″鶏系居酒屋″ 大阪で熱烈な人気を誇る『八剣伝』が勢力拡大中!『鳥貴族』帝国に揺るぎはないのか?

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コメの値段がいよいよ5圓5000円台に突入するなど物価上昇が止まらない日本においても、安くてウマい焼き鳥店の人気は衰え知らずだった。
ここまで紹介してきたチェーンは関東や東海地方に多く出店しているが、実は″鶏系居酒屋″最大の激戦区は関西だ。なかでも’84年創業の『八剣伝』(189店舗)は、地元・大阪で熱烈な人気を誇る。同店は本格的な炭火焼き鳥を看板商品に据えており、「ありたどり黒焼 極上もも」は1本で275円と強気の価格設定。低温調理された「鶏刺し」(660円)や「炭火焼鶏白湯ラーメン」(759円)など、鶏系のサイドメニューもハイレベルだ。
『八剣伝』は現在、東京都内にも15店舗を構えて勢力拡大中。ところが――。同じ大阪で創業した絶対的王者が、あまりにも強い。
「均一価格の安心感と高い品質で人気を誇り、600店舗以上を構える『鳥貴族』は’23年、業界2位の『やきとり大吉』(479店舗)を買収し、業界の勢力図は大きく変わりました。『大吉』はもともと、脱サラした夫婦に店舗運営のノウハウとシステムを提供し、小規模の居酒屋を住宅街に出店することで勢力を拡大してきたチェーンですが、近年は、店主の高齢化も進んでいるようです。しかし、この買収劇によって『鳥貴族』で働くスタッフが独立し『大吉』のオーナーとして開業できるようになった。『鳥貴族』は法人でのFC加盟がほとんどなので、その受け皿となっています。また、住宅街に小規模で出店する『大吉』と、繁華街に大規模店舗を構える『鳥貴族』で棲み分けができているのも強みです」(月刊『近代食堂』編集長の雨宮響氏)
依然としてグループ合計1000店舗以上を維持し、今年は創業40周年を迎えた『鳥貴族』。王座に揺るぎはないが、一方でピンチを迎えているのも事実だ。
「’89年から維持していた″全品280円均一″は’17年に298円となり、今年はなんと″390円均一″に。人手不足で人件費が高騰し、酒税法改正でお酒の仕入れ値も上がり、光熱費も上がったことで値上げを断行しました。看板メニューの『もも貴族焼』などに使われる鶏肉や野菜は国産で、国産食材100%を目指す『国産国消』への取り組みにも積極的。タレは本社工場で一日かけて煮込んだものを使用し、串打ちも各店舗で行っている。これだけこだわっているので、価格が上がるのは仕方ないでしょう」(前出・重盛氏)
ただ、以前のように若者が気軽に行ける店ではなくなってきたのも事実。
「均一を売りにしていた『鳥貴族』だけに、一度の価格改定で全品が値上がりし、消費者に割高感を与えてしまう可能性があります。昨今の情勢を鑑みれば、均一価格を廃止する可能性もあり得る。『鳥貴族』がいきなり転落することはほぼあり得ないと考えていいとは思いますが、もし消費者が納得できないような価格戦略をとってしまえば、窮地に陥ってもおかしくありません」(前出・柳生氏)
『鳥貴族』帝国の勢いにブレーキがかかれば、ライバルたちはモクモクと反撃の狼煙を上げることだろう。
『FRIDAY』2025年5月30日号より

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