたわけです。料理中にスマホを触ることがいかに危険な行為か、お分かりいただけるかと思います」(同)
中島氏は、こうした危険性を子どもの頃から教えることも重要だと訴える。
「食中毒の危険性は、全国、いや世界中で教育されていません。年間に世界中で40万人以上の人々が食中毒で死亡しているといわれているのに、教育面では重視されていないのです。今から小学校の義務教育に組み込めば、15年後の食中毒は、かなり減っているはずです。まず日本が衛生基準を作り、世界へ向けて発信してこそ、和食の世界食文化遺産の価値も守れると思います」
前出の上原氏は、具体的な対策をレクチャーしてくれた。
「日頃からスマホを除菌シートなどでこまめに拭く習慣をつけてほしい。料理のときや食事中にはスマホを触らないことが一番ですが、レシピを確認したいときは『ふわふわのオムレツの作り方を教えて!』などと音声で検索する癖をつけることもスマホ食中毒を防ぐ一歩になるかもしれませんね」
デイリー新潮編集部

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