アキダイ社長「攻撃のみで防御なし。後から問題が出てきて…」「米の品種とか管理状況がわからない」小泉大臣と備蓄米に対して語った“期待”と“不安”

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小泉農水大臣が旗振り役となって行っている備蓄米の放出やこれからの米の価格について、小売りの現場はどのように捉えているのか? 野菜や果物を中心に販売するスーパー「アキダイ」の秋葉弘道社長に聞いた。
【映像】備蓄米で作ったおにぎりをモグモグ食べる小泉大臣
━━アキダイの店頭における米の仕入れ状況や価格の現状は?
「通常のお米が並んでいるが、やはり高値続きで、来月さらに上がるという情報も来ている。備蓄米については私どもでは全然販売できていない状況にある」
━━小泉農水大臣に代わって備蓄米は競争入札から随意契約となったが、競争入札の時にアキダイに備蓄米は届かなかったのか?
「ほとんどの小売店に届いていなかった。あれだけの量が出ているので多少なりとも影響があるかと思ったが、価格の方にもほとんど影響がない状況で、『備蓄米って無いですか?』と聞く消費者も多かった。『ないのが当たり前』という状況だった」
━━なぜ、競争入札では小売店に届かないのか?
「まず多くはJAさん。前回の仕組みは非常に複雑だったと思う。資金面もあって、大手かJAさんがほとんどを手にした。そしてJAさんはやはり学校給食とかそういうところに売り、私たち小売店の方には10%に満たない数で、全然ないような状況だった」
━━随意契約に切り替わって、まずは大手小売の申し込みがあり、その後、中小スーパーの方に切り替わっていく。アキダイは備蓄米の申請をしたのか?
「うちのグループ全体で申し込みをした。いわゆる2022年度の古古米と言われている米に対して申請を出して、一応来る予定だ。ただ、実際にお店に並ぶまでは、どうなるんだろうという不安はある」
━━先んじて楽天やアイリスオーヤマなどではネット予約などが行われて完売という話もある。リアル店舗の小売りとしてはどう見ているか?
「ネットだから、まだ物がなくても先に予約を取っているのだろう。実際に届くのはもっと後だと思うので、仕方ないことだと思う。だが、業界的に言えば『先手を取られている』」
━━この2週間で大臣が変わって、備蓄米は値段を下げて販売となった。小泉新農水大臣をどう見ているか?
「本当にすごいことをやっている。普通はいろいろな人と協議・審議して1歩1歩進むものを、どんどん進めている。でも今は小泉さんを信じて任せるしかない状況だと思う。今までのお米の価格が異常に高いというのは誰もが認識していることで、このままではいけない。生産者でさえ『今の価格帯は高すぎるだろう』と。せっかく今お米の人気が上がって、これからずっと続いてもらいたいという生産者の思いからすると、今の価格は高すぎるから少し下がってほしい。ただ、ずっと売れ続けているから、高くても下がる要因が全然ない。でも今は本気で値段を下げようとしていると思う。これは一時的なものだろうが、備蓄米を放出することによって、安く流通させることによって、多少値下がりの“着火材”になってくれればいい」
━━小泉大臣が就任当初、『6月初旬に備蓄米を5キロ2000円台で』という宣言があったが、実現できると思ったか?
「厳しいと思った。なぜなら今までの流れから反対されたりいろいろあったり。正直言って今回『攻撃のみで防御なし』でどんどんやって、後から様々な問題が出てきて、それを解決しようということだと思う。例えば、備蓄米、備蓄米とみんな言っているが、産地とか銘柄とかいろいろある。備蓄米はうまいとかまずいとか意見があるが実物を見なければお米の品種とか管理状況がわからない。これだけ着目されていて、小売店でも販売すれば私たちとしても集客につながる。ただ一方で、取り扱えないお店もあった時に、“不公平さ”もやっぱり考えてあげなきゃいけない。問題が山積みだ」
━━例えば農家からは『米の値段が下がりすぎて固定化されてしまっては困る』という小泉の農政への懸念の声もある。生産者目線から見た時に、これはどうなのか?
「私たちも生産者の方とよく話をしたりする。生産者の方も今の価格帯は一時的なものだと思っているが、『下がりすぎるのでは』と心配もあるようだ」
━━備蓄米がもうすぐアキダイの店頭にも並ぶわけだが、売っていくプランはあるか?
「正直、価格だ。私もまだ食べていないので『美味しいよ』とは言えない。ただ、食べた上でおいしいと思ったら、『特に問題ないですよ』ということはお客さんには口頭で言えるが、正直これはなかなかデリケートな問題だ。実際自分の感性で物を言って『想像よりおいしくなかった』とお客さんに言われたら…。感じ方は人それぞれなので。備蓄米(という表示は)はしっかり今回貼り出すことになっているので例えば『水分量を調整すると美味しい』とか、何か補足的なものを自分たちも勉強した上で張り紙をしてやってみようかと思っている。少なくとも、今までの非常に高いお米だけしか選択肢がなかったところに、安いお米という選択肢が出てきたことは非常に嬉しい。うちは“お試し”で小さいおにぎりにしてお客さんたちにサンプルとして配ることなども考えている」
━━今後の米の価格はどうなると見ているか?
「備蓄米が無くなれば当然今までと近い価格でお米を買うようになる。若干価格を抑えることができるのではないかという期待感はあるが、根本的に2000円くらいになることはない。これ(備蓄米の価格)が当たり前ではない。今回は、やはり『お米がない』と騒いだことで、余計高くなった部分もあったと思う。備蓄米の販売が終わる頃は新米がそろそろ出てくるという段階だと思う。(通常の米の)価格が下がるとすれば、数年後だ。来期のお米は、基本的にはある程度高値で取引されるという情報がもう入っている。下がっても、500円から1000円(の下がり幅)、この辺りくらいでしばらくの間ずっといって、ある程度高い金額が当たり前になって、これが根付いていく形が一番理想だと思う」(ABEMA/ニュース解説)

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